第3話

 「あかり次どこの面接?」

大学生活を一緒に過ごしてきた楓が私に聞く。

一緒になって祐美も私の顔を覗き込んだ。


 「来週、第一志望の印刷会社の面接があるよ」

第一志望という割には、歯切れの悪い返事を私は返す。

 「そっか〜じゃあ何としてもだね!」

 「うん、頑張るよ」


 楓はすでに第一志望だった大手企業に内定をもらっていて、どことなく表情に余裕があった。

 別に妬ましいとか思ったりはしなくて、大学生活を通しても、誰よりも意欲的に様々な活動に取り組んでいた。当然の結果だと思う。


 一方で祐美は我が道を行くというか、曲がらない芯を持っている子で、卒業後もしばらくはバイトをしながらバンドを続けていくらしい。

 有名ではないけど、ファンもいて都内のライブハウスでライブをしたりと、真剣に音楽に向き合っていた。


 今までも2人と比べて私は劣ってると思ったことはあったけど、それでも夢を追いかける気持ちがまだあったから卑屈にならずにいれた。

 

 夢を追いかけてた時の私は、私のことが好きだったと、今になって気付かされる。

何かに夢中になることがあんなにも素敵でかけがえのない時間だったなんて当時は思わなかったけれど、何を目指してるのかもあやふやな今の私にとっては過去の私が今の私の理想像なのかもしれない。

 

 楓はいいとして、祐美は不安にならないのかな、みんなとは違う道に進むことが怖くないのかな。私は怖い。

 祐美に直接聞けば良いんだけど、そんなこと聞いたら、祐美の真剣な気持ちに水を差してしまうかもしれない。そんな考えが聞きたい気持ちを邪魔していた。

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