ドアがめちゃくちゃある家を内見してみた
神崎蒼夜
【閲覧注意】ドアがめちゃくちゃある家、内見してみた【心霊映像】
ウィース、どうも内見系YouTuberの
てなわけで、早速外観からチェーック! まず何と言っても目を引くのはその大きさ、だいぶ立派なお家になっておりまーすねー。言葉を選ばずに言うと金持ちが道楽で山の中に建てた豪邸って感じ? 驚くことにこんな山奥なのにガスも水道も電気も通ってるみたいだし、こんなポツンと一軒家なら住んでみたーいって人も多そうな気がしますねー。でもそんな良い家なのに空き家なのにはまあ理由がありますよね。知りたい……? なんとその理由について……今回は不動産屋から公開してもいいとオッケーをいただいております! イエイ! 拍手!
懐が深い不動産屋ですねー、これまで紹介してきた物件ではかなりその交渉が難航したりしましたが、今回は不動産屋の方が「ウチはもう誰でもいいから借りてほしいんです!」と悲鳴のようなお願いをしてきまして、むしろ少しくらい脚色してもいいよとも言われたんですが、話を聞いてみたらそんな脚色なんかいらないくらいアレすぎたんで……無編集でお伝えしたいと思いまーす!
さて、最初にこの家のことを『百扉邸』と紹介しましたが、なんでそう呼ばれてると思いますか? そう、実はこの家には扉が百個存在しているんです。じゃあ部屋数がそれだけ多いってこと? 違います、間取りは10LDK(これでもだいぶ豪華!)なので扉はそんなに必要じゃありません。なんとこの家には……古今東西、国内外問わずの幽霊屋敷から取り寄せた扉がオブジェとして家中いたるところに設置されているんです! 聞いた時はビビったね、なんたるホラーハウスだよ。なんでもこの家を建てた人ってのはオカルトにハマっていた人らしくて、元々コレクター気質な人だったらしいんだわ。で、別荘でも建てるかーって話になった時に、じゃあせっかくだから取り壊される曰く付きの家から扉でも買い取って中に設置したら面白いんじゃね? と考えて、今から二十年くらい前に建築がスタートするのと同時に扉の買い取りを始めたんだって。で、最初は国内の扉だけだったんだけど、その話がどっかのバイヤーに伝わって、「今ウチが扱ってる海外の物件が実は……」みたいな話が持ち込まれるようになって、海外からも輸入しだしたらしい。それで気付けば扉の数がどんどん増えていって気付いたらまあ多いこと多いこと。もはや人が住むなんてことを考えないくらいの量が集まっちゃったんだけど、ご主人はニッコニコしながら全部この家に飾ったんだとさ。
ご主人が生きているうちはこの家が大層お気に入りで月に何日も寝泊まりしていたらしいんだけど、家族からしてみれば不気味極まりない建物だったらしく、誰も泊まりたがらなかったんだって。そうして話はご主人の死後のことになる。建築から十年経つか経たないかの頃に、ご主人は老衰でお亡くなりになってしまった。そう! これは強調しておかなきゃならないんだけど、別に変死とか怪死とかでもなくただの老衰で、生前おかしくなっていたとかそんな様子も一切なかったから、この家がなんらかのホラーパワーを発揮したとかそういう期待はしないでほしい、ごめんね。「え? じゃあなんで家がずっと空き家なの?」って疑問に思ったよね、それはこれから説明するからもうちょい待ってて。
どこまで話したっけ……そうそう、亡くなったところまでか。そんで老衰でお亡くなりになってしまったわけだけど、まあ残された家族からしてみれば誰も住んでないし誰も住みたがらない家だし、すぐにでも手放したいところではあったんだろうが、そうは問屋が卸さなかった。遺言状の存在だ。
ご主人が死の
さて、お待たせしました。ここからが本題だ。そんなことを何年か続けていた家族だったが、ある時ふと誰かがこの家に興味を持って、「一回くらい泊まってみるかぁ」と思い立った。掃除も一応してることもあって別に荒れているわけでもないし、電気やガスは水道は金を払ってないから来てないけど、一泊するくらいなら別にどうってことはない。その人は掃除に来た際に自分だけ置いて帰ってもらい、翌朝迎えに来るように家族に頼んだ……。まさかそれが、今生の別れになるとは知らずに。
翌朝、迎えに来た家族が目にしたのは、その人が扉にまみれた一室で動かなくなっている姿だった。その顔は恐怖に満ちていて、一晩で何十年も歳を取ったような衰弱をしていたんだ。変死だから警察も介入したんだけど、死因は心臓発作による突然死、事件性もないから事故として扱われたんだけど、どうして亡くなったのかは未だに不明なんだ。
