第3話 危険な幼女はいかがですか?①

「いいい一旦落ち着こうか!その右手にあるものは危ないものだからッ!ねッ!」

「……………」

「なんで返事してくれないんだよッ!?余計怖いよッ!」

「……………」

 

 彼女は包丁を持ったまま無言でジリジリと俺に近寄ってくる。


 人形のように精巧な顔立ち。

 

 腰まで伸ばした髪の毛がボサボサとなって枝分かれしている。


 見たところ小学校中~高学年といったところだろうか。


 相手はガチだ……。


 しかし、こんないかれた幼女は初めて見た。


 もう最終手段に出るしかなさそうだな……。


 俺は拳を胸の前に突き出し、構えた。


 そして――。

 

「すみませんでしたあああ!命だけは勘弁してくださあああい!なんでもしますからあああ!」


 彼女の前で涙を流し、勢いよくスライディング土下座を決めたのだった。


 普段からうがいちゃんに土下座をしているため、体勢の美しさには自信がある。


 ありがとう、うがいちゃん!うがいちゃんのおかげでお兄ちゃんの命は助かるよ!


 そんなことを考えていると、頭上からか細い声が聞こえてくる。


「じゃあ……」


 俺は泣き止み、地に付けていた頭を上げて彼女の顔を覗き見た。


「私のことを、買ってください」

「……………へ?」

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