昔、俺のことをいじめていた幼馴染。好きだからいじめたって白状したけれど、トラウマになったので許しません

中村 青

第1話 さぁ、ザマァの時間だ!

「ね、ねぇ、慶太けいたくん。こんなの間違ってますわ……お願いだからやめて下さい」

「おいおいおい、昔の俺もやめてくれって懇願したのに、お前は無視してイジめてただろう? これは俺の復讐なんだ。こんな面白いこと、やめるわけがないだろう?」


 恐怖で怯える幼馴染の琉衣るいを追い詰めるように、俺は敢えて彼女の耳を舐めて卑猥な音を立てた。


「ひゃっ!」と可愛い声を上げて、くくく……これからどうやって痛ぶろうか楽しみで仕方ない。


 俺はEカップはある琉衣の胸を背後から鷲掴みして、高笑いしながら揉みほぐした。


「アハハハハハ! 愉快、愉快だ! 散々俺のことをバカにしてきた琉衣が俺の意のままだなんてな!」

「ち、違う! バカになんてしてない……! あれはあなたのことが好きで、つい」

「誰がしゃべっていいと言った? 今度勝手に発言したら、その口を塞いでやるぞ?」


 俺の発言に視聴者達も白熱する。



 ——何で? 何で口を塞ぐの?


 ——いやぁぁぁぁぁぁぁ! 私のKEIが鬼畜に染まる!


 ——状況の詳細プリーズ


 くくくっ、良いザマだ。

 俺はお前のせいで、何年も精神を病んで引きこもりになったんだ。謳歌するはずだった青春、楽しかったであろう部活動、そして学生の時にしか味わえなかった思い出の数々。


 それも全部、お前のせいで台無しになったんだ。


 さぁ、視聴者の皆! 俺に最高の復讐を提案してくれ!


「今からこのオッパイお化けにやってもらいたい復讐を募集する! どんな内容でも歓迎だ! どんどんリクエストしてくれ!」

「いやぁ! やめて、慶太くん!」



 歌い手としてネットで活動していた俺のフォロワーはざっと500人。

 決して多いとは言えない数だが、俺は彼らに絶大な信用を抱いていた。


 苦しかった時、ずっと支えてくれていたリスナー・フォロワーが励みだった。

 きっと彼らなら俺の為を思って最高の復讐を考えてくれるはずだ。


「お、早速リクエストが届いたぞ? まずは……心の底からの謝罪を(できれば猫耳で)」


 ——ん? 猫耳?


 おかしなワードが入っているが、うん。

 まぁ初手ジャブだからな。最初はこんなものだろう。


「ほらほら琉衣。お前に誠心込めた全力謝罪を求める声が上がったぞ? 猫耳つけて、全力で謝れ!」


「いやぁぁぁ…………………え、猫耳?」


 一応、悲鳴をあげた琉衣だったが、やはりおかしいと感じたのか聞き返されてしまった。


 うん、俺も同じことを思ったよ? でもリスナーからのリクセストだ。答えないわけにはいかない。


「投げ銭ももらったんだ。ちゃんと指示には従ってもらう。ちゃんと猫耳をつけてな!」


 なんで俺の部屋に猫耳があるかはさて置き。

 俺は彼女に猫耳を渡して謝罪を要求した。


「ちゃんと謝れよ? 『昔、あなたのことをいじめてすいませんでした。二度とあんな愚かな真似は致しません』ってな」

「くっ……、慶太くん、いくら好きという気持ちを拗らせたからといって、あなたのことをイジメてゴメンナサイ。二度とあんなことは致しませんので、私のことを許してください」


 高飛車でお嬢様気質だった琉衣が、全身全霊かけて謝罪をしている。


 この時をどれだけ待ち侘びたことか……!


 ——だが、どうしても猫耳が邪魔で感情移入できない。



「さ、さぁ! 次の復讐をリクエストしてもらおう! くくくっ、次はどんなことをしてもらおうか」


 だが、コメント欄は猫耳とオッパイで埋め尽くされて、肝心のリクエストが一向に上がらない。


 違う、俺は復讐を待ち望んでいるんだ。

 そう、例えば——『ケツ叩き、100本ノック(猫耳、尻尾付き)』


「いや、猫耳からはなれろ!」


 おかしい、おかしい……!

 俺のリスナー、何故こんな猫推しなんだ!


 しかもケツ叩きで尻尾は邪魔!


「あ、あの……お尻叩きはスカート捲り上げた方がいいのかしら? ガーターに紐パンなんだけど」


 ガーターに紐パンは普通にアダルト!

 エロすぎて通報くらってしまうので、アウトー!


「おい、何だよコレ! 俺の復讐、コントみたいになってんですけど⁉︎」


 俺は琉衣にいじめられて引きこもりにまで追い込まれていたのだ。

 なのにこんな……アニマルな復讐で濁すなよ!


「俺はめげない、諦めないぞ! 俺は琉衣に復讐してやる! 絶対にだ‼︎」


 これは俺の、いじめっ子だった琉衣への復讐の物語。誤解されては困るので再度言わせてもらう。

 これは決して猫耳パラダイスが目的ではない!




 ……続くのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る