四畳一間トイレ付きワンルームになった経緯について
藤原くう
女性2人、パーテーション越しに
「内見の人ですか」
「はい、月代と申します」
「月代さんっていうんですね。よかったあ、
優しそうな人で」
「ありがと、そんなこと言われたのははじめて。スタッフはみんな怖い怖いって言うしさあ、すごく嬉しい」
「水色の制服がとてもお似合いですっ」
「ちょっと地味だから変えてもらおうと思ってるんだけど。……まあそれはさておき」
「そうでした内見ですね」
「ちょっと待ってね……あったあった、これなんてどう?」
「四畳トイレ付かあ。ちょっと狭くないですかね」
「でも、洗面台もテレビだってついてる」
「窓の格子も頑丈すぎるし、これじゃあ何かあってもわからないですよっ」
「何かって?」
「そりゃあ暴動とか?」
「いや、暴動は起きないと思うけど。しかし、これよりいいのとなるとちょっとムリね」
「そ、そんな。ほら、シェアルームがあるって聞いたことが」
「六人部屋のこと? でも貴女には――」
「なんですか差別するつもりですか」
「そういうわけでなくて規則としてね」
「規則だなんて、そんな公務員みたいな言い方しないでくださいっ」
「みたいもなにも、れっきとした国家公務員なんだけどなあ」
「うるさいうるさいっ!! シェアルームにしてよ! こっちは人恋しいんですよ!?」
「パーテーションを叩くのはやめなさい! スタッフ、スタッフー!!」
「な、なんですか。そんなにぶっとい棒をもってくるだなんて、さては乱暴するつもりっ」
「乱暴していたのは貴女と聞いていますが」
「こ、抗議しただけです。一人用じゃなくて、コミュニケーションできる部屋を」
「その割には、共同作業を嫌うと聞いてるけど?」
「…………」
「あと、貴女がスプーンを隠しているという噂は本当なのかしら」
「黙秘権を行使します」
「わかったわ。――PW4444を部屋へ戻して頂戴」
「了解しました、所長」
「覚えてろよー! 私がここを出たら真っ先にアンタをぶっ殺してやる!」
「そんな調子だから1人部屋から出られないのよ……」
四畳一間トイレ付きワンルームになった経緯について 藤原くう @erevestakiba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます