第40話 ※(R)ミーアを知的に捻じ伏せておしおきする


 ミーアは図書室に入る寸前、景太がリバティホールに向かうのを視界に入れた。しかも、こっちにこいと手で挑発をしたのだ。舐めた真似をしてくれる。だが、そんな大胆不敵な所もミーアは嫌いではなかった。誘いに乗らないわけにはいかない。

 

 必ず、景太を自分の物にしてみせる。

 

 ミーアはリバティホールの中に入った。

 映画館のような大きな空間に広い舞台。

 

 だが、辺りは異世界に浸食され始めており、魔王城の一部に変わっていた。


「先輩、鬼ごっこはもう終わり?」

「あぁ……、ここで勝負を決める」


「先輩には勝ち目がないのによく言うわ。でも、私に負けてだらしなく泣きべそかいちゃうそんなダメダメな先輩も私なら可愛がってあげられる。ざぁこって罵ってあげる。それで、先輩は私の物だーって、聖女に見せつけながら犯してあげるわぁ」


「趣味が悪い」

「あはっ、趣味が良いでしょ?」

「安心しろ。セックスするなら遥としかしない」


 ピクリとミーアの頬が引きつった。


「私の前で聖女の名前を出すの止めてもらえる?」


「無理だ。俺は遥が好きだ。超大好きだ。実は毎日イチャイチャしてラブラブだが、これからもっと色んなことをする。あんなことや、そんなことも……いっぱいな‼」


「やめろぉ‼」


「お前に屈することは決してあり得ない。俺は遥とイチャイチャしまくる人生しか選ばない。将来は遥と子供を三人作って幸せな家庭を築くんだ。だから、俺の人生のプロセスにお前は存在しない。お前は遥以下だ」


「やめろって言っているでしょぉぉぉがぁぁ!」


 ミーアは地面を蹴り、空を飛ぶ。


 空を飛んだのには理由があった。大いに冷静さを失いかけていたミーアであったが、ここまで簡単に姿を現す景太に少し警戒感を持っていた。


 もしかしたら、景太の進んでいった先に勇者たちが仕掛けたトラップでもあるかもしれない、そう踏んでいたからだ。


 現に、ミーアの思惑は当たっていた。景太の五メートル前に足を踏み入れたら捕えることができる結界が敷かれていたからだ。

 

 ミーアは軽々と、そして華麗に結界を飛び越え、景太の後ろに回り込む。

 そして――、

 

「あはっ♡ さよーならせんぱい♡」


 ズプリと爪を景太の首に差し込んだ。 

 ドクドクと自分の体液を景太に流し込んでいく。一滴でも抗えなくなるほどの欲情を生み出し、発情しまくってしまうミーアの体液、それを入念に景太の中に流し込む。もはや一万倍どころじゃない。百万倍の劇薬である。


「先輩が私のものになった。やった、やったわぁ‼」


 ミーアの心は歓喜で満たされた。

 こんな形ではあったが、自分の好きな人を自分の手中に収めることができたのだ。これからは聖女ではない。

 自分が景太と一緒にイチャラブ生活を送るのだ。


「これからいっぱい気持ちよくなろうね。せんぱい♡」


 ドクドクドクドクドクドクドクドク。

 まだ、自分の体液を注ぎ込む。

 景太が死ぬまで自分の虜にする。

 いや、景太の魂に自分のことを刻んで忘れなくさせてやる。

 この劇薬に抗える男など存在しないのだ。

 ミーアは景太から爪を抜いた。

 勝った。

 勝ったぁぁぁ‼


――私が勝ったぁぁぁああああああ‼


 ミーアは勝利を確信した。

 だが――。


「た、勃っていない⁉」


 ミーアは景太の股間を確認しておののいた。

 まさか愛する彼は機能不全だったのか?

 いや、機能不全だろうが関係ない。

 ミーアの体液を流し込んだ男はみな等しく発情する。

 なら、どうして――。

 いや、そもそもなぜ自分は聖女の加護に弾かれずに景太に触れられているのだ?

