学園カーストトップの異世界帰りの聖女様を助けて死にかけたら、強制的に恋人になる魔法のキスで蘇生されました~皆に隠れて毎日イチャラブしながら迫る危機は捻じ伏せます~
第37話 作戦会議と宣言、そして文化祭当日へ
第37話 作戦会議と宣言、そして文化祭当日へ
翌日、生徒会室。
明日から文化祭であり、授業は臨時で四時限までしかない。
朝から追い込みが各所で行われていたが、俺たちは生徒会室で明日の作戦を立てていた。
俺は今まで集めた情報を刀華先輩たちに放す。
「なるほど。ミーアが憑依転生している可能性があるってわけか。確かに、瑠奈君の幼馴染の話や八代君が集めた情報から考えると、まず間違いないだろう。ということはこのイベントも何かしら仕込まれているってわけか」
「はい。ですが、中止……というわけには行きませんよね」
「そりゃね。現に身躾さんは沢山の男を引っかけているだけであって、そんなの全国のJKを探したらある程度はいるだろうからね。憑依転生をしているといっても魂が見えない人たちに証明も難しいだろう。指摘しても私たちの方がおかしいと思われる可能性が高い。イベントを中止も難しいだろう。要するに私たちは敵に有利なフィールドで戦わざるを得ないというわけだ。そうだな。まずは――」
刀華会長が学園の見取り図を机に広げる。
「私たちの勝利条件はミーアを捕え、八代君と遥が第二ボタンを無事に交換し終えることだ。男子生徒はグラウンドから、女子生徒は各々のクラスからスタートすることになる。開始してから学園内は荒れるだろうね。八代君はそこから一直線で遥の元に行く必要がある」
大丈夫だろうか。運営側の妨害も受けることも考慮しないといけないよな……。
「八代君、大丈夫ですよ! だって、私たちには――」
『あ、そうか。俺たちには念波がある』
『はい。イベントが始まったら、すぐに私が移動した場所を景太に伝えます』
『これなら、他の生徒たちを出し抜けるね』
『はい!』
「え、何々? 二人で見つめ合って何をしているのさ」
「あ、えっと……俺たち二人だけで繋がれるテレパシーのようなものがありまして……」
「何それ、早く言ってよ! じゃあ、遥と八代君は連絡を取り合って落ち合って欲しい」
「分かりました」
「きっと当日は一筋縄ではいかないだろう。ミーアのペット達が妨害をしてくるならば、私と知世が対応する」
「具体的には?」
「私の腕っぷしに敵う人間はこの世界には存在しないよ。だが、魅了の力を持つミーアは強力だ。彼女を捕える結界を作って、その場に封じ込めよう。八代君が狙われる可能性が高いから、もし八代君が私たちと会うまでにミーアと遭遇した場合はその場所までミーアを誘い込んでくれ」
刀華先輩はその地点を4つ示した。
一つ目はグラウンドの中心。
二つ目は一階の中庭。
三つ目は良く外部の人を招いて講演を行う二階のリバティホール。
四つ目は校舎とは少し離れた所にある体育館だ。
結界は知世先輩の束縛の術であり、実際に束縛をしてもらった所、象すらも動けなくさせるほど強力だった。
これなら、ミーア達が現れた時に無力化できる。
だが、本当にそれだけで大丈夫だろうか。
もっと狡猾に彼女たちの隙をつく必要がある。
「刀華先輩、気になることがあるのですが」
「なんだい?」
俺はミーアを追い込む作戦をさらに提示した。
「なるほど――、悪くない作戦だ」
刀華先輩と遥と知世先輩は納得いった様子だった。
「では、文化祭当日はその手はずで行こう」
「ママとパパが会えるようにミミも手伝うの!」
「あぁ、よろしく頼む」
ミミの頭をクシャリと撫でてやる。
「我々、生徒会が必ず勝つ!」
刀華会長が掛け声を掛けると、俺たちは「おー」と手を挙げた。
☆
文化祭前日は作業が残っている。俺たちも最後の仕上げが終わり、メイド喫茶【ラグジュアリー】と如何にもと言った看板が立てられる。他クラスの出し物は徹夜をして仕上げるものではないから、学校に残っているのはD組の連中が大半だ。
