まるで実家のような安心感をお届けします!
国見 紀行
さあ、ここがホームです!
「はい、ではここがロビーです。カードキーで中に
案内係が首から下げたカードをスロットに入れて通すと、赤いランプが緑に変わる。ガコッという音を立ててゲートが開き、客人を招き入れる。
「エレベータがこちらです。ちょっと大きめの家具も入る仕様の二十人乗りになっておりますー」
銀色の光沢ある扉が開くと、奥の鏡が参加者たちの顔を写した。みんな緊張顔である。
「ここを上がると、二階が総務、三階がサーバルーム、四階がそれぞれスタジオになってます!」
エレベータの内側にそれぞれの階層についての案内板があり、案内係がそれらを読み上げる。
「五階がリフレッシュルームです! シャワー、大浴場、サウナ、スポーツジム! 汗をかいてサッと流す! 気に入っていただけること間違いありませんよ!」
そして六階に到着すると扉が開いた。そこで降りてさらに中を案内される。
「こちらには二十四時間利用できるレストランスペースです! 和食、洋食、中華、フランス料理などなどなーーどざっと八店舗! 夜にはラウンジもご利用いただけますよ!」
今は格子が下りていて入れないが、確かに高いビルから下を見ながらのカクテルはさぞ気持ちよく飲めそうではある。
「ではここの中央階段から最上階へ向かいますよ~」
ぐるりと周りを歩いて回った後、案内係は列を乱させることなく階段を昇り、ずらりと扉が並ぶフロアに到着した。
そこは、階下の賑やかさとはうって変わってしんと静まり返り、まるで音を置き去りにしてきたかのように穏やかだった。
「この扉の向こうが当ビル自慢の最高仮眠室! どんな疲れも二時間で吹っ飛んでしまいます!」
「あの」
そこでようやく引率されてきたうちの一人が口をはさんだ。
「はい、なんでしょう?」
「私たち、就職説明会に参加しに来たんですが、なんか違いませんか? 何だかマンションの内覧会みたいになってますが」
「どうせ働き出したらこのビルから出ないから、同じことでは?」
まるで実家のような安心感をお届けします! 国見 紀行 @nori_kunimi
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