第2話興味を持たれた理由

そもそもの話をしよう。俺が姫埼夢歌ひめさきゆか

興味を持たれた理由は。あれは、確か・・・・・・。

一か月前の出来事がきっかけだった。その日は、俺の中では

いつもと変わらずの。平凡な一日だった。教室の後ろの入り口の

席が。俺の席で、その隣が姫埼夢歌の席だ。つまりは、隣同士な

訳で。それが理由ではなく。その日のお昼休みが興味を持たれる。

理由である。「ふーうー。今日は、やけに腹が減るなぁ~」その日の

俺は、授業中。ずっーとお腹が空いていた。なぜか、その日は無性に

腹が減っていて。お腹のなる音を出さないように。細心の注意を

している程だったのだ。四時限目の英語の授業が終わり。

ようやく、腹の虫を黙らせる事ができる。俺は鞄から、弁当をだし。

机に置き。弁当箱の蓋を開け。弁当の中身とご対面をする。

本日のメニューは、白米の上にドデカい梅干しが目立つ。

日の丸弁当だ。おかずは、シンプルに鮭と甘しょっぱい

卵焼きだけである。うちの母は、ズボラな母で近所でも有名で。

弁当も白米と数品のおかずだけ構成が多く。今日の弁当の内容は

マシの方だ。酷い時は、白米の上にふりかけだけの場合もある。

そんなズボラな母の作る弁当が恥ずかしくて。いつもは、早弁の如くの

勢いで食べているが。今日は違う。お腹が減り過ぎていたから。

ゆっくりと味わって食べようと思い。箸を構え。母の作った。

ズボラ弁当を口の中に迎え入れる。「はぁー。おいしいー」

いつもは早く食べるから。味なんて感じていないけど。

今日は違う。今日のは味がするよ。白米の上に梅干しが

乗っかているだけなのに。俺はその日、初めて母のズボラ弁当が

美味しいと感じた。まさに祝福のひと時である。俺のとろける

表情を。隣の席でくすくすと笑っている。声が聞こえる。

俺は顔を隣に向ける。すると、そこには口元を小さな手を拳で

隠しながら笑う。姫埼夢歌の笑い声だった。俺は驚きのあまりに

持っていた。箸を机に落とした。なぜならば、あの姫埼夢歌の

笑っている所を見たのが初めてだったからだ。いつもは

他人に興味がないらしく。無表情な事が多いけど。

こんな風に笑うのか・・・・・・。俺の周りに風が吹き出した。

それは廊下からの冷たい風ではなく。春の訪れを感じさせる。

暖かな風を体全身に吹いている感じだった。そんな事を

思っていると。姫埼さんが、席から立ち上がり。俺の方に

向かってくる。「はぁ‼」と我に返り。俺は慌てて

母の作った。ズボラ弁当を隠す。そうだ。これはまずい。

こんな恥ずかしズボラ弁当をクラスの女子に見られるわけには

いかない。俺は普通の男子高生でありたい。普通の男子高生で

ままでいたい。そんな思いを込めて。俺は弁当を隠す。

俺に近づく。姫埼夢歌は、顔を近づけ。囁き声で

俺に話かける。「ねぇ、君の事をもっと教えてよ」と

囁く。その声がとても可愛いくて。俺の耳の中で

何度も再生された。こうして俺の普通の高校生活は終わり。

逆に他人に興味がない。姫埼夢歌に興味を持たれる。

生活が始まった。

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