第5話 妹の手作り料理はいかがですか?①
「もう遅いよお兄ちゃん!オムライス冷めちゃったじゃない……って――」
俺は空腹のあまり倒れた伊香賀ちゃんをそのままにすることはできず、おんぶして帰路についた。
ちなみに、包丁を持っていたらさすがに見た目最悪なので、校門のそばの歩道の植物のところに隠しておいた。
今は自宅に着き、玄関の前に腕組みして立っていたうがいちゃんが伊香賀ちゃんを見て目を丸くしていた。
「ああ、この娘は――」
「まさかお兄ちゃんが犯罪者予備軍じゃなくて、本当に犯罪者になってしまうなんて……。危険が危なすぎるよッ!」
「うがいちゃんッ!これは違うんだッ!この子が空腹で倒れちゃったから助けただけであって――」
「いいや違うね!女の子のほっぺたが触りたくなって誘拐したんだ!ああ、なんてお兄ちゃんを持ってしまったんだうがいは……。頭痛が痛いよ……」
「それを言うなら頭が痛いだろ……。いや、そうじゃなくて!お兄ちゃんを信じてくれよ、うがいちゃん!」
「うるさいうるさい!もうひゃくとーばんに通報しちゃうんだから!」
そう言って、うがいちゃんはリビングのほうにスタスタと走っていってしまった。
これはどう弁明すればいいものやら。
まあ女の子のほっぺたが触りたくなったというのはあながち間違いではないが。
この状態で「この娘を買った」なんて言いだしたらうがいちゃんは卒倒してしまうだろう。
なんとかして隠さないといけない。
伊香賀ちゃんにも話を合わせてもらわないとな……。
そう思い後ろのほうを見ると、先程の喧騒もあってか伊香賀ちゃんは目を覚ましていた。
「お願いです……。はやく、食べ物を……」
伊香賀ちゃんのお腹から再度、轟音が聞こえてきた。
俺は伊香賀ちゃんをおんぶしたままリビングへと向かうのだった。
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