18回目の転生は違うようです。

あれです。

1章 呪人

第1話 18回目の転生。

とある神殿のような廃墟の台座。

そこに、黒髪の小さな男の子が裸で置かれていた。


……ん?

一気に意識が浮上し、パチっと目を開けるとボロい建物の天井が見える。


「……またか」


俺がそう呟くのはこれが『18回目の転生』だからだ。

一番古い記憶の人生は、日本に生まれた普通の男の子で、母親の新しい男に虐待を受け、内臓破裂により5歳で死亡。


訳も分からず気付けば最初の転生をしており、たぶん同じ日本で別の人の子供として生まれ、今度は母親から虐待を受けながらも成人まで成長し、25歳の時に集団から暴行を受け死亡。


3回目の人生は、地球とは全く違う世界に転生し、生まれてすぐ捨てられ孤児として生き、18歳で山賊に切り殺されて死んだ。


その後も転生を繰り返すが、奴隷として人生を終えたり、また男の子に転生したと思えば奴隷としてオッサンの相手をさせられたりした後、16歳で動物の餌にされるという人生を経験して来た。


そんな中、魔法のある世界にも転生したがまったく魔法は使えず、魔物に食われて死んだ事もある。


4回目の転生を経験した頃から俺は、生まれた時から既に人生を諦めるようになり、生まれ変わってもどうせ地獄のような人生が待ってるんだろうと思い、生きる気力は殆ど無い。


不幸中の幸いと言えば、生まれ変わると人格や記憶はそれまでのままだが、新しい肉体の影響を多少受けるのか前世の恨みや憎しみは殆ど無く、新しい環境に慣れる事に精一杯だった。

それでも、これまで経験してきた事が記憶にあるので、楽しく生きられる気は無かったのだ。


転生した世界はいろいろで、魔術と科学技術が発達した世界もあったり、地球じゃ経験出来ない事もあったが、やはり地獄のような日々が続く。


これまで生きて来た人生、何度自殺しようとしたか分からないが全て失敗。

いや、何かに邪魔されてるような感覚だな。

そんな人生を繰り返し15回目の転生をした時、ステータスのある世界に転生し、そこで初めて気付く事になる。


俺がなぜこんな苦しい思いをしないといけないのか?

それは『神の呪い』というものを受けていたからだ。

最初ステータスを見た時、なぜ? という疑問の後。

いつ受けた?

俺が何をした?

どこの神の呪い?


などいろいろ考え、一番最初の人生? いや、その前にも人生はあっただろうけど、一番古い記憶の虐待を受けて死んだあの時から、この『神の呪い』があったのでは? と思う。


転生して前世の記憶や自我が残っているのは、この『神の呪い』の影響なのでは? と考え、それからはこの呪いを解く事を目標にして生きて来たが……結局は何も出来なかった。


ステータスがあってレベルがある世界でも俺は、いっさいレベルが上がらない。

これも『神の呪い』の影響だろう。

魔法がある世界でも魔法は使えない。

そんな俺に何が出来る?

完全に詰んでる状態だ。


そうなると俺に呪いを掛けた神とやらに対して当然、怒りが湧いてくる。

いや、殺意だな。


途中の転生で廃人のようになった俺が、いずれその神を殺してやると思うようになり、地獄のような人生を生きて来た前世、17回目の転生をして生きていた世界もステータス、レベル、スキルがある世界だったが俺は、なにもスキルを習得する事は出来ず、それでも呪いを解くためいつかレベルが上がるんじゃないかと倒せる魔物を倒しまくっていた。

しかしある日、魔物に食われてあっけなく死んだ。

そして現在だ。




身体を起こして周囲を見回すと廃墟となった神殿のような教会のような石造りの建物の中にある、台座の上に俺は寝転がっていた、しかも裸で。

また親に捨てられたか、ここに置いていかなければならない事情があったのかは分からないが、ふと自分の身体や手を見て頭に?が浮かぶ。


身体はおそらく1歳か2歳くらいの大きさ、今までなら生まれてすぐ認識していたのに、この歳になるまでなぜ認識出来なかったのか疑問に思う。

これも呪いの影響か?

