これは、私が死ぬ一日前の会話です。
櫻井桜子
第1話
「Bちゃん、久しぶりー」
「久しぶりって。三日前に会ったばっかりじゃん」
「三日って72時間もあるんだよ? 十分長いでしょ」
「そう言われてみればそんな気も……しないから」
「Bちゃんったら冷たいなあ」
「いいでしょ、別に。っていうかA、今日はどうしたの? Aから呼び出すの、珍しいよね」
「そうそう。うち、引っ越し考えててさあ」
「引っ越しぃー?」
「なんかさあ、この前の大雨で壊滅的に天井やられちゃって。今ブルーシートで蓋してんだよね」
「まじ? 大変じゃん」
「この前内見に行ったんだけど、なんか変だったから、客観的な意見が欲しいんだよね」
「ああ、そういうことね。任せて」
「二階建てで、築何年かっていうちょっと古めの家だったんだけど。不思議なことに、めちゃくちゃ安いんだよね。ちょっと高めのアパートの一室くらい」
「分割で?」
「全部で。なんか、奥の部屋の畳がぶよぶよしてるし、剝がしたら床板も腐ってて」
「リフォーム費用が必要だから安いってこと?」
「それが、リフォーム費用は不動産が負担するらしい」
「そんなことってある?」
「まあ実際起きてるし……。しかも、何でかは分からないんだけど、前の住人のものが残ってるんだよね」
「えっ? 回収に来てないの?」
「うん。多分ね。けど、台所とかお風呂場とかだけ凄くきれいなの」
「水周りだけ……」
「それに、個人的にいろいろ調べてみたんだけど、過去に、その近くで行方不明事件が起きてるんだよ」
「行方不明?」
「うん。小学生の女の子。それが数人」
「見つかってないの?」
「そうみたい。これ、どう思う?」
「うーん。なんか怪しいし、私個人としては止めておいたほうがいいと思う」
「そっか。ありがと、Bちゃん」
「どういたしまして。おっと、ちょっと用事があるから私はこれで」
「うん、本当ありがとね。バイバイ」
AはBに聞こえないよう呟いた。
「これでいい?」
そして、Bに駆け寄る少女を視ると、手を振った。
「広めてくれてありがとう」
後日、その家の床下で、小学生の女児の白骨死体が発見された。
包丁で刺されたと見られ、浴槽からは血痕が検出された。
これは、私が死ぬ一日前の会話です。 櫻井桜子 @AzaleaMagenta
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