第9話 せわしない朝はいかがですか?②
「朝ごはんごちそうさまでした。うがいさんは料理が上手なんですね」
「そッ、そうかな?あはは……」
伊香賀ちゃんの言葉に対し、うがいちゃんは乾いた笑いをした。
伊香賀ちゃんはうがいちゃんの逆立った髪がどうしても気になる様子だった。
「じゃあ俺はそろそろ学校行ってくるね」
「うがいは始業式明日だからッ!伊香賀ちゃんのことは任せてッ!」
「お、おう……」
うがいちゃんは自分の胸をポンと叩いて言った。
なんだか不安である……。
うがいちゃんのことを気にしつつ、自分の部屋に戻って制服に着替え始めた。
俺は公立華ヶ崎高等学校に通っている。
公立の割に「制服がかっこいい・かわいい」で有名な学校である。
ただ、男の冬服には学校指定のネクタイがあり、学校にいる間は身に付けることが義務付けられている。
「高校生のうちから、社会人らしく」というのが俺の高校のモットーらしい。
俺にとってはただ面倒くさいだけなのだが。
俺は慣れた手つきでネクタイを結んでいると。
「あの……」
扉の向こうから伊香賀ちゃんの声が聞こえてくる。
「開けても、大丈夫ですか?」
「おう。今着替え終わったところだ」
そう言うと、伊香賀ちゃんはゆっくりと扉を半開きにして扉の隙間から覗くように俺を見た。
逆立った髪が少しだけはみ出ているのが気になって仕方がない。
「もう学校に行くんですか?」
「うん。うさちゃんたちの様子も見たいし、一応はやめに行こうかなって思って」
「始業式は何時からでしたっけ?」
「八時四十五分だけど……。なんでそんなこと聞くんだ?」
「い、いえッ!なんでもないです……」
伊香賀ちゃんは表情を変えていないものの、若干慌てた様子で扉を閉めた。
「『何時からでしたっけ?』って……。そもそも昨日伊香賀ちゃんにそんな話したっけな?」
俺は首を捻りながら、自分の部屋を出た。
「道は危険が危ないことだらけだからッ!気をつけて行ってきてよねッ、お兄ちゃん!」
「うがいちゃんよ……。『危険が危ない』は二重表現になっているって何度も注意してるよ……。でも可愛いから許す!」
「うるさいッ!はやく学校行ってきてッ!」
「はいはい。いってきまーす!」
「い、いってらっしゃい……」
俺はうがいちゃんと伊香賀ちゃんに見送られて玄関を出ていった。
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