第9話

 「あかり、嬉しそうだね」

 そう友人に言われて、自分でもやっと気がつく。


 わたし今、嬉しいんだ。


 もっとたくさんの人の写真を撮りたい、今日みたいに写真を通してたくさんの笑顔が見たい。

 もっとたくさんカメラの勉強もして、人と話す力を身につけて、色々な人を撮ってみたい。


 そう思いながら私は海を後にした。




 そうだ、あの日初めて知らない人の写真を撮って、それがたまらなく嬉しくてもっと撮りたいって思うようになったんだ。


 それから大学に入って少しずつだけど私の世界は広がっていったんだ。


 私はこれからどうなって行きたいんだろう、今日の祐美みたいに、自信を持ってカメラを持ちたい。

 

 私は写真が大好きだ、それに人の笑顔が大好きだ。

 そう気付かせてくれたのは、あの日浜辺で出会った家族のおかげで、写真が私と人を繋いでくれてる。私だってもっと自信を持っていいじゃんか。


 「祐美は、ステージに立つのこわくないの?」

 自信を持ちたいと思いながらも、祐美にそうLINEを送っていた。すぐに既読がついて通知が入る。


 「もちろん怖いよ、でも楽しいし、ステージから見るみんなの表情が私にとっては宝物なの、だから立つ時は堂々と立つんだ」


 返ってきた返信を見て、祐美の優しさを感じた。

まるで私が何かに悩んでるのがわかるかのように、何気ない質問にも真剣に答えてくれる。


 いつもはとにかく明るくてお調子者な部分が多いのに、祐美のこういうところが私は好きだった。


 「ありがとう、やっぱり怖いよね、でもやっぱり今日の祐美はカッコよかったよ私の自慢だよ」


 「えー照れちゃうなあー、まあこれからも私の歌でみんなを幸せにしてあげるね♡」


 いや、やっぱりただのお調子者かもしれない、心で思いながら私は笑みが溢れていた。


 人の写真を撮る時の私に似てるな、話しかける時はすごく怖いけど、いざカメラを向けたら最高の笑顔を、最高の一枚を収めたいって想いでいっぱいになる。


 なんだ、じゃあ私も祐美みたいに自信を持ったっていいじゃんか。私の写真でたくさんの人に笑顔になってもらえるかもしれないじゃんか。


 そのためにもっと学ばなきゃ、たくさん練習していかなきゃ。


 

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