第3話

 中学1年のボクのクラスの担任は、加山真也子という女の先生だった。加山先生は国語を教えていた。


 ボクの中学1年の学校生活は淡々と進んでいった。


 そんなある日の放課後、ボクは担任の加山先生に呼ばれた。もうすぐ夏休みという日のことだった。


 加山先生は家庭科部の顧問をしている。ボクは先生に、誰もいない家庭科室に連れて行かれた。家庭科室は料理ができる調理室に、お茶や裁縫、生け花なんかができる和室が併設されていた。


 加山先生はボクを調理室のイスに座らせると、ボクの前に立った。


 何をするんだろう?


 ボクは先生を見上げた。


 すると、加山先生が両手を頭の上に持ち上げたのだ。まるで、両手でボクをこれから押さえつけるかのように・・


 えっ?・・


 加山先生がボクを見下ろした。ニヤリと笑った。先生の口に八重歯が光った。


 八重歯を見て・・ボクは小山さんを思い出した。


 これって、小山さんのときと同じだ・・


 そのとき、ボクの頭に閃いたことがあった。


 えっ、小山さんは確か・・小山麻也香だった・・こやままやか・・


 『こやままやか』を逆に読むと・・かやままやこ・・加山真也子・・


 こ、これは・・加山先生の名前だ!


 ボクの背中に冷たいものが走った。


 すると、先生が両手を振り下ろして、ボクの両肩を押え付けた。


 ものすごい力だった。


 ボクは先生の手から逃れようと必死になった。もがいた。


 でも、強い力で・・とても逃げられない・・


 暴れるボクの眼に・・隣の和室に祭壇が祀られているのが見えた。


 祭壇!・・


 どうして家庭科室に祭壇が・・


 これも小山さんのときと同じだ。


 祭壇を見た途端・・ボクは恐怖で動けなくなってしまった。身体が硬直してしまって、まるで金縛りにあったようだ。


 そんなボクを、加山先生の眼が楽しそうに見つめた。


 それはまるで、祭壇に捧げる生贄いけにえを品定めするかのような眼だった。


 すると・・先生の両手がボクの肩から外れて・・ボクの首にかかった。


 先生の声がした。


 「死ね・・」


     (つづく)

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