第4話 結成! 放課後ダンジョンクラブ
……………
「やろうぜ」
重吾は他の面々に向けそう言う。彼の顔は好奇と期待の色が伺える笑みが浮かんでいる。
すぐに國山先生が反論する。
「伏見君……生徒がこんな危険なことをするのは教師として――」
「先生、さっきの見てわかってるでしょう? ここではおれ達は死なない。怪我をしてもすぐ治る。ここに危険はない。怪我すらしないんですよ? 運動部よりもずっと健全ってもんじゃないですか?」
「そう言われると……」
ダンジョンマスターは國山先生に向かい話しかける。
「あなたはどうやら彼らに対して責任ある立場とお見受けします……私が願い出ていることを直ぐに受け入れることが難しいというのも承知しております」
「それなら……」
「ですが、このままこの現状を放置していては、あなた達の学校を中心に世界がこの場所に侵食されてゆきます、確実に。そうなれば、遅かれ早かれ、あなた達はこの場所で戦うことになるでしょう……あなた達5人程度ならば私も『救助』の手が回りますが、これが数百ともなれば救助等に時間を要するでしょう。それがこの町全体に広がれば、私一人では手に負えません……」
「……」
「だが、あなた達がここで『悪霊』と戦い、上層を目指せば、その過程においてあなた達は『レベルアップ』し、今私が行った『奇跡』に近しい『魔術』を習得することも可能です。あなた達がもし、巨人を倒す気がないとしても、そうした手伝いを行うことは私も願い出たいと思っております」
國山先生は逡巡する。広く、寒々とした薄暗い
その中で、國山先生が答える。
「……わかりました。ただし、責任者として私も同行します。伏見君、これはいい?」
「おれはここに居れるなら何でもいいですよ、皆もそうだろ?」
三本が返答する。
「……死んだって感じでもないし、瀕死状態は息切れしているだけだったしな……特に外傷もなかった。僕は楽しそうだしいいよ」
靖穂も答える。
「少しは楽しめそうだし、私は賛成……でも、稲葉先輩は大丈夫?」
先程の戦闘中ずっと先生と震えていた稲葉さんはおずおずと答える。
「ちょっと、怖かったけど……三本君も無事だし……私も運動部止めてからちょっと、動き足りなかったし……やってみても、いいかな」
重吾は手を叩いて言う。
「んじゃ、決まりだな。改めて、ダンジョンマスターさん、よろしくっ!」
差し伸べられた手をダンジョンマスターは握り、握手し、微笑んで答える。
「こちらこそ、勇気ある人々よ。あなたの善き行いと良心に感謝します……」
かくして阿嘉霧極東高校パソコン部は、放課後ダンジョンクラブとして秘密の活動を始めることとなった。
ダンジョンマスターが話すには、この
「今はまだ、夕刻から深夜頃までの数時間のみ、あなた達の世界とつながっている程度ですが、数日のうちにはあなた達の世界と永続的なつながりを持つでしょう。そして数週間のうちに、あなた達の学校のいたるところで、この世界とのつながり……『門』とでも言いましょうか……それができることでしょう……」
重吾は訊く。
「急いだほうがいいのか?」
「いいえ。あなた達を最上層の手前、『第六層』に今すぐ送ることはできますが、あなた達は為すすべなく死ぬでしょう。あの層の悪霊たちは強力です。よしんば私がすべて打倒し、巨人への道を開いたとて、巨人はそれ以上に強力です……先ずは一層ずつ、レベルアップしてゆき、そうのボスを倒しながら進むのが良いと思われます」
三本は笑う。
「まるで古いダンジョンゲームだな。まあ、僕はそういう堅実なゲームが好きだが」
重吾は言う。
「修君、TRPG好きだから絶対やりたいと思うんだよなァ……」
それを聞いて三本は厭な顔をする。
「彼も呼ぶのか? ……五人いれば十分じゃないか?」
「おいおい、お前の好きなゲームも6人パーティが基本だろ? それにおれ達の誰よりも、もしかしたらこの学校の誰よりも『荒事』には慣れてるだろうし」
ダンジョンマスターは微笑み言う。
「パーティメンバーが多いと統制が難しくなりますが、6人程度が最もバランスがいいと思われます。もちろん、それ以上でも制限はございません」
靖穂も話に入る。
「さっきみたいに攻撃方法によってダメージが変わるんだから、慣れている人がいた方がいいんじゃないの? 金田先輩、別に断る人でもないでしょう。合理的に攻略していきましょう」
重吾はまた笑って言う。
「流石は秀才。合理的な判断だ。さ、いいだろ? 健」
「……別にダメだとは言っていないさ。心配なだけだ」
「それじゃあ決定……明日からは修君も誘おう……先生も南もいいよね?」
國山先生は頷く。
「彼ひとり仲間外れはいただけないわ」
稲葉さんも頷く。
「部員皆でやるのは賛成」
「んじゃあ、決定……それと。今日は、ちょっとレベル上げておきたいけど、みんな、いい?」
三本や稲葉さん、靖穂は頷き、先生もやれやれといった表情で承諾した。
かくして五人は再び、レベルアップの為にダンジョンマスター指導の下、戦いを行うことになるのだった。
(続く)
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