正直なところ、最初他のクラスが飲食をやらないから、文化祭の当日飲食ができる場所を提供できる俺たちD組は有利ではないかと思ったが、校門付近には協賛会社が出している出店が並んでおり、明日は厳しい戦いが強いられそうではある。俺のメンタル的にも。
眼鏡君が「明日はD組の総力を結集して戦おう!」と活きの良いセリフを吐いてから解散になった。俺は生徒会室に戻って、ミミを迎えに行こうとしたが――。
「せーんぱい♡」
身躾さんがカフェテリアの入り口で待っていた。
もう分かっている。
彼女が異世界から来たサキュバスが憑りついた人格だということが。
「明日、楽しみですね?」
その楽しみには、文化祭が楽しみなのか、イベントで俺を堕とすことが楽しみなのか。
恐らく後者だろうけど……。
「そうだね。同じシフトだし、D組の皆も身躾さんの活躍に期待していると思うよ」
「そりゃ、当然♪ 私がいるんだから、他のクラスに負けるわけがないですよぉ」
身躾さんが俺との距離を詰める。そして、人差し指でピンッと俺の第二ボタンを弾いた。
「先輩? 自分が絶対に私に靡かないと思っているなら、それは大きな間違いですよ? 私は狙った獲物は絶対に逃がさない主義ですから。どんな手段を使っても先輩を堕としに行きます」
「そりゃどうも……光栄なことで」
「フィナーレはもうすぐですよ? じゃ、明日は頑張りましょーね!」
明日は気が抜けない一日になりそうだ。
俺も最大限の注意を持って、明日は臨むことにしよう。
☆
文化祭当日、空は澄み切っており、絶好のイベント日和だった。
清純学園の文化祭の来場者は招待制と抽選制になっており、チケットがないと入場することができない。
抽選枠は500名、倍率は七倍程度となっており中々の激戦である。抽選を通った多くが学生ということもあって、清純学園では男女問わずナンパが横行する。
まぁ、文化祭なんてそんなものだ。去年も校門前や中庭で男子からのナンパ待ちを待っている女子生徒がたむろしていた。
清純学園の生徒のレベルが高いということもあるが、みんなイケメン美女に恋をしたいのだ。
まぁ、俺はそんなことを気にすることもなく馬車馬の如く働いているのだが……。
「おかえりなさいませ、ご主人様ぁ~」
柄にもなく満面の作り笑いで、接客をする。
この接客をマスターするために遥とミミが寝た後、夜な夜な起きてメイドが出てくる漫画やアニメを数十本は見た。その後、洗面所で笑顔の練習。誰かに見られるのが嫌だから、こっそりやるのは俺の流儀である。
目の前には小太りなスーツを来た男性が二人。チーム八代の担当受持ちである。カフェテリア内は既に満席。滞在時間にも制限が掛かっており、三十分~一時間しかいることができなくなっていた。
「ご注文は何になさいますか?」
「オムライスのトッピングありで。景子さんのチェキ付きで!」
「かしこまり~!」
キュピーンと可愛らしく二人に愛嬌を垂れる。
あぁ、なんか俺の人格が崩壊していく。
文化祭が終わったら違う人格が出来ていそうだよ。
「景子さん。凄く可愛い」
「あの子にガチ恋したい」
「あれ、女じゃなくて男らしいよ?」
「え、男の娘? なら、もっと良い! 推せる!」
店内には猛者が多くいた。
俺が手を振ると歓声が上がる。
まじでどうなってるんだ、これ。
俺の昔が底辺キモオタだったことを疑う人気ぶりだった。
店内の一番人気は遥、そして、次に身躾さん。三番目は他の美女たちを差し置いて、俺だった。
だが、遥の指導もあってか、男の娘部門ではぶっちぎりの一位。
どうやら、SNSで宣伝をした結果、それが大量に拡散され話題を呼んでいるようだった。
「きゃぁー、景子さんが笑ったぁ!」
「微妙に照れながら手を振ってくれる景子ちゃん可愛い!」
