第43話 爆弾投下 *ステータス記載
「紅茶とクッキーです」
ギルドの女性職員がテーブルに紅茶とクッキーを置いて部屋を後にする。そのテーブルの片方にはネイビス達三人が座り、もう片方にはカーネルドが座っていた。
「まぁ、食え! 美味いぞ」
「じゃあ遠慮なく」
ネイビスは特に気にすることなくボリボリとクッキーを食べ始める。それを見たイリスが呆れ顔を作りネイビスに言う。
「あなたには自重って言葉はないの?」
ネイビスは口いっぱいのクッキーを紅茶で流し込もうとする。それを見てカーネルドは「ガハハ!」と笑い、ビエラは「ふふふ」と微笑んだ。クッキーを飲み込んだネイビスは口を開く。
「イリスも食え。美味いぞ」
「そんなに?」
ネイビスに言われてイリスもクッキーを一枚手に取って食べる。
「確かに美味いわね」
それを見てビエラもクッキーを食べる。
「本当だ! 美味しい」
「そうだろ? ここイカルには世界中の名産物が集まるんだ。このクッキーは小麦がよく取れるエルデ地方で作られたクッキーなんだ。このクッキーを食える冒険者なんてのはほんのひと握りだけだぞ! 光栄に思え! ガハハ!」
「エルデ地方かぁ。私いつか行ってみたいな」
「そうなのか?」
「うん」
ビエラは一つ頷くと語り始める。
「よく本の中に出て来るんだ。自然が綺麗な場所だとか、最も天に近い場所だとか。そこで暮らしてる作家さんも多くてね。冒険が終わったらそこでゆっくり過ごして本でも書きたいなって」
それを聞いてネイビスは勇者学院時代にビエラがよく本を読んでいたのを思い出す。
「そう言えばビエラは本好きだったよな」
「うん!」
ネイビスの言葉を受けてビエラは満面の笑みで頷いた。それを見てカーネルドは「ガハハ」と笑って続ける。
「それは良いじゃねぇか。自分の冒険譚を物語にする奴も多いらしいぞ。まぁ、余談はこれくらいにして、そろそろ本題に入るとするか」
そのカーネルドの言葉に約一名ボリボリクッキーを食べ続けているネイビスを除いて緊張感が走る。
「あなた、クッキー食べるのやめなさいよ」
「んっんしょんんん」
「飲み込んでから話しなさいよ!」
「ガハハ! 仲が良くて良いな! まぁ、なんだ。最初の質問はどうやってその若さでそこまでレベルを上げることができたのかってことだな」
ネイビスは再び紅茶でクッキーを流し込んでカーネルドの質問に答える。
「それは簡単な話ですよ。ダンジョンを周回するんです」
それを聞いてカーネルドは眉間に皺を寄せる。
「周回? それは禁止されているはずだが?」
「はい。ですがそれは発見されているダンジョンの話でしょう?」
「まさか!」
「そのまさかだと思いますよ」
「そうか。お前らが噂のダンジョン発見者だったのか」
「はい。そのことで国王に謁見があるので明日王都に行くつもりですが、ここでお願いがあります」
「なんだ?」
「是非これから説明することの証人になっていただきたい」
そう言ってネイビスは自身のステータスを表示してカーネルドに見せる。
名前:ネイビス
年齢:17
性別:男
職業:魔法使いLv.68
HP:807/807
MP:1014/1014
STR:269
VIT:269
INT:507
RES:438
AGI:269
DEX:338
LUK:269
スキル:『応急処置』『リカバリー』『サーチ』『ノービスの本気』『プチマジックアロー』『プチマジックウォール』『プチマジックウェーブ』『プチマジックミサイル』『マジックアロー』『マジックウォール』『マジックウェーブ』
アクセサリー:なし
ネイビスのステータスを見たカーネルドは暫し固まってしまう。
「なな、何だこれは!? MP1014だと!? INTなんか500を超えている……。それに何だこの膨大な量のスキルは!?」
「イリスとビエラも見せてやれ」
名前:イリス
年齢:17
性別:女
職業:剣士Lv.55
HP:636/636
MP:468/468
STR:368
VIT:312
INT:156
RES:156
AGI:212
DEX:156
LUK:156
スキル:『スラッシュ』『二連切り』『蟲斬り』『剣士見習いの本気』『一刀両断』『三連切り』『魔獣斬り』
アクセサリー:なし
名前:ビエラ
年齢:17
性別:女
職業:僧侶Lv.55
HP:468/468
MP:636/636
STR:156
VIT:156
INT:312
RES:368
AGI:156
DEX:156
LUK:212
スキル:『プチヒール』『プチキュア』『プチリジェネ』『プチホーリー』『ヒール』『キュア』『リジェネ』
アクセサリー:なし
アクセサリーのことは聞かれると面倒なので三人は事前に外していた。それでもなお高いステータスにカーネルドは驚きを隠せない。
「ちょっと待て。頭が混乱してきたんだが……。なんだこれは? 説明してくれるのか?」
頭を抱え込んで考え込むカーネルドを見てネイビスは良い反応をするなぁとほくそ笑みながらも、真剣を装って答える。
「はい。要するに転職です」
転職という言葉が予想外だったカーネルドはすぐさま聞き返す。
「転職?」
「ええ。レベル99になると同系統の一つ上のランクの職業のレベル0に転職できるんですよ」
「俄には信じ難いが、お前さんがそう言うんだからそうなんだろう。二人のお嬢ちゃん達も転職したのか?」
「はい!」
「そうね。私は剣士見習いから剣士に転職したわ」
それを聞いてカーネルドは納得したのか顔を上げた。
「だからか。お前らにはこれっぽっちも敵わない気がしたんだよ。それで? 俺はこの転職とやらの証人になれば良いのか?」
「はい。具体的には一緒に王都に来てもらいたいと」
「それは無理だな。俺はこの町の冒険者ギルドを任されてる。何かあった時に俺がいなきゃなんねぇんだ。今日お前らが現れた時みたいにな。だがまぁ、証書くらい書いてやるよ」
そう言ってどこからか紙を持ってきたカーネルドはその紙にペンで何かを書いて行く。
「ほらよ。もしなんかあったらこれ見せな!」
「ありがとうございます」
その証書には冒険者ギルドダンジョン都市イカル支部ギルドマスターが転職を認めたことの証明が記されていた。ネイビスはそれを大事に自身のインベントリに仕舞う。
「この情報は俺が初めてか?」
「はい、そうです。恐らく転職について知っているのはここにいる四人だけかと」
「そうか……。そりゃすげぇもんを聞いちまったな。まぁ、どうせ謁見でバラすんだろ?」
「流石に分かりますか?」
「ああ。だってお前、その証書手にしてからずっとニヤけてるからな。なんか企んでるだろ」
「はい。確かに企んでることはありますね」
するとビエラが尋ねる。
「ネイビス君。何企んでるの?」
「私達に隠し事は無しじゃなかったかしら?」
「悪い悪い。まだ上手く行くかわかんなくて黙ってたが、教えるよ」
「俺が聞いてても良いのか?」
ネイビスが二人に教えようとすると空気を察したカーネルドが部屋を出ようとする。それを見てネイビスがカーネルドに声をかける。
「カーネルドさんにも関係する話ですので構いませんよ」
カーネルドは一度浮かせた腰をソファに下ろした。
「おう! そうか。なんだ? 俺に関係する話って」
カーネルドが尋ねるとネイビスは少し溜めてから語り始める。
「単刀直入に言うとダンジョン周回の復活です」
「ほほう。それは興味深いな」
その後もあれやこれや話して夜が更けていくのだった。
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