第47話 勇者学院

 勇者学院前の並木通りを三人は歩いていた。


「懐かしいわねー!」

「うんうん!」

「そうだな。だが、前世の記憶があるせいか変な感じがする」


 そのまま三人は校門を潜り中に入っていく。校庭の前を通り、中庭を抜け、食堂で昼飯を食べた。最後にFクラスの担任の先生だったマキナ先生に会いに行こうと言う話になった。職員室に訪れて先生を呼ぶ。


「おぉー! お前ら元気だったか」


 中から出てきたのはオールバックが特徴の背が低めの口髭がダンディーな男だった。


「マキナ先生!」

「お久しぶりです!」


 イリスとビエラがそう言ってお辞儀をした。


「大体三ヶ月ぶりか?」

「そうですね。お久しぶりです」


 ネイビスも二人に習ってお辞儀をする。


「まぁなんだ。三人は一皮剥けたな。何かあったか?」

「ええ。色々ありましたよ」

「色々あったわね」

「うんうん」

「そうか。それは是非聞きたいな」


 その後三人は積もる話をマキナ先生に話した。一部オブラートに包んで。そして謁見の話になった時、マキナ先生が言い出した。


「そう言えばお前ら何か悪いことはしていないだろうな? 数日前に国の役人が来てお前ら三人の情報を求めてきたんだよ」

「そうなんですか?」


 ネイビスが訊くとマキナ先生は頷いた。


「ああ。その日は何かメモしてすぐに帰って行ったが。謁見の件と何か関係があるのか?」

「分かりません。少し不安ですね」

「まあ、何があっても俺はお前らの先生だからな。いつでも相談しろよ」

「「「はい!」」」


 三人はマキナ先生と別れて、王都を散策することに。


「それにしても国の役人さん。何調べたんだろうね?」

「だな。俺も何気に気になってる」


 どれだけ考えたって答えは出ない。ネイビスはまぁ平気でしょと割り切ることにした。


「とりあえず、美味しい物でも食べましょう! 掲示板によると最近りんご飴っていうお菓子が流行っているみたいよ!」

「りんご飴な。あれ美味しいよな」


 ネイビスは前世で食べたりんご飴のことを思い出していた。


「なにネイビス。あなた食べたことあるの?」

「ああ。祭りの時とかな」

「祭りの時そんなお菓子あったっけ?」


 ネイビスの発言にビエラが首を傾げる。


「ああ。まぁ、前世だけどな」

「またそれね。まあ良いわ。美味しいのならそれにしましょう!」


 イリスを先頭にして三人は王都の町を往く。


「りんご飴3つください!」


 三人はりんご飴を買って、また例の噴水の前のベンチに座り、りんご飴をぺろぺろしていた。


「いよいよ明日かー」

「そうだね」

「ネイビス緊張してる?」

「そりゃ緊張くらいするさ。だがワクワクが勝ってるがな」

「ネイビス君らしいね!」


 りんご飴を食べ終えると三人は夏服を買いに行くことにした。今日は6月20日。これから夏という時期だ。店に行くと夏向けの服が並べられあった。


「私はホットパンツかな。それに黒のシャツ。ネイビスはどう思う?」

「私はこの白のワンピースにしようかな? ネイビス君、似合うかなぁ?」


 イリスとビエラが服を手に持ってネイビスに尋ねる。


「いや。二人なら何でも合うだろ」

「そういうこと聞いてるんじゃないわよ」

「そうだよネイビス君!」


 ネイビスの回答に不服だった二人は頬を膨らませる。


「なんかすまん。まあ。そのホットパンツならスタイルのいいイリス似合うし、黒のシャツも黒の似合うイリスに似合うと思うぞ」

「そう。ちゃんとできるじゃない」


 イリスは店員のもとへ買いに行った。残ったビエラが手に持った白いワンピースをネイビスに見せて訊く。


「ねね。私は?」

「白いワンピースか。流石にそれは冒険者向きじゃないんじゃないか?」

「そうだね」

「でも似合うと思うぞ。可愛いからな」

「ならデート用に買おうかな?」

「それが良いと思うぞ」


 ビエラも服を買いに行った。残されたネイビスは男物の夏服を探す。


「俺は短パンとか似合わなそうだな」


 ネイビスは無難に黒の長ズボンと胸のところにワンポイントの刺繍のある白いシャツを買った。それと【冒険者の服(夏季)シリーズ】のCセットとEセットが好みだったので二つとも手に取って買う。


「ネイビス結構買ったわね」

「おう。ついな」

「そろそろ冒険者ギルド戻る?」

「そうだな」


 三人は冒険者ギルドに戻り、帰りがけ露店で買った夕飯を食べる。


「ねぇネイビス君。不死のアクセサリーが手に入ったらこのミスリルバングルはネイビス君に返そうと思うんだけど」

「どうしてだ?」

「えっと。ネイビス君が一番経験値必要なんでしょ?」


 それを聞いてネイビスは考える。確かにミスリルバングルを返してもらえるのはありがたい。ネイビスだって早く強くなりたいのだ。だがこの考えをすぐに放棄する。


「いや。辞めにしよう。今後の方針だが、ビエラを先に聖女レベル99にすることにした。そして『リレイズ』を覚えてもらう」

「『リレイズ』?」

「ああ。死んでも自動で最大HPの25パーセントで復活するスキルだ」

「そんなのあるの?」

「ああ。ビエラがカンストしても経験値は俺とイリスで二等分されるからな。実質経験値1.5倍になる。そこにミスリルバングルの効果が付けば経験値3倍だ。だから先ずはビエラをカンストさせる」

「分かった。その次はネイビス君?」

「そうだな。早く魔導士になって普通の属性魔法を使いたいし。いいか?」

「ええ。私は最後でいいわよ」


 今後の方針が決まり三人は夜のイチャイチャタイムに入った。避妊の指輪を手にした三人に敵などもはやいなかった。

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