ずっとふたりで(陰キャifストーリー)

136君

第1話

「うわ…マジか…」


目の前で轟々と燃える炎。隙間からはたまに黒く焼けた骨組みが見えていて、余計に絶望が指先から伝わっていく。


 家に帰ったら、その家が燃えているなんてどこかで聞いた話だ。まさか自分に降り掛かってくるとは思いもしなかったが。


 周りを見てみると消火活動をしている消防士の人と、よく見るお隣さんがいる。


「カレンは全部あの中?」

「服とかはな。幸い教材は全部学校に置いてきてるから、学校はどうにかなるけど。」


お隣さんの名前は新宮カレン。イタリア人と日本人のハーフの男子高校生だ。一応一緒の学年で、たまに勉強を一緒にしている。まぁ、ほかのことを教えることの方が多いけど。


「これからどーすんの?」

「どーするも何も。とりあえずネカフェ行こっかな?音羽ちゃんは?」

「私もそうするつもり。お母さんたちには連絡…ってカレンの実家って近くなかったっけ?」


たしか歩いて行ける距離。ネカフェはお金がかかるからそっちに行った方がいいと思うが…


「音羽ちゃん。これはロマンなんよ。」

「は?」

「やから、こういう時にしか経験できんやろ?ネカフェって文化は!」


そういやカレンってこういうところあるんやった。なんか目的があったらそこに真っ直ぐになるところ。


「やけど、いつまでもネカフェって訳にはいかんやろ。」

「それは音羽ちゃんも一緒ちゃうん?」


カレンは私にそうやって言ってくる。たしかに私もいつまでもネカフェ生活はできない。でも、最初こそ親にお金を出してもらって借りていたアパートの一室がなくなってしまって、バイトも何もしていない私がいきなり部屋を借りるなんて無理だ。


「私は…いいの。どうにかするから。」

「どうにかって…そんなん不確定がすぎるぞ。」

「分かってるって。でも、今できることってこれくらいしかないから。」


これからのことはこれから考えよう。だから今は今できることを。


「分かった。自分は家帰るな。」

「え?ネカフェ行くんちゃうん?」

「気変わった。音羽も来い。」

「でも、私がいたら邪魔に…」

「いいから。」


カレンは私の手をとって、実家の方に歩いていく。


「話せば分かる。絶対に。そういう人だからうちのmadreは。」

「紀子さんが?」

「そうだ。もう連絡もしちゃったし、嫌でも連れていくからな。」


 なんかカレン、怒ってる気がする。いや、絶対怒ってる。何に怒ってるかは分からないけど、私関連のことだろう。


「ありがと。カレン。」

「あぁ。」

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