「遥ちゃんとのツーショットもなんかエモい!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「うおぉぉぉお! 景子たん! 景子たん! 景子たん! 景子たん万歳!」
「景子、結婚してくれぇ‼」
「景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子! 景子!」
メイド喫茶がコールに包まれる。
俺の人生は今、最高潮に達しているのかもしれないな。
☆
お昼を過ぎたあたりから、客足が落ち着いて来た。チーム八代のシフトは14時までだったので、過酷な労働がそろそろ終わりを告げようとしていた。
「景子ちゃん、ご指名だよ」
「は~い!」
半日もやったらメイドが板について来たというか、男の娘であることに違和感がなくなってきたというか、慣れって本当に怖いと思ったね。
俺は急いで入口の方へ向かい、
「おかえりなさいませ、お嬢様方」
とにこやかな笑顔で一礼して挨拶をした。
――が。
「八代君、凄く似合っているよ」
「えぇ、ほんと女の子みたいね……」
「みゃー‼ パパがママ? ……になったの?」
「―――――――っぁぁぁ!」
見れば、刀華先輩たちが目の前にいた。
ミミは人の姿になって巫女服を着ており、知世先輩に手を引かれていた。
フサフサの両耳がむき出しのままだったが、文化祭だからか猫耳巫女服コスプレをしていると思われているのかもしれない。
午前の公演を終えて来たのか刀華先輩も知世先輩もジャージ姿ではあったが、化粧がのっているのかいつもより輝いて見える。いや、そんなことよりも顔面から火が出てしまいそうなくらい恥ずかしい。しかも、ミミにまで見られてしまい、俺の尊厳は跡形もなく崩れ落ちて行った。が、ここで折れたらメイド魂が泣くってもんだ。演じ切るのが男ってもんだろ?
「三名様ですね? ご案内致します」
俺は奥の席に案内すると、遥が対応する。
「おお、遥も可愛いね。似合っているよ!」
「あ、ありがとうございます……」
「ママ、可愛い! 私もその服着てみたいの」
「うん、今度作ってあげるね」
遥がミミの頭をよしよしと撫でる。
「では、二人には存分に接客してもらおうかな!」
刀華先輩が悪い笑みを浮かべる。嫌な予感しかしない。
「記念チェキと景子ちゃんと遥ちゃんのおニャン子ライブをお願いします」
「いや、ライブはやっていませんから。チェキだけでお願いします。一枚、三十万です」
「高っ!」
ガーンと刀華先輩は悲しい顔をしたが、仕方あるまい。
俺は注文されたカルボナーラ三つを厨房にオーダーする。
そういえば、身躾さんの姿を見かけなかった。
午前中は接客をしていたけど、いつの間にかいなくなっている。
協賛会社が身躾さんの会社っていうこともあるからかもしれないけど、今朝から身躾さん目当ての人も多く来ていた。年齢層は高めではあったが、客単価が高いので客数だけでなく売上にも貢献したのだが……。
「八代君!」
「お、おぅ!」
執事服を着た眼鏡君が涙を流していた。
「君のおかげでメイド喫茶ラグジュアリーの売上と客数は、飲食部門で清純祭の以来最高記録を叩きだした」
「ま、俺だけの力じゃないでしょ」
「くぅぅぅ! そんな謙虚で可愛い景子ちゃんはとても推せる! そこが良い! 謙虚で誠実でお淑やか! そういう子は大好きだ!」
「あ、いや、それはどういう意味で」
「あ、すまない。取り乱した。とにかく、本当にありがとう。これなら、一位を目指せそうだ」
「そう、なら良かったよ」
「っ! 本当に大成功だ!」
厨房より声がかかる。
「景子ちゃん、カルボナーラ三つよろしく!」
「はーい!」
「八代君、君はもう上がりだ。会長達と食事を取ると良い。お昼も僕が奢るよ」
「あ、ありがとう……」
俺と遥はシフトを終え、会長達と一緒に遅めの昼食を取り、五人でチェキを撮った。
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