第46話 爆弾投下 その2
「チュンチュン」
朝ネイビスが目覚めると小鳥の囀りが聞こえた。それとイリスとビエラの「スースー」という寝息も聞こえた。ネイビスは一糸纏わぬ姿の二人の頭を優しく撫でて服をインベントリから取り出し着始める。
「ん? ネイビス起きてたの?」
イリスが目覚めてネイビスに問いかける。
「ああ。朝のキスするか」
ネイビスは服を着終えるとイリスの枕元に座りそっと口づけを交わした。
「珍しいわね。ネイビスがこんなに朝早いなんて」
「まぁな」
「ネイビス君。私にもキスして」
ビエラが起きて来てネイビスにキスをせがむ。ネイビスはビエラにも同じようにキスをしてから立ち上がった。
「俺、朝食買って来るから」
ネイビスが町に繰り出すと町は静謐な朝に包まれていた。露店でサンドイッチを三人分買ってネイビスは宿屋に戻る。
「買って来たぞー」
「ありがとう」
「ネイビス君ありがとう!」
三人は朝食を食べながら今日の予定を確認する。
「明日の十一時が謁見よね。今日は冒険者ギルドに行けばいいのよね」
「そうだな。とりあえずは冒険者ギルドに行くか。だとしても結構時間が余ると思うんだよな」
「なら、私達の母校に行かない?」
「それ賛成! ビエラナイスアイデア!」
「勇者学院か……。それもありだな」
「じゃあ、午前中は冒険者ギルドで午後は勇者学院でいいわね?」
「異議なし」
「うんうん!」
その後三人は王都にある冒険者ギルド本部に赴いた。とても荘厳ででかい建物に三人は圧倒されたが明日は王城に行くのだからいちいち気にしてはいられない。受付の男性にネイビスは以前ダンジョン都市イカルの『カエル沼』の受付で書いてもらった証書を提示する。
「ダンジョン発見者の方ですね! お待ちしておりました。これからギルドマスターと会っていただきます!」
受付の男性にそう言われて三人は建物の5階へと案内された。5階に上がると一つの大きな両開きの扉があり受付の男性は「お入りください」と言って下の階に戻って行ってしまった。
「入りますか」
「そうね」
ネイビスが恐る恐る扉を開く。すると中にはとても見覚えのあるフロストコングがいた。いや、違う。フロストコングに似たカーネルドに似た一人の男がいた。
「よう! 待ってたぜ」
三人が入り口で突っ立っているとそのフロストコングは三人に声をかけた。
「もしかしてカーネルドさん?」
「お? 俺の兄貴を知ってるのか? 俺はアーネルド。斧聖レベル60だ! グハハ!」
「俺はネイビスです。一応魔法使いレベル68です」
「レベル68」という言葉を聞いてアーネルドは「グハハ!」と笑った。
「お前さんがあの噂の人類最高到達レベルの更新者か! お嬢ちゃん達は?」
「私はイリス。剣士レベル55よ」
「私はビエラです! 僧侶レベル55です!」
「ほう。確かに三人ともかなりの実力を持ってるみたいだな」
アーネルドは舐め回すかの如く三人を見回す。
「まぁいい。それより座れ」
アーネルドはソファーを指し示す。ネイビス達は指示通りそのソファーに座った。
「先ず大きく分けて二つある。一つが新しいダンジョンの情報提供料の支払いだ。これは額が額なだけにここで俺が直接支払う。そして二つ。明日の謁見についてだ」
そう言ってアーネルドはインベントリから見慣れない硬貨を取り出してテーブルに並べる。
「大金貨12枚だ」
「「大金貨!?」」
イリスとビエラが驚きの声を上げて立ち上がる。
「大金貨ってそんなにすごいのか?」
ネイビスが疑問を口にするとイリスが説明を入れる。
「すごいも何も、白金貨100枚分の1億ギルよ! 貴族とか王族とかしか持っていない物なんだから!」
「てことは12億ギルってことか……」
ネイビスはマジマジと大金貨を見て手に取る。
「一人4枚ずつだな」
「そうね……。すっかり大金持ちになったわね」
「だね」
三人は4枚ずつ大金貨を取って各々のインベントリに入れる。それを見てアーネルドが助言する。
「まぁ、あまり大金貨を持ってるって言わない方がいいぞ。将来家を買う時にでも取っておくと良いな」
「はい。そうしようと思います」
「よし! 次は謁見についてだな。謁見は俺も同席するが、礼儀を守ってもらわなくてはならない。そこを今から指導する」
「よろしくお願いします」
そこから礼の仕方や頭を上げるタイミングなど様々なマナーをネイビス達はアーネルドから教わった。
「まぁルドルフは多少の無礼は許してくれるからな」
「そうなんですか……」
「ああ。じゃあこれで終わりだがいいか?」
「いえ。少しだけ話したいことがあります」
そう言ってネイビスは不敵に笑った。
「なんだ? 言ってみろ」
「先ずは俺のステータスを見ていただけますか?」
それから大体カーネルドの時と同じような流れでネイビスは転職について教えて行った。
「こりゃたまげた。転職ねぇ。確かにこのステータスとスキルを見れば納得がいくな」
「はい。ここでお願いがあるのですが、明日の謁見で転職の証人になって欲しいのです!」
「おう。いいぞ! それにしてもこの情報はヤバいな。またすげえ額の情報提供料が支払われるかもしれないぞ。とりあえずスキルとステータスをメモさせてくれ。今後の役に立てたい」
「良いですよ」
アーネルドは三人のステータスを紙に写していった。一通り書き写し終えてから三人に尋ねる。
「この『ノービスの本気』とか『プチマジックミサイル』とか『剣士見習いの本気』とか『プチホーリー』とかは第四スキルってことは分かる。だがこの『プチメテオ』『プチフリーズ』『プチストーム』ってのは何だ? それに嬢ちゃんの経験値二倍ってのも気になる。それにアクセサリーの効果が尋常じゃないな」
「あ、やべ。アクセサリー外すの忘れてた」
「詳しく聞かせてもらおうか」
仕方なく三人はアクセサリーについて話すことにした。
「そうかそうか! 世の中は広いな! じゃあ早速スキルをお披露目してもらおうか! 新しく発見されたスキルを記録するのも仕事なもんでな!」
三人は冒険者ギルド地下訓練場に向かった。
「良いんですね?」
「ああ。どうなっても俺が責任を取る」
「じゃあ行きます。『プチメテオ』」
結果。地下訓練場にでかいクレーターができた。
「『プチストーム』」
結果。生まれた竜巻がうねうね動き回り壁にぶつかって壁を破壊した。
「行きます!『プチフリーズ』!」
結果。とても寒かった。アーネルドがフロストコングに見えた。
「凄まじいな。特に兄ちゃんの放った魔法。それならあのAランクダンジョン『ドラゴンの巣』を攻略できるかもしれないな」
「もちろんそのつもりですよ」
「グハハ! 一本取られたな!」
それからも三人はそれぞれの第四スキルを披露して行った。
「ほう。『プチホーリー』は攻撃魔法なんだな。こりゃ世紀の大発見だ」
「以上で終わりですか?」
「ああ。お疲れさん。今から部屋に案内するから今日は泊まっていけ」
三人は3階にある豪華な部屋に通された。
「あのー。午後出かけてきても良いですか?」
「ああ。構わんぞ。明日の朝9時にここにいてくれれば良いから」
「了解です。じゃあイリス。ビエラ。行くか?」
「そうね。行きましょう」
三人は部屋で少しくつろいだ後勇者学院に行くことにした。
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