雨の御霊 参
雨月 史
KAC20242
僕の彼女は晴れ女だった。
けれども彼女はあの日を境に太陽から距離を置かれてしまった……。
と僕は勝手に思っていたんだけど……。
今日彼女が見た夢?の話を聞いてそれは僕の勘違いではないと確信した。
どうやら僕たちは小さな神様の使いに翻弄されているようだ。
京都市営地下鉄で
「ねー
「何?」
「ひょんな理由って、ただしょうもない話に夢中になってしまっただけやん。」
彼女は人スマホを見る癖がある。
「美晴……勝手に人のスマホ覗くのやめてくれる。」
「見たんじゃないよ見えただけ。」
僕はため息混じりでスマホを閉じてコートのポケットへしまった。
北大路駅の長いエスカレーターを登り切ると、入ってすぐのところにあるショッピングモールのスーパーに入った。二人で惣菜の挟まったパンとコーヒーを買って鴨川で食べる事にした。
けれどもそのわりには……
「
「ん?」
「寒い。」
「だな。」
鴨川デルタまで歩ききると、川にかかった飛び石で何かの団体(大学生か?とにかく若い)ざわざわと子供の様にはしゃいでいた。少し歩いたせいか体が温まってきたところで、僕たちは小さな橋の下のベンチに腰をかけて先程買った白身魚のフライの入ったコッペパンを頬張っていると、目の前を鴨の親子が優雅に川を横切っていった。
「可愛いなー。しかしこの寒いのに、よー水ん中で過ごしてるなー。」
「せやねー……せやねけど、優雅な様で川の中は必死のパッチやろうけどね。」
「どういう事?」
「知らんの?あんな澄ました顔して、あの
なんて美晴が言うから二人で顔を見合わせて笑った。それからしばらく二人で静かに鴨の親子を観察した。
鴨の親子は川の小さな中洲の草むら?の中には入って行ったと思うと、すぐに母親が出て来てその後を子鴨たちがヨチヨチと追いかけていく。するとまた別の中洲に入ってまた川に戻る。いくつかの中洲を出たり入ったりしてしばらくすると一つの中洲から全く出てこなくなった。
「出てこなくなっちゃったね。」
「出てこなくなっちゃったな。」
「永住の地をみつけたんやろか?」
「ははは!!なるほどね。じゃーさっきのは家探しか、内覧会みたいなもんやね。」
彼女は晴れ女だった。(復活しつある様だけど)それは天気だけの事じゃなくて、いつも微笑ましい事を言って僕の曇った心を晴らしてくれる。
なんでもかんでも考えすぎて答えを出せなくて悩んでる時も笑顔で接してくれる。
そんな彼女が僕は好きなんだと思う。
そろそろ今後の事考えてもいい頃かもしれない。
「美晴……良かったら俺らもそろそろ一緒に暮らすところでも探そうか?」
「……。」
辛辣な顔をする美晴。変なタイミングで切り出してしまっただろうか……。
「あっいや、ほら、永住の地?というわけじゃないんやけど、もうほら付き合って三年目やろ?なんていうか…そのそろそろさ……。」
「
「美晴……。」
見つめ合う二人。
「おトイレ行きたい。」
あ……それな。
そりゃ寒いしそうなるわな……。
雨の御霊 参 雨月 史 @9490002
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