この一件もあって、残された家族たちは一刻も早くこの家を手放したくなった。だがそんなことがあったせいか、手放したら手放したでどうにかなるんじゃないかという恐怖も付き纏ってしまった。そうして考えたのが、借家にして不動産屋に押し付けるという発想だ。こうしてその籤を見事に引き当てたのが、この話を聞かせてくれたシオシオ不動産(仮名)ってわけ。
一応、これまでに借り手が皆無だったってわけではなく、その手のマニアから何回も借りたいとの打診はあったみたいだが、みんな内見してみたら手のひらを返したかのように借りたくないと断られたらしい。だから困りに困って俺に紹介してくれ! って白羽の矢が立ったワケ。いやー長い前置きだったねー、2000文字くらいかな(笑)。
てなわけで、早速中にお邪魔してみたいと思いまーす。まずは玄関のご紹介でーす。『百扉邸』の入口にふさわしく、威風堂々とした雰囲気すらある厳かで豪華な扉だ。こういう扉に鍵をイレる瞬間がたまらねぇんだよな。(ガチャリ)抵抗なくすんなり開いてくれました! 流石に清掃とかの手がちゃんとかかってるだけあって、この辺の不備はないですね。じゃ、おじゃましーす……ウワッ! すご! 見てください! 玄関の扉を開けてまず目に飛び込んでくるのはなんともう一つの玄関! これが二重ロックかなんつってね。こちらもご解錠っと、おじゃましーす(2回目)。もうこれは中に入りましたね、電気がきていないので持ってきた明かりで中を照らしているんですが、いやーけっこうな迫力っすよこの廊下。洋風に作られてるだけあって
不動産屋さんからもらった地図だとこの廊下に沿うように進むと左手に2階に行ける階段があって、そこからあの人が不審死を遂げた部屋に行けるらしいので、リビングとかの紹介よりも先にそっちに行きたいと思いまーす。みんなもそっちの方が興味あるでしょ(笑)。
今こうやって廊下を進んでるわけなんですが、本当に扉が廊下に飾られてるよ……壁の真ん中に設置されているので床からは浮いていて、そのおかげで部屋の扉かどうかの見分けはつくんだけど、いやぁそれにしても雰囲気あるわぁ。
そんなこんなで2階に着きましたね、まさか階段を上がってる途中にも扉があるとは思わなかったですねー、危うく突っ込むところでしたよ。じゃ、本命のお部屋の扉を……解錠したいと思いまーす! フー↑↑ テンション上げてこうぜみんな!
ガチャガチャっとね。ちゃんと手入れされてるねー、すんなり開いたぜ。じゃ、失礼しまーす……。うおぉ、すげぇ……なんだよこの部屋。壁一面扉でびっしり埋め尽くされてるじゃん。ほら、皆も見えるかな、左右の壁だけじゃなくて、天井とか床まで扉でびっしり。今俺が入ってきた扉も……(パタン)。閉じればほら、どこが出入りした扉かわかんねぇもん。しかし窓もないし天井に照明もないから本気で真っ暗な部屋だなここ。あれ? でもさっき外から見た時は窓あったよな? あー、窓も扉で隠されてるのか。わーオシャレ建築。じゃあせっかく出し開けてちょっと明るくしてみたいと思いまーす。
方角的にたしかこっちの壁だったよな……この扉かな? よっと。(ガチャガチャ)あれ、鍵かかってんな、じゃあ隣かな(ガチャリ)おー開いた開いた……ってあれ? 窓じゃないじゃん、また扉? あー、玄関みたいにこっちも二重になってるのかな。じゃあ開けて……ああ、明かりが漏れてんねっと……(パタン)。えっ……えっ(カメラが後ろを振り返る)。やばいやばい、嘘だよ、今俺の後ろ姿見えなかった? えっ? マジで? うわっ、なんだこれ。やばいやばい早く出なきゃ。(ガチャガチャガチャ)あれ? 扉なんで開かないの、この扉だよね入口、絶対そうじゃんなんで開かないんだよ……あっ、違う隣の扉の取っ手だこれ。もーっ!! (ガチャリ)よし開いた! えっ……(カメラが落ちる)なんで俺の後ろ姿が俺見えてんの。ま、待てよ! (カメラを床に落としたまま扉の中へと入る内藤健を捉えてる。次の瞬間、扉が勝手に閉まり、映像は暗闇に包まれた)。
ドアがめちゃくちゃある家を内見してみた 神崎蒼夜 @sawyer1876
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