悪役令嬢は仕切る
F組との合同勉強会――という名の親睦会はお開きとなった。あとは帰るだけだ。
しかし学校では俺たちが義兄妹になっていることを公開していない。俺たちの担任
その俺を少し遅れて追うように
「
お前、帰る方向――同じだったか?
そう思う俺の横で
――そうだった。こいつも幼い頃はやんちゃだった。思い通りにならないと
「お待ちなさい」
「は?」意味わからないという顔を
確かに――これ以上何をするのだと俺も思った。
「何事もケジメをつけるべき」何のケジメだ?
「――隣のクラスの女子に目を奪われるなんてナンセンス。自重しなさい」名手は幸村の不純な動機に気づいていたようだ。
「あはは、そうだよな」頭を掻いたのは幸村ではなく
「残念ね、
おそらくは樋笠もF組の小原と一緒に帰ろうとしていたのだろう。小原に拒絶の笑みを向けられ樋笠はすっかり三枚目になっていた。
「
名手の一言で俺たちはE組F組それぞれのメンツで固まって散会した。
後で何か言われるな――きっと。
「じゃあ俺は部活行ってくるわ」樋笠が軽薄に言う。帰るのではなかったのか?
「行ってらっしゃい」名手は明るく笑った。
素直に従っていれば女王様は機嫌が良い。こんな顔もできるのかというくらい可愛い笑顔だった。
多分小原も部活に寄るな。そして二人一緒に帰るのだ。何となくそんな気がした。
「お、俺も部活に行ってくるわ」幸村の言葉は唐突だった。こいつ部活していたっけ?
「頑張りなさい」余計なお荷物を処分するかのように名手は幸村を見送った。
俺もここを脱出しなければと思ったが、その意思が見破られたのか名手に袖をつかまれた。
「さて私たちは一緒に帰りましょう」何でだ?
俺が言葉にしない疑問の表情を向けると名手は囁くように言った。
「私たちはカモフラージュ。あの二人が一緒に帰るための」
名手が差す方に並んで歩く
「ちょっと待ちなさいよ」と言いながら名手が二人を追う。
なるほど男女二人きりで帰るとあらぬ疑いをかけられるのか。校門には教師や生徒会、美化風紀委員が立っているのだったな。
こいつは目をかけるヤツには気遣いを見せるのだと俺は名手の後ろ姿を見遣った。
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