第6話 変な語尾の暗殺者
「お母さん......私、贄の王を見つけたよ......」
「幸せそうな顔して寝てやがる」
木を焚き火にくべながらリムスを見守る。
飯食って、少し話したらすぐに寝てしまった。
まぁ、あの様子じゃ碌な睡眠も取れてなかったんだろう。
昼も夜も追ってから逃げる毎日。
神経をすり減らし、いつ死んでもおかしくない状況だ。
「お母さんの話通り、強い人だった。ちょっと変な人だけど、にえさんはきっとこの国を救ってくれる」
「おじさん、そんな大層な人間じゃないんだかな」
そんな言葉を吐き出して、俺はゆっくりと立ち上がった。
「そう思わないか?ワープしてきた次の刺客さんよ」
右足に寄生している植物の根を伸ばし、リムスの体を守るように覆う。
腰に刺したボロボロの剣を抜いて、殺気を隠してこちらを観察している存在に剣先を向けた。
「俺の左目に寄生させてるモンスターは優秀でね。お宅が今どこに居て、何をしているのか手に取る様に分かるんだ」
サーチちゃんが俺の脳に送った情報によると、相手は一人。
数分前、何もなかった空間でいきなり気配を察知したんだ。
ワープ系の魔法を使う相手で間違いない。
リムスをただ殺しに来たのであれば、もう少し人数を揃えても良い所だ。
そこをたった一人で来たって事は、よほど自分の力に自信があるのかー
あるいは、リムスを殺した功績を独り占めするって感じだろう。
「対象が最も疲弊したタイミングで殺すのが私の流儀なんだがにゃ〜」
変な語尾に抜けた声。
それが聞こえた次の瞬間、サーチちゃんが四方八方に打ち出された飛ぶ斬撃を察知した。
「興が覚めたからさっさと逃げるとするにゃ〜」
◇
なんだにゃあのおっさん。
私と同じで夜行性のモンスターの血が混じってるのかにゃ?
全然眠たそうな気配は無かったし、今襲い掛かっても勝てる気がしないのにゃ。
さっきの斬撃。
対象を殺す以外に時間稼ぎにも使えて本当に便利にゃ。
今回はさっさと逃げて、またあいつらが疲弊してそうなタイミングで奇襲すればオールOKにゃ。
それじゃあ、さっさと逃げるにゃ。
逃げるは恥だがなんとやらにゃ。
「まぁまぁ、そんな直ぐに逃げなくても良いじゃねーか」
「は?」
もう、1秒後にはワープが完了していた頃合いにゃ。
なのにどうしてー
「ワープを力技で止められたのは初めてか?」
私は首元をこのおっさんに掴まれているにゃ!?
「結構驚いただろう?おじさん、最初にこれ見た時は興奮したもんだぜ」
「がは?!」
こいつ、私の首を掴んだまま地面に押し付けやがったにゃ。
呼吸が出来ない。
体が痛い。
ぼやける視界でおっさんを見つめると、その目が赤く輝いている事を発見したにゃ。
「お前......吸血鬼の眷属だったのかにゃ」
「ああ。夜が深くなるほど強くなれるって聞いたからな。試してみたんだ」
目の前のおっさんは呑気に「似合ってるか?」なんてほざくにゃ。
クッソ、吸血鬼の眷属だったとは相性最悪だにゃ。
私の狩の時間に限って強くなるとか反則にゃよ。
「見た感じ、吸血鬼以外にも色々手を出してるみたいにゃね」
「まぁな。ここまで集めるのも苦労したもんさ」
「普通、そんなに大量のモンスターを体に寄生させていては先に身体中の魔力が食い尽くされてお陀仏にゃ」
おっさんの手が私の首を絞めていく。
おっさんの体から溢れる魔力は食い尽くされる所か増えている一方にゃ。
こんなの、ありえないのにゃ!!
「お前は一体、何者にゃ」
「人類最強に憧れて、それを打ち倒そうとしてただけのただのおっさんさ」
おっさんが首を絞める力を強める。
「唯一特別だったのは、俺が強くなる為に手段を選ばないアホだった事だな。それも、モンスターをこの身に寄生させる前から」
自分の意識が途切れていく中、私が最後に聞いたのはおっさんのそんな言葉だったのにゃ。
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