4 本人はいつも蚊帳の外
4-1
ゴードン
土地が
それでは私がと当代のゴードン伯爵が手を挙げ、
貧しさに
伯爵夫人もまた
その
それでは、
天才と名高く次期宰相ではとも
残る注目株は長女ミリエッタ……なのだが、まったくもって表に情報が出てこない。
飛び級での卒業を祝うため、アレクのもとを
「私が特別な訳ではありません。妹も同様に、幼い
それではとトゥーリオ公爵がゴードン伯爵家に
「ええと、前提が
申し訳なさそうにおずおずと指摘し、
では自分であればどのような形で政策を進めるか、思いつくまま述べていく
「もう少し
人材が
来年は中等部に入学する年齢か……と頭を
王立学園は優秀な者に等しく教育の機会を提供するため、身分による学園内での
平民と貴族、
カリキュラムの構成上、常に護衛を付けるわけにもいかないし、と頭を
幸い本人が、進学はせず領地内でより高度な勉強を続けたいと希望したようなので、それではと各公爵家から優秀な家庭教師を
「同年代の
思いもよらぬ
「また重ねて申し訳ないのだが、この子の婚約ついてはどうするつもりだ?」
「まだ、何も。王立学園に通い、これはという本人の希望があれば、
家同士の政略結婚も少なくない中、これだけハッキリと明言する当主はそういない。
デズモンド公爵は同じ娘を持つ身として、
「これほどの御息女であれば四大公爵家のいずれかと縁付かせたいが、どうだろうか」
「大変光栄なお話をありがとうございます。ミリエッタは
その言葉に四公は、
「承知した。我らの
ゴードン伯爵が頷き、ひとまず同意が得られた事にトゥーリオ公爵がほっと胸を
「出来れば、選出した候補を平等に見てもらいたいのだが……例えば、デビュタント後に我らが
「それは名案だ。候補が
オラロフ公爵の言葉を受け、トゥーリオ公爵がそう提案すると、ゴードン伯爵は少しの間考え込むように目を
「……では、期限を決めても宜しいですか? 十九歳の誕生日までは、その条件で本人に選ばせましょう。ですがそれまでに話が
期限を切らねば、なし
ゴードン伯爵が父として決めると明言すれば、後は
四公を相手取り、最後の一線は決して退かないゴードン伯爵に苦笑いが
「よし、では決まりだ。期限はミリエッタ嬢が十九歳の誕生日を
そうしてミリエッタは王立学園には入学せず、四公自ら選んだ家庭教師に学びを得た。
社交の場にも
ついに
四公の令息達も同様で、
そんな二人を目の
お前はどう思う? と視線で問われるが、幼い頃から交流のある三公の令息達とは異なり、ジェイドには
トゥーリオ公爵家からは兄が候補として選出される予定のため、自分には関わりの無い話として聞いていた。
そもそも四公が絶賛するような優れた御令嬢……しかも、あのゴードン伯爵家の御令嬢が、公爵家に生まれただけの
王立学園に通う必要すらない
各自バラバラになると目の色を変えた令嬢達に囲まれるため、
すべてが
その美しさに会場中が
開会の
ミリエッタも同様に挨拶を終え、安心したように口元を
演奏が始まりアレクとファーストダンスを
婚約の話もあるので、そのまま四公の令息達のもとへ挨拶に来るのかと思いきや、ミリエッタは何故かアレクに連れられ、会場の隅に移動してしまった。
ジェイドとキール、イグナスの三人は
兄のアレクに「
思っていたのとちょっと違うぞ、と皆一様に感じたらしく、
「壁の花になると
決意を新たにしたものの、不安気に
つい
次の演奏が始まるや否や真っ先にミリエッタのもとへと歩み寄り、ダンスの
二人で踊り始めたまでは良かったが、間違えないよう緊張しているのか足元ばかりを見つめ、ジェイドが話し掛けても気もそぞろ、といった様子なのが見て取れる。
演奏
ジェイドの時と同様に、踊っている最中は全く目が合わず、
令嬢達に言い寄られるのは慣れているはずなのに、先程ベソをかく姿を見てしまったからか、あまりに
公爵家の四令息と踊り終える頃には緊張が限界に達したのか、半ばパニック状態で兄に連れられ会場を後にするミリエッタ。
前情報とのギャップに驚き、その姿がまた可愛くて、四人は思いの外楽しい時間を過ごしたのである。
これまで、必要最小限の事だけをこなし
気難しく
毎週同じ曜日、同じ時間に王立図書館へ足を運ぶと耳にしたが、危機感が足りないのか護衛が
これは、あまりに不用心なのではないか?
何かあってからでは
案の定、力ずくでモノにしようとする
そうこうするうち、ミリエッタがデビュタント後初めて夜会に出席すると耳にし、もしかしたら話をする機会があるかもしれないと喜び勇んで参加したのだが。
四公による行動制限がかかっているため迂闊なことも出来ず、貴族令息達はチラチラと
理由も分からず
どうか声を掛けて欲しいと
また逸らされてしまったと他の三人に小声で伝えると、それを遠目で見たミリエッタが傷付いたような顔をするので、もうどうしたら良いか分からない。
結局その日はずっとアレクと共に過ごしていたのだが、それ以来一度も夜会で
何か病気にでもなったのではと心配になり、だが王立図書館へは相変わらず通っているため、理由が分からずジェイドの不安に
もしミリエッタが心配な状態なのであれば、異なる立場で出来る事があるのではないかと協力を申し出ると、ハンナも同様にミリエッタを心配していたらしく、すぐに協力態勢を取ることが出来た。
何故それほど自信が無いのか。
四公を
領地に籠もって過ごした幼少期と、人付き合いが
定期
天才とも名高い兄に勉強を教わり、
優秀な兄と比べられ、重圧に負けて努力を
初めは
女性を本気で好きになるなんて、自分には訪れない夢物語だと思っていたのに。
そして『
まずは、これまで通り父の仕事を手伝う傍ら、騎士を目指したいと家族に宣言をし、自分にとっては難関だが、騎士試験に合格したら兄の代わりにミリエッタの婚約者候補にして欲しいと父に
いつも無気力なジェイドが必死に説得する姿に心を動かされたのか、何とか許可を得て、
軍事の要、デズモンド公爵家に押し掛けて半ば無理矢理
特別な才能があるわけではない、
だが同様の
絶え間ない
そんな時ハンナからの定期連絡で、「もう誰でもいい」とミリエッタが
声を掛ける令息がいないのは、ミリエッタのせいじゃないのに。
今すぐにでも妻に
タイミング良く騎士団の公開演習で御令嬢からハンカチを渡されそうになり、上手に話し掛けられないならこの方法が使えるのでは、と
そういえばゴードン伯爵夫妻への接触は禁止されていなかったと思い至り、ミリエッタが図書館通いで不在のタイミングを
こうして『出会いのハンカチ』を伯爵夫人に提案したのが
彼女の横に立ち、幸せにするのは自分であって欲しいと願わずにはいられない。
いつか感謝と共に伝えたいのだ。
君のおかげで、自分は変われたのだと。
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