弓兵ユーミヤの今日の戦場

DRy0

弓兵ユーミヤの今日の戦場

 ユーミヤには三分以内にやらなければならないことがあった。


「こちら前線、地点Bに支援を求む。」

 私、ユーミヤは帝国軍遠距離支援部隊の一人として戦争に参加している。前線から入る支援要請に応じて弓矢による支援を行うのが私の仕事だ。


 雪解けからはじまった帝国と共和国の戦争。

 実りの季節には終わるはずだった戦争は、共和国が前線に投入した機工部隊により、冬を迎えようとしている今もなお続いている。

 共和国機工部隊は魔力と蒸気の複合機関により駆動する機工鎧を装備し、頑強な装甲と強靭な出力を両立している。我らが帝国軍は歩兵による侵攻を行っていたが歩兵による攻撃では機工鎧を突破することが困難であった。稼働時間が短いために共和国が攻勢に出ることがなかったことは不幸中の幸いといえるだろう。


 ただ、帝国軍も機工部隊に対する手立てを考えていなかったわけではない。

 侵攻を止めるために人の壁をつくる、スクラム作戦。

 水をぶちまけて蒸気機関を狙う、打ち水作戦。

 類似した機工鎧を作成する、ハリボテ作戦。

 多くの作戦がうまれたが、いずれも戦果を挙げることはなかった。

 そして新しく生まれたのが、遠距離支援部隊を編成し、前線へ支援を送る作戦だ。


 より具体的な作戦の説明をしよう。

 我々は、支援魔法を付与した弓、すなわち、バフを付与したアロー、バフアローを前線に届けている。通称、バッファロー作戦である。


 このバッファロー作戦は遠距離からバフアローを届けることが必要になる。そのため、まずは弓兵に対してバフを付与し、より強力な弓を引けるようにした後、バフアローを前線へ送るのだ。

 後方支援部隊から私にバフが届いた。弓へのバフも完了している。

「遠距離支援部隊、撃ち方、はじめ。」

 部隊全体が弓を射る。バッファローの群れが全てを破壊しながら前線へ向かう。

 その光条は戦場を照らし、誰が見ても戦況を一変させるのは明らかだった。


 そう、結果として、前線帝国兵を射殺した。

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