俺に嘘告してきた後輩美少女、どう見ても俺の事が好きで可愛い
神崎郁
第1話 後輩美少女に嘘告された
「お久しぶりです。真木先輩、私のこと、覚えてますよね?」
「ああ。でもどうしたんだ? 一年以上も話してないのに今になって呼び出して」
「ええと......先輩に、大事な話があります」
高二の冬。
放課後からさほど経っていないと言うのに、空はもう夕陽で染まろうとしている。
そんな中、俺、
目の前に立っている後輩の少女の頬は紅潮している。放課後の呼び出し、彼女の表情......要するにこれは、そういうこと。告白イベントだろう。
というか、考えるまでもない。俺は人生で初めて女子に告白されようとしているのだ。それも相手はあの
白椿茜と言えば、言わずと知れた、この学校一の美少女だ。そして、俺の中学時代の部活の後輩でもある。
まあ本当にあの時もただの先輩後輩で、偶にからかい合う知り合い程度の距離感で、特別に親しいわけではなかった。
だから、俺も別に彼女に対して特別な感情があったかと言うとそうでもなかったと思う。
けど、今は流石に最高の気分だ。
彼女に関する噂は枚挙に暇がないが、告白を毎度雑に断り続けていることはあまりにも有名だ。
多分彼氏かイケメンの想い人がいるのだろうとは俺も思っていたが、まさかその理由が俺だとは。高揚が収まらない。
緊張で無意識にこわばった体からは、彼女が勇気を振り絞ろうとしていることがありありと伝わってくる。
彼女に共鳴するように俺の心臓も更に早鐘を打ち続けている。
十二月の冷たい外気が肌を刺す中で、沈黙を破るように、彼女はようやく口を開く。
「私、中学の時に、先輩に助けて貰ってから、ずっとずっと先輩のこと、好きでした!」
きたこれ。
そうだよな。諦めたらだめだ。諦めなくてよかった。
何せ、俺の青春は今ここから始まろうとしているのだから......
これからやってくる青春、いや、「アオハル」ってやつに目一杯の期待を寄せつつ、OKする。
「こちらこそ、よ、よろしく」
こちらの声も無意識に震えてしまって不格好な返事になってしまった。
でも結局の所は俺が勝ちだ。母ちゃん、おれ、彼女出来たよ......
「ありがとうございます、先輩。これからよろしくお願いします......」
彼女は頭を下げ、赤い顔で最高の笑顔を俺に向けた。紅く照らされて黒髪ロングが揺れる。
これが、幸せ。
「そこまでしなくていいよ。こっちがありがたいくらい。まさか、白椿が俺を好きだなんて」
そんなことを言って格好をつけてみせる。でも本心だ。
「まさか、なんかじゃありませんよ。私の中で先輩はずっと一番なんですから」
「俺が白椿に釣り合うかは分からないけど頑張ってみせる。だから、俺からもよろしく」
「だから、釣り合う必要なんてないんです。自信もって下さい。何せ、先輩は私が選んだ唯一の男の子なんですから。なので、私が先輩を幸せにしてあげます!」
ハイ! もちろん俺も君を幸せにして見せます!
俺、こんなに愛されてたんだ......というか、こんなに幸せでいいんですか?
これまで異性に好意を向けられることのない人生を送ってきたのに大逆転である。
そんなことを思っていると彼女がもじもじとした仕草をしだした。
どうしたのかと聞いてみる。
「あの......すみません。実は、一つ先輩に隠してたことがあるんです」
「大丈夫。白椿が何を隠していても俺は全部受け止めるから」
そうだ。だって彼女は、俺を好きになってくれた人なのだ。
それだけでも身に余るすぎる幸福なのだから、隠し事の一つや二つで幻滅する事なんて、そうそうないだろう。
空気が微かに揺れた気がする。彼女はニヤリと笑ってこう言った。
「実はこの告白、ぜーんぶ嘘なんです!」
「は?」
え?
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