【緊急】闇の勢力がおれのキンタマに爆弾を埋め込んでいた件について

和田島イサキ

ROUND 1

 おれたちには三分以内にやらなければならないことがあった。


 ということになった。おれはゆりねえの熱烈な信奉者であるため、彼女の言うことにはすべて無条件に従う。曰く、タケルちゃんは先延ばし癖さえなければ世界一かわいいのに、とのこと。思わず口をついて出た「二位じゃダメなんですか」のひとことは、反論というよりおれの謙虚な人柄がそのまま滲み出たものだったが、とまれゆり姉の答えは明瞭だった。


 愚問。一位以外はドベと同じ、もとよりいてもいなくても同じ〝その他大勢〟なのだ、と。


 なので、そうした。おれはおれの人生の価値を証明するため、おれ自身の先送り癖を矯正することに決めた。

 問題はその方法だ。生まれながらの性分ってやつは、一朝一夕には変えられないから性分なのであって、万策尽き果てたおれはまずプライドを捨てた。

 頼った。同じくゆり姉の狂信者たる俊太郎に。こいつはアホだしスケベだしあと何を喋ってもスベり倒すという最悪の特性を持っているが、そのぶん優秀なのかどんな無茶な相談にも完璧な回答をくれる。


「うーん、危機感が足りないんじゃ? 例えばほら、『三分以内に取り掛からないと爆発して死ぬ爆弾』をキンタマに埋め込まれてると思って生きてみるとか」


 かくして、状況は完成する。

 おれ、たけるはこれから三分のうちに、いよいよ最後の一線を越える——っていうか、つまり限りなく肉体的な意味で愛を確かめ合わなくてはならない。


 今日初めて付き合うことになったばかりの、言うなれば即席の恋人と。

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