メイドの住宅探し

七三公平

第1話 お題「住宅の内見」

 不動産屋に足を運んだのは、二人のメイドだった。家の主人から、息子たちがみんなで住める家を探すよう申し付かっていた。


「何か条件はありますか?」


 不動産屋から聞かれて、メイドたちは答えた。十一人で住める家であること、メイド用に別棟があれば、なお良し。対応した不動産屋は、目を輝かせていた。しかし、なかなか条件に見合った住宅は見つからず、メイドたちは何軒か不動産屋を巡った。


 その間に、いくつかの住宅を内見してはみた。当然ながら、どれも高級住宅の部類である。そういった住宅を不動産屋が紹介してくるのはいいが、メイドたちは二人で顔を見合わせて、首を横に振った。


「天井が低いのね。」

「そうですか? 一般の住宅よりは、高めだとは思いますが。」

「それに、部屋数はこれで足りる? お風呂も、数人で入れるくらいの広さが欲しいわね。」


 メイドが言うと、不動産屋は段々とメイドたちのことを怪しむような目つきに、変わってきた。そんな条件の住宅を買えるだけのお金を持っているのか、不動産屋を冷やかしに来ただけの人間ではないのか、という疑いの目である。だが、メイドたちはそんなことは気にしなかった。条件に見合った住宅を紹介できない不動産屋から、どう思われたところで関係ない。


「ありがとう。もう少し探してみるわ。」


 メイドたちはそう言い、次の不動産屋へと足を運ぶ。それでしたらと、不動産屋が紹介してきたのは、とある会社の寮として使われていた別棟付きの住宅だった。その会社は経営不振が続き、手放したのだという。


 庭も広く、数台の車を駐車できそうだった。家の中も、何とかなりそうな広さがある。メイドたちは、顔を見合わせ頷いた。


「ここにするわ。」


 メイドたちは家の主人に連絡し、住宅を購入すると、家の掃除を始めた。そして、少し物思いに耽り、ここに住む子の様子を見に行った。


 学校帰りの小学生である。実は、話したことがある。でも、きっと覚えていないだろう。

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