第31話 最強の俺たち、家を奪還する

「それでは、家の奪還を祝しまして。かんぱーい!」


「「「かんぱーい!」」」


「か、かんぱい?」


俺たちは、家の中で唯一無事だったレビアの部屋に集まって祝杯を挙げていた。

メンバーは、俺にレビア、アスキー、クミ、そして、ファオ。


ん、ファオって誰かって?

そりゃまあ、あれですよ。先ほどまで戦っていた魔王軍の幹部様ですよ。


ん、真っ二つになったんじゃないかって?

それはまあ、あれですよ。レビアさんが蘇生魔法をかけ、間髪入れずに従属魔法で縛ることによって俺たちの忠実な魔王軍配下が出来るって寸法ですよ。



「ほらファオ、ちゃんと飲みなさい!」


レビアがファオのグラスをぐいっと傾けて飲ませる。どうやらあれは、家を壊された私怨も入っているようだ。おお、こわ。

ファオを生かしておいたのは、これからも魔王にヒト族の共通の敵として君臨してもらい、戦争の休戦状態を続けるためのスパイになってもらうためだ。俺が蘇生魔法をかけてくれと頼む前に彼女がかけて驚いたものだ。

あの一瞬のアイコンタクトで俺はレビアと奴を倒す作戦から何から、いろんなものを共有したってわけだ。いやあ、ちょっと照れるな。


「あの時、私の攻撃が減ってきてるって言われてかなりひやっとしたわよ。私がアスキーちゃんに回復魔法かけてるのがバレたんじゃないかって」


「あの時は本当にありがとうなのミャ。回復がなければさすがのボクも動くことが出来なかったミャ」


「それに引き換えわたくしは蹂躙されただけで、何もできませんでした……」


しょぼんとしなだれるクミ。レビアのおかげで少しずつサイズも戻りつつある。


「そんなことないだろ。クミのあの霧、殺気の強さのコントロールをしてくれてただろ? 弱い殺気は弱く、強い殺気は強くなるように」


「なんと、気付かれてたんですね! 微力ながら頑張らせていただきました」


団欒は続く。

地上から持ってきたワインがどんどん空いていく。


「にしても私の部屋だけ残ってるって不思議よねー」


ワインを飲み干しながら言うレビア。

いやいや、と俺はツッコミを入れる。


「これだけ内側から補強してあったらちょっとやそっとじゃ壊れないだろ」


そうなのだ、初めて入ったレビアの部屋は内側からなんかもふもふの素材で大量に補強してあったのだ。

クミ特製のクッションらしいこのもふもふで、こんなに補強されては俺の風月刃でも壊せない可能性すらある。

きっと間違って俺が壊すのを恐れてこんな作りにしたのだろう。


「まあ、乙女にはいろいろありますからねぇ」


そんなこんなでその日は楽しく飲み、やがてお開きとなった。

アスキーはクミを抱えてキッチンへ向かう。今日はそこで寝るとのことだ。

俺はファオを連れてだだっ広くなったリビングへ。

ファオはかなりレビアに深酒をさせられたようで、上の空だ。


大変な一日を振り返り、俺は一人追加で酒を煽る。

レビアとの死闘を思い出し、この部屋をはじめて堀った興奮も同時に思い出す。

そして最後に俺の頭の中に、部屋を出るときのレビアの目くばせが浮かんでくる。

今日は戦闘中にたくさんのことをレビアと目で語り合った。



うん、ちょっと待て、あの目くばせは。



もしや、俺を誘ってたんじゃなかろうか??

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