今までそんな事はなかったに今回に限ってなぜ?

そうだ、今回もステータスはあるのかな?


前世と同じようにステータスを見ようと意識を切り替えると、頭の中に浮かんだ。


名前;

種族:呪人

年齢:0

職業:なし

職歴:なし

ユニークスキル:【呪属性魔法】

スキル:なし

耐性:【呪い吸収】

称号:【神呪を克服した者】



ステータスを見て俺は、自然と涙が溢れてきた。


「……スキルだ」


前世でどれだけ魔物を倒しても、どれだけ訓練しても得られなかったスキル。

それが転生して最初からある事に俺は、今まで地獄を生きて来た事が報われたように感じ、暫く台座の上に座ったまま泣いてしまった、裸のままで。


暫くして落ち着いた俺は、ステータスに書かれている事に意識を向ける。

まず種族の『呪人』とはなんだ?

のろいびと? それともじゅじんと読むのか分からないが、それはまあどっちでも良い、今まで転生して人間以外の種族になるのは初めてだけど。


それよりも。

0歳ってどういうことだ?

身体は1歳か2歳くらいだけど、年齢が0歳とは生まれたばかり……もしかして、ここで自然に生まれたって事か?


種族は明らかに普通の人間じゃないからな。

まさか、最初から親無し?

……まあ、親が居ようが居まいがどっちでも良いか。

今までの人生で親が居て良かったのは……1回しかなかったもんなぁ。

その優しい親も目の前で殺されたけど。



そして次は、職業。

この世界は職業があるのか、今までの人生では初めての項目。

どうやったら就けるのかは後で確かめよう。


で、耐性スキルにある【呪い吸収】

字面からして呪いを吸収するんだろうけど……よく分かんないね。

これも後で確かめよう。


一番気になるのは最後にある称号『神呪を克服した者』って俺の事だよな?

神の呪いを受けてたけど、それを克服した?

どうやって?

前世で魔物を倒しまくってたお陰?

……まあ良いか。


とりあえず今までの地獄と思える全ての人生が、これでやっと終わりを迎えられるって事だ……そうだよね?

違うならまた今世も地獄って事だなぁ。

いや、ちゃんと克服したと書いてあるんだし、たぶん大丈夫。


「フフフ……」


自然と笑みが零れる。

ここからだ。

ここから俺に呪いを掛けた奴に、いずれ必ず復讐してやる!

あっ……呪いを克服したって事は、もう転生しないかもしれない。

って事は、今までどおりのように無茶は出来ないな。


今までは死んでも良いという気持ちで生きて来たけど、せっかく克服して復讐出来るかもしれないんだ。

今世は慎重に生きないと。



さて、ステータスの職業がどういう意味なのか確かめないとね。

農家になったりしたら農家になるのかそれとも、どこかで職業を授かるのかだ。

強くなれるのは後者だが、今まで呪いを受けて地獄のような人生を生きて来た俺が他の人と同じように職業を得られるのかは微妙だけど。


さっそくステータスの職業欄に意識を集中させると。


『選択可能な職業:見習い呪術士』


頭の中にこの1つが浮かんだ。

こうやって職業を選べるのは有難いけど……呪いに関する職業しか無いのか。

これはおそらくユニークスキルの影響かな?

もしかしたら、他のスキルを習得したら他の職業が出るのかも。


とりあえず今は『見習い呪術士』を選択。


『職業が見習い呪術士になりました』

『スキル【呪術】と【解呪】を取得しました』


突然頭の中に響いた声に俺は、目を見開き暫くの間固まってしまった。



名前;

種族:呪人

年齢:0

職業:見習い呪術士_Lv1

職歴:なし

ユニークスキル:【呪属性魔法】

スキル:呪術_Lv1

    解呪_Lv1

耐性:【呪い吸収】

称号:【神呪を克服した者】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る