住宅の内見

!~よたみてい書

第1話

「こちらが、お客様のご希望のお部屋になります」


 不動産会社の案内人の女性が、マンションのとある一室の玄関扉を手前に引いていく。


 私はこれから新生活のために新しい住居を探すということで、マンションの部屋の下見をすることになっている。

バード曽根町というマンションの3階、205号室。

建物の外装は古臭さを感じることなく、他人からは平凡な暮らしをしていると思われるだろう。


 私は軽く頭を下げて玄関の中に足を踏み入れていく。

玄関の隅には靴入れと、全身を映し出してくれる縦長の鏡が設置されている。

鏡については外出の前に最終確認の時に役に立ちそうだ。

他には女性ものの靴が2足綺麗に並べられている。


 私は歩きやすさを重視した靴を玄関で脱ぎ終え、家の中に足を乗せていった。

ワンルームということは事前に確認しているので、すぐにキッチンの景色が目に入ってきた。

IHの台所が壁際に接地されていて、近代的な設備だ。

油汚れも目立たないので、新築マンションではないけど、気分がとてもよくなるだろう。


 台所の反対方面の扉を開けると、洗面所と浴室、そしてトイレと思われる扉があった。


 洗面所はしっかりと温水と冷水の二種類が選べれるようになっていて、冬でも安心して住めそうだ。


 すりガラスを横に開けていくと、膝を少し曲げれば寝転がれるくらいの大きさの浴槽が目に入ってくる。

快適ではないけど、不満がない浴槽だ。

壁際には温水冷水選択式の蛇口、それからシャワーも備わっている。

文句なし。


 最後にトイレの戸を開ける。

洋式便器があった。

便座の蓋を開けると、ウォシュレットが備わっていることが分かった。


 キッチンを通り過ぎて、奥の洋室に入っていく。

余計なものがない、まっさらな部屋。

窓が2つと、クローゼットが一つ。

不自由は無さそうな部屋だ。


 私はこの家賃3万円という信じられない優良物件を見つけてしまったことに興奮を抑えられない。

 案内人の女性に契約する意向を伝えよう。

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