ペアバディシステム始動

森林木 桜樹

1「導入」

地球に、一つのルールが誕生した。

それが、ペアバディシステム。


生まれた時に、出産証明書を役所に出すと、貰える腕輪型の機械。

機械に、名前と住所、両親の名前、血液型などを登録される。

その機械が導入されたのは、地球で統一されたルールが一つあるからだ。



「外に出る時には、必ず、二人以上で行動」



その為、腕輪型の機械を、赤ちゃんの時は足に着けられる。

大きくなるに連れて、機械が着けられなくなったら、市役所に行き、大きいサイズに変更する。

子供の時は、大きさを競い合う姿が見られ、成長を大人は喜んだ。


腕輪型の機械は、丸い形をしている。

アルファベッドのIにOが挟まれている形に見え、Iの所がレールとなっている。

そのレールに、合体出来る。

つまり、見た目、二人が手錠をして、行動する形だ。


一人で行動する時は、GPSが内蔵されている機械を、合体させる。

生まれた時に腕輪型の機械・リストレットとは他に、GPSの機械・パートナーが支給される。

パートナーにも、リストレットと同じく、個人情報が登録される。

リストレットとパートナーを繋ぐと、自動的にリストレットの情報がパートナーにコピーされる。

パートナーも、リストレットと同じく、成長と共に順番に大きくなっていく。


リストレットは、拘束の英語・リストレイントと、腕輪の英語・ブレスレットの合体させた名前で、パートナーは、相棒の英語だ。



役所には、ペアバディ部署が設立されて、全て管理されている。

務めるには、数多くの講習と実技をし、試験に合格し、資格免許を取得する。

資格免許を持っていても、条件が一つあり、既婚者であることが最重要になる。

理由は、家庭を持っていれば、それが枷となり、下手な事をしないだろうと判断である。

もしもデーター改ざん等すれば、罰金の他、免許が取り消しになる。

家族に、迷惑が掛かる。

簡単に言えば、家族は人質だ。

だが、普通に仕事をしていれば、別に人質でも何でもないし、給料がとても良い。



このシステムが地球上でルールとされたのには、一番は犯罪率であった。



誰かが見ていれば、犯罪はし難い考えであった。

それと、戸籍の偽造防止もある。

生まれた時から設定され登録された情報は、変更出来ない。

赤ちゃんが生まれると、直ぐにリストレットを着けられる。

すると、その者の身体の情報を読み取り、登録がされる。

他の人が装着すれば、エラーが発生して、着けられない設定になっている。

人、一人が持っている遺伝子や指紋、脈拍などが違い、一度登録されてしまったリストレットは、双子であっても別の人間だと認識する。

生まれた時に着けられるには、赤ちゃんは素直で小細工が出来なく、偽造は難しいからだ。


リストレットの中にある情報は、追加は出来ても変更は出来ない。

住所や電話番号等が変わった時には、追加の項目で入力される。

今まで使っていた住所や、電話番号も残るから、どの様に暮らして来たか分かる。

入力出来る項目は、名前や住所の他に、血液型や、過去の病気、飲んで来た薬、利用した商業施設、旅行した場所、通帳の口座番号、通った学校名、免許証など、自分の考えられる個人情報が登録できる。


しない人もいるが、怪しいと思われ、常に周りから監視下に置かれる。

それを知るには、リストレットが赤く光る。

ある程度の情報が入っていると青く光り、安全な人と認識する。

自分の誕生日に、市役所に行き、情報の確認と追加出来る項目があればし、更新するのが、当たり前となっていた。

それに、誕生日だと分かると市役所から、ちょっとしたプレゼントも貰えるから、更新する人が多いし、毎年違う品物だから、コンプリートを目指す人もいる。


パートナーについては、北極と南極の上に飛ばした太陽の光で発電して動き、常にパートナーと通信する機械、ウォッチオーバーが、位置を保存している。

ウォッチオーバーは、宇宙にあり、地球の地軸を感知して、北と南で地球の半分ずつを管理しているから、二十四時間三百六十五日、確実に見守っている。

宇宙にあるから、保存しているデーターも改ざんは難く、手出しが出来ない。

ウォッチオーバーは、英語で見守るから、名前を付けられた。


明らかに怪しい動きをした時に、ウォッチオーバーから通信がパートナーに来て、上空を飛んでいるドローンから警告音が鳴り、着いて回る。

何処に逃げても、ドローンは着いて来るから、それを解除するには、警察や交番、巡回している警察に、自分は怪しい事はしていない事を確認して貰う。

確認方法は、ドローンにもレールがあり、警察官のリストレットと合体させる。

すると、ドローンの上部が空いて、モニターが現れる。

モニターには、先程の怪しい行動が映されているが、それが犯罪行為であるかは、警察官が確認して、犯罪行為ならば、そのまま証拠のドローンと一緒に警察署か交番に連れて行かれて、事情聴取される。