 こいつは――、いったい⁉


「気づくのが遅かったな」

「んなぁ⁉」


 景太の首が百八十度回転する。すかさずミーアを羽交い絞めにして、その動きを封じた。そして、その身をミーアの動きを封じ、魔力を封じ込める亀甲縛りの縄と化す。ミーアは身躾瑠奈の姿に戻ってしまった。


「ま、魔道具の……、に……人形だとぉぉぉ⁉」

「そうさ、ミーア君」


 上手から刀華が、下手から知世が姿を現す。

 ミーアは狙いすましたように出て来た二人を見て、自分の敗北を悟った。


「いつの間にか嵌められていた――」


「そうさ。君は我々の手のひらの上だったというわけさ。勝負に冷静さを欠いたのが敗因だね。まぁ、そうなるように八代君の人形に演じてもらったわけだ。だがしかし、結界を飛び越えられた時は正直やられたと思っていたよ。八代君から二段構えにした方が良いとアドバイスを受けたことが功を奏したようだね。さすが八代君だ。さて――、君に聞きたいことがある」


「なによ」


「黒幕は風紀委員長である佐渡さんかな? 四天王が憑依転生しているということは、彼女はさしずめ魔王ってところか。彼女はこの学園で何をしようとしている?」


「さぁ、知らないわ」


「ほぅ……、白を切るか。知世」


 知世は上から垂れてきた鍵縄にミーアを縛ったロープを噛ませると合図をする。操作室には知世の式神がいた。


 すると、知世が持っていた扇子で、スパッとミーアの着ていた制服が切り裂かれ、裸体を露わにしたミーアは亀甲縛りの一部解かれる。

 宙に吊らされたまま知世に向けて桃色のお尻を見せる形で。


「ちょ、ちょっと何すんのよ⁉」

「黙りなさいな、ふふ」


 知世はベチーンっ‼と思いっきりミーアのお尻を叩いた。


「ひぐっぅ‼」

「あなたの悪行は聞かせてもらってます。尻たたき百回でも足りないくらいですよ?」


 知世が微笑みながら、ミーアの尻を何度もぴっぱたく。


「まず、私の可愛い後輩に色目を使って、寝取ろうとしたんですって?」


 べチ―――ン‼


「はぐぅぁ‼」


「彼らは私の神社で結婚式を挙げて幸せになる予定なのよ‼」


 べチン‼ べチン‼ べチン‼


「うひゃぁぁああ‼」


「さらに、随分とこの学園の男女の仲を引き裂いて、ペットみたいに扱っていたらしいじゃないですか‼」


 べチン‼ べチン‼ べチン‼ べチン‼ べチン‼ べチン‼


「ひゃぁぅ‼」


「しかも、人の体を使って、自分の好き勝手に生きて! 女の子の初めてを! 何だと! 思って!! いるのですか!!!!」


 ゆうに百発以上の尻叩きにミーアの意識が飛びそうになる。

 桃色のミーアの尻も真っ赤に染まっていった。


「これが‼ 自分勝手に人の体を使い、男を弄び! 人の恋路を壊し! 人の恋人を寝取った者への罰ですよ‼」


 べチ――――――――――――――ン‼


「ひぐぁううぅぅぁ‼」


 ミーアはガクリと力なく項垂れる。


「何、寝ているのですか? まだ、終わりじゃありませんよ?」

「え、ええぇぇぇ……、もう、無理。無理だからぁ……」


 今度は式神たちと一緒にこちょこちょと孔雀の羽で足裏や脇の下を擽り始めた。


「やめて、お願い! くすぐったいのだめなのぉぉっ!」

「なら言いなさい? 佐渡さんが何をするつもりなのか」

「知らない、本当に知らないの! だから、擽るの……やめてください」

「ダメ、話すまで続けるわ」

「いやぁあああああああ!」


 数分間の擽り地獄にあった後、ミーアは白状した。


「魔王様は学園の生徒たちを使って魔力を回復するつもりだったけど、それでも魔力の半分も回復できないはずよ。だから、あなた達の戦力の要である聖女を堕として、そこから魔力を全回復させるつもり……。それが上手く行かなければ、私が生贄になるところだったけどね。まぁ……、早く助けに行った方が良いわよ。学園が異世界に浸食されているということは誰かの魔力を吸収しているってことだからね……、んっ! あぁぁん! だから、擽るのやめてぇ!」


「ちっ、もっと虐めてやりたいのだが、時間がないな」


「刀華ちゃん。私の式神たちから今、八代君とミミちゃんが体育館に向かっているって」

「ふっ、さすが八代君だ。では、我々を向かうとしようか。あとは君たちに任せる!」


 刀華と知世は式神たちを残して、リバティホールを後にする。


「こらぁぁぁ! このまま放置するなぁ! ほどけぇぇぇ! ひゃん! ぁん! へ、変な所を触らないでぇぇぇぇ! そ、そこは……わたしの……触っちゃだめ、弱い、ダメなところだからぁ……。も、もう……、もう、無理。こんなのえられない。ごめんなさい。私が、悪かったです。だから、だから。た、……助けてくださぁぁぁぁい‼」


 式神たちに擽られ続けるミーアの悲痛な叫びがホールに響いた。

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