ラディの話4

 目を覚ましたモーリスは幾分、顔色に血色が戻っていた。

「気分は?どう?」

「うん、だいぶ良いよ」クスッと笑って「ディープも休めたみたいだね。良かった」

「え?どうして?」

「寝癖、ついてる」


 ディープはまだ迷っていた。それでも話さなければならないと思った。

「モーリス。お願いしたいことがある」

(……?)

「検査入院して欲しいんだ」

 表情を変えたモーリスを見ながら

「1週間くらいで済むと思うから。今すぐというわけじゃなくて、グラント達が出発して落ち着いてからでいい。今の状態を確認して、これからのことを考えたいんだ」


「これからのこと…」モーリスは小さな声で繰り返し、

 そして、「いいよ。わかった」

「え?」意表を突かれてディープは驚いた。「えぇっ?!」

 モーリスは苦笑して

「僕が嫌がると思ってた?どう話したらいいかって、悩んでたんでしょう?」

「…うん」

「なるべくもう入院したくないという気持ちに変わりはないけど…。わかるよ。集中できなかったり、すぐに疲れて起きていられないことが少しづつ増えてる。ディープが必要だと言うのなら、そうする。僕はまだやりたいことが残ってるんだ」


モーリスは続けた。

「…ごめん。僕が入院している方がディープは楽だよね。きっとこの先、もっと負担をかけてしまうことになるから」

「モーリス」

ディープは首をふった。

「君はわがままだと思う必要はないんだ。応えられるかそうでないかを考えるのは僕の役目で、それを苦に思ったことはないよ」

「ありがとう。…ね、いつ起きていい?明日とか?」


 モーリスが不意に話題を変えたのは意図してのことなのだろう。ディープへの負担を気遣うモーリスと、モーリスのために最大限自分の時間を使おうとしているディープとでは、このときはまだ平行線だった。


「モーリス」ディープはため息まじりに「それなら少しでも食事できるようにしないと。ラディにも強く言っとくからね」

「あぁ、もう…。厳しいな。ディープにラディ、ヴァンと3人もうるさいお目付役がいるんだから」

 肩をすくめ、冗談まじりの言葉のあとで

「でも…。ありがとう。そのおかげで僕はこうしていられる」


 

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