第7話 騒がしい妹はいかがですか?
「これはどうしたものかな……。ひとまず俺は洗い物するから伊香賀ちゃんは座って待っててくれ」
「…………」
伊香賀ちゃんは無言でコクリと頷いた。
俺は伊香賀ちゃんの使った食器とスプーンを流し場に持って行った。
「それより大丈夫なのか?ほんとに親に連絡しなくて……」
「そのことについては話さないと言ったはずです」
「いや、話してもらわないとこっちが困るんだけどな……」
俺は食器についたケチャップを洗い流しながら言った。
これでほんとに警察にお世話になったらどうしようか。
だからと言って、無理やり親の連絡先を聞き出すわけにもいかないし……。
伊香賀ちゃんは口を一文字に結び、頑なに言わないという意思表示を俺に見せた。
「仕方ない……。とりあえず今日はうちに泊めるけど、近いうちにちゃんと事情を教えてくれよ」
「もちろんです。あなたは私のお客様ですから」
「そ、そうだったな……」
『お客様』と言われるとなんだか違和感があるな。
まあいいだろう。
明日からお客様として、その崇高なほっぺたを堪能させてもらおうじゃないか……。
「俺は明日はやいからそろそろ寝るぞー。……お腹減っているし。伊香賀ちゃんも夜遅いからはやく寝たほうがいいぞ。あ、布団はどうしようかな――」
「ぷはあ――」
俺が長々と伊香賀ちゃんに話しかけていると、白目をむいていたうがいちゃんが海から出てきたような声を出して意識を取り戻した。
「伊香賀ちゃん、もしかして今日ここに泊まる!?」
「はい。そうしていただけると助かります」
そう伝えると、うがいちゃんは伊香賀ちゃんの腕をガシッと掴んだ。
「絶対にお兄ちゃんには近づかないで!特に寝るときは気を付けて!お兄ちゃんが一番変態になる時間だから!危険が危ないから!」
「おいおい!それは明らかに語弊があるだろ!?」
「いえ。それはなんとなく察しています」
「でしょッ!今日はうがいと一緒に寝ようね!伊香賀ちゃんのことは絶対に守るから!あ、布団はお母さんのがあるからそれ使ってね」
そう言って、うがいちゃんは残っていたオムライスを急いで平らげた。
「別に今日は何かしようなんて思ってないからな、うがいちゃん!」
「うるさいッ!とにかくお兄ちゃんは早く寝て!洗い物下手なんだし、そこどいてよねッ!」
うがいちゃんは自分の食器を流し場にガシャンと置いて、俺をグイグイと押して流し場から追い出した。
「今日のうがいちゃんは一層騒がしいな……」
こういうときのうがいちゃんは明日になるまで何も聞き入れてくれない。
俺はしぶしぶ自室に戻り、寝床につくことにした。
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