しかし、犯罪行為では無かった場合は、警察官はドローンのモニターを仕舞い、リストレットをドローンから外すと、ドローンは追跡を辞めて、自分の受け持っている領域へと帰っていく。


ドローン側としては、怪しい動きをした者が居たよって、警察に連れて行って、解決したから大丈夫だと、言われて安心して、自分の仕事に戻る認識だ。

外から見ると、上手く出来た事を褒められる為に、子どもが親に報告する様な物。

実にかわいい。


ドローンに警察官ではない人が、リストレットを合体させると、仕事を邪魔した行為で、警報音を警察官が来るまで鳴り続ける。

この事もあり、外で警察関係者が良く見かけられる様になった。


リストレットもパートナーもドローンも、耐熱に衝撃、電気や水にも強い。

少し当たったり、落としただけでは、壊れない代物だ。

金属で出来ているのは、レール部分だけで、他はゴム製の柔らかい素材で出来ているから、金属アレルギー対策も取れている。

ネジで止まっている場所があるが、そのネジをドライバーで外そうとすると、ドライバーの感覚が伝わり、警報が鳴り、警察へと通報される。

中身は真空になっていて、少しでも空気が入っても、警報が鳴る。

だから、分解は不可能である。


ドローンに至っては、冬は、雪が降っても積もる事が無い様に熱を放ち、夏は、ファンが動き熱には強い構造だ。

少しの天気の崩れ位なら、余裕で耐えられる代物である。


家の中では、外せる。

外せる理由は、家を建てる時に、外側の外壁には、リストレットが干渉しない機械を入れている。

導入されていない建物は、建物に関わった人物全てに罰が与えられ、罰金は当たり前で、最悪の場合、建設会社は倒産まで追い込まれ、従業員は解雇となる。

また、自然災害にも強い建物が求められ、過去のデーターを参考し基準に則って建てなくてはならないから、全てに置いて、手抜きや偽造等は出来ない。

壊す時も、建てた建設会社が責任を持って行う為、壊す時の手順も考えて建てられる。


既に建っていた建物は、一度取り壊され、建て直しがされた。

建て直しをしている間は、用意されたアパートに一時住む様になっていて、置ききれない荷物については、倉庫も借りられる。


この費用は、全てペアバディシステムを決定した、全ての国がお金を出し合って、賄われている。

だから、どの国もペアバディシステム予算が組まれている。


この事で、空き家問題は、空き家自体失くせば良いとなり、この際に空き家になっている家は、全て取り壊す様に決定された。

使っていない店であった建物も含まれ、自分で店を始めたいとあれば、土地から買う所から初めて、建物を作らないといけなかった。

だが、そうする事により、建物は誰の持ち主かが分かるから、書類を作る時には便利である。


また、重要文化財や昔からある建造物にタワー等の観光施設、大型デパート、スーパーについては、建て直しがされないが、外と同じ扱いをされ、建物の中にはドローンが浮いているし、警察官も配備されている。

柱に落書きや、お土産品を万引き、ゴミ捨てる行為等も、対応されている。

落とし物は、どんな国に対しても、本人に届けられる様になり返ってくる事が常識となった。


外にあるトイレは必ず、男女兼用の出入り口が設置され、そこを通れば、トイレの領域と判断されて、繋がっているリストレットを外せる。

出入り口は、家族連れや車椅子、ペットを連れている等の人の為に、広く作られている。

この出入り口を繋がっていない状態で出ると、警報が鳴りドローンや警察官が来る。

ベンチが設置してあり、自動販売機もあるから、この空間は周りはいるが、外で唯一落ち着ける場所である。


海外旅行に行く時には、リストレットがパスポートの役割も果たしている。

市役所で写真を撮って貰い、写真の顔を確認したのちに、リストレットに登録される。

空港にて、飛行機に乗る前に必ず通る入国審査場所にいる、審査官にリストレット毎、腕を審査官のいる空間まで持っていく。

審査官は、レールにレジで使用されているバーコードを読み取る機械の形をした物を差し入れ、その人の情報が審査官のモニターに映し出される。

少し質問をされたのちに、問題なければ、リストレットから外し、入国が許される。

審査官の目の前で、リストレットにパートナーを取り付けると、入国審査場所を通り抜けられる。


世界中が同じシステムになっているから、海外旅行に行っても、違和感なく使用は出来る。



このシステムにより、地球の生活はガラリと変わった。



犯罪率は減り、事故率も減り、いきなり倒れたりしても、常に見てくれる人がいるから、命が助かる率も増え、リストレットの情報を見れば誰かは分かるし、誘拐、迷子、暴力行為も減った。

怪しい動きがあれば、空を常に飛んでいるドローンが見ているからだ。


一人で行動する時は、パートナーがいるし、二人で行動する場合は、リストレットを繋いでいる人がいる。

もしも、リストレットを装着しなくて、外を出歩いている人が居たら、真っ先に警戒されて、警察へ連行となる。


そんなシステムの中で、地球のとある日本とある県のとある市とある地域に生活している、家が神社の兄妹が居る。

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