唐突に幸村
俺の昼飯はほぼ毎日弁当だ。
そしてこの弁当を開ける瞬間がいつも緊張するのだ。
以前
俺はランチバッグのジッパーをわずかに開けて中が俺の弁当箱であることを確認してひとまずほっとする。そして弁当箱を取り出した。
また緊張の一瞬。
開けてみてキャラ弁だったりしたら即注目を浴びることになる。また大きく「LOVE」などとデコしてあったりしても同様だ。
だから俺は教室で弁当箱を開くのはいつもひとりになった時を見計らってするのだ。
そして今日のおかずは昨日も食べたベーコンとアスパラ炒め物にキッシュみたいになったパンケーキだった。これはホットケーキのもとを使っているが塩味具材を混ぜてある。
俺はひと安心して食べ始めた。
通りかかった
お前まだ教室にいたのか。いつも学食に行っているだろう。
「
「そうか?」
「毎日学食も飽きるよ」金もかかるだろうしな。「誰か弁当作ってくれないかなあ」
近くにいた女子たちが無視するかたちでそっぽを向いた。
ふつうの女子たちにとって幸村は要注意人物だ。いつなんどきとんでもないことで話しかけられるか想像もできないからだ。
それはもはや言いがかりに近いものだった。こいつは空気がまるで読めないからな。
前のクラスにもいたがひとりやふたりこういうヤツがいるものだ。それでも幸村は変なヤツという意味では群を抜いていた。
「やっぱり彼女を作らないとな」
男にはどこかラブコメの主人公になりたいという願望があるのかもしれない。そんな自分の思い通りの展開にはならないのだけれど。
「彼女できたら応援してくれるかい?」
「ダメだろ。校則で禁じられている」
そういう理由ではないが幸村を暴走させるわけにはいかない。
「え? でも
「ふたりは幼馴染みで付き合っているわけではない――と
「それは表向きだろ?
「
「そうなんだ……」
おや? 訂正が利くのか?
「……それなら、ボク、
いくって?「どういう意味?」
「
「――やっぱりこのクラスだと
可愛い女子はクラスにもたくさんいるがクレオパトラみたいな美女は幡野だけだろう。
「ねえ
「は?」
俺は
俺、何かまずいことを言ってしまったらしい。
これは予期せぬ展開だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます