悪役令嬢に召喚された俺は、三分間で世界を救うチートスキルを考える
黒上ショウ
三分間で世界を救います
俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
転生した先の異世界を破滅から救うことだ。
目の前には俺を異世界に召喚したと思われる女性がいる。
整った顔と小柄な身体と、意志が強そうな目つきと余裕げに上がった口元──時間がないのでこの辺にしておこう。
「あなたはチートスキルをひとつだけ選べるわ」
悪い誘いのような声と顔で、女性は言った。
「世界が滅びるのを無しにするスキルとかはダメよ。正攻法で世界を救うスキルを考えなさい。そのためにあなたを召喚したんだから」
時間制限の上に、スキルにも制限がかかる。
女性は性格が良くないようだ。
悪役令嬢とかの人物だろう。
「チートスキルを発動するには、どうしたらいいんだ?」
最重要の質問を俺はした。
スキルの使い方がわからないことには、始まらない。
「この剣を天に掲げて、欲しいスキルを大声で叫びなさい。スキルの内容が世界を救えるものだと女神が認めたら、すぐにチートスキルを使えるようになるわ。早く決めなさい」
理不尽に急かされなくても、俺はもうスキルを決めていた。
女性から古びた剣を受け取ると、俺は女性の後ろにある、ファンタジーな女神像の前に立ち大声で叫んだ。
「俺を元の世界に戻し──」
「ちょっと!そういうのはダメって言ったでしょ!?」
女性が俺に抱きついて止めに来たが、俺は無視してスキルの内容を叫んだ。
すると、女神像の眼が青く光り、古びた剣も光を放ち始めた。
「えっ、嘘でしょう……?」
俺と、俺に抱きついた女性の身体が、剣から放たれるまぶしい光に包まれた。
「……この物語を進めれば、私の世界が救われるって本当なの」
悪役令嬢は、現実の俺の部屋で、カップラーメンを食べながら不機嫌そうに聞いた。
「本当だ。これを見ろ。お前にそっくりだろ?」
部屋のモニターに映し出された、乙女ゲームの画面を俺は指差す。
そこには整った顔で小柄な身体の、意志が強そうで余裕げに口元を上げるキャラクターが──。
悪役令嬢に召喚された俺は、三分間で世界を救うチートスキルを考える 黒上ショウ @kurokami_sho
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