第7話 お祭りとゴブリン襲来。みんな強くね?
夜になった。
村では僕を迎えるお祭りを
村人総出でしてくれている。
食べ物は自分たちでは満足したものを
だせないからとみんなで薪を作って、
その回りを回る踊りをして、歓迎してくれている。
うれしかった。
第二の人生、どうなるか不安であったが、
とてもすばらしい仲間達と人達と出会うことができたのだ。
感謝しかない。
そして僕は、もっとこの村の人達が
笑顔で豊かに暮らせるようになって欲しいと思った。
それをこの第二の人生の目標にしても
いいなと思うくらいには。
お祭りが終わった後、村の方々に小屋をひとつ貸して貰って、
そこでみんなと一緒に寝た。
ちなみにトレントは木でありながら、
移動することができた。
いま、家の隙間からめっちゃくちゃこっちを
見てきてる。
うん。ちょっとこわいかな。
やさしい子なのは分かっているんだけど、絵面がね。
あとでこの子も一生に寝られるように工夫できたらなと思う。
小屋はお世辞にも良く出来たモノでなくて、
隙間風邪が入り、寒い。
でも、フェルのふわふわの体毛のおかげで、
ぜんぜんへっちゃらだった。
そして僕が寒いと思うということは、
村人も寒いはずだ。
明日、日が昇ったら皆さんが
快適に過ごせるような家とか
防寒具をつくりたいなと思いながら、
僕は眠りについた。
長い一日だった気がする。
でも、とても充実していた。
前世ではありえないくらいに。
神様、こんなにすばらしい第二の人生を
くれて、ほんとうにありがとうございます。
深夜、寒さとワオーンという雄叫びで目を覚ました。
なんだと起きてみると、フェルがいない。
小屋の外に出てみると、
フェルが村の外に向かって、吠えていた。
フェルの毛は逆立ち、
もふもふでは無くなっている。
何かを警戒していることは明らかだった。
フェルの遠吠えを聞いて、
村人達も飛び起きてきている。
「た、旅人さま!ご無事でしたか!」
「いったいなにが?」
「そそれが!た、旅人さま!
あ、あれを・・・」
そんな村の住民の1人が僕に話かけてくる。
確か、夜の警備をしてくれると
言っていた子だ。
その子も。フェルが吠える方向と同じ
方角を指さしていた。
震える指で、怯えた顔で。
・・・何か、いるらしい。
雲が晴れ、月が顔を出す。
すると、フェルが鳴いた理由がわかった。
彼が怯えていた理由も。
ゴブリンだ。
たくさんのゴブリン達が、村の
すぐそこまでせまって来ているのだ。
「そんな!もう来たのか!」
いつの間にかいた村長がうろたえる。
「あれは?」
「ゴブリン共です。この近くに巣をつくったようで、
いつも私たちを狙ってくるのです。旅人様に治して
いただいたモノも、奴らに」
なるほど。
あの多くのケガ人の元凶は
こいつらということか。
「怖いよ、旅人さん」
ラナちゃんは僕の腕にしがみついてくる。
・・・ゴブリン達はラナちゃんも狙っていた。
怖がるのも当然だ。
言葉が通じない以上、交渉は不可能。
そして相手が殺しにくるのならば、和解も無理だ。
そうとなれば、残された手段は倒すのみ!
僕は戦う、を選択した。
けれどゴブリン共は数がものすごく多い。
それに対してこちらはフェルとスラとトレントのみ。
勝てるだろうか?
そんな不安が胸によぎる。
けれど不安はそこまでだった。
「ギャギャギャ!!!」
ゴブリン達が奇声を上げながら
突撃してくる。
そしてそれを一瞬でフェルが食いちぎり、
スラが取り込み溶かし、トレントが枝で吹き飛ばしていく。
逆にゴブリン達の矢や槍は一切
彼らに効いていないようだった。
ゴブリン達はみるみると数を減らしていっていた。
「グギャ!!!」
ゴブリンの悲鳴が響く。
・・・強。
みんな、強。
バケモノレベルで強いじゃないか。
この分だと、あたらしい子を呼ぶ必要はなさそうだ。
それどころか逃げ出すゴブリン達の
追撃にまで移っている。
「うそ。ゴブリン達があんなに簡単に」
ラナちゃんがつぶやく。
あれ?
あれれ?
なんか生活のために手伝って
もらっていたけれど、もしかして
この子達の方がゴブリンより
ヤバい存在なのでは、と思った。
そしてそのまま僕は、
再びこの村を救ってくださった英雄様として
村人達に胴上げされるのであった。
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