クソ親父
祖母がいる伯母宅に来て初めて知った。
俺はチラリと
「小さい頃からの幼馴染みだったからねえ」祖母が笑う。「よく遊びに来たわね」
「小学校に上がる前からだもの」伯母も頷く。「中学で付き合うようになったかと思うとすぐに別れて、また高校に上がってから付き合い出すんだものね」
「その話は――なしですよ」愛子さんが照れたように笑う。
親父は黙って愛想笑いを浮かべている。
何だ? 別れたり付き合ったりを繰り返したのか?
「それもこれもこのクソ野郎が女の尻ばかり追い回すから」伯母はますます辛辣になる。
やはり親父はクソ野郎だったか。そんな気はしていた。親父は真面目に仕事をして俺を育ててくれたが、女性に目がなかった。どこへ出かけても美人を見かけると遠慮なく声をかけ、しなくても良い自己紹介をして次に会う約束をとりつけようとする男だったのだ。
親父はハハハと誤魔化すような顔をしている。
情けない。こんな男の息子なのか、俺は?
祖母と伯母は愛子さんを相手に親父をネタにして話し続けた。俺には初めての話ばかりだったが日葵は知っていたようだ。
再婚する話にしたって俺が知らされたのはこの中で最後――何もかもが決まってからだ。
何にしろ俺は情報を与えてもらえないらしい。
それもこれもクソ親父のせいだ。こいつは都合が悪い話は明かさないからな。
「良かったじゃない。こうしてまた一緒になれたのだから」
「元の鞘におさまった感じだね」
「日葵ちゃんも愛子さんに似て良かったね」
まるで親父に似なくて良かったみたいな言い方ではないか?
その時、俺はとんでもない可能性に思い当たった。
まさか日葵の父親は親父? そして俺の母親も愛子さん? 親父と愛子さんが結婚して俺と日葵が生まれ、その後別れた? 親父と愛子さんは別れた相手同士で再婚した?
いや待てよ。俺と日葵の誕生日が同じなら双子という可能性もあるがそうではないのだ。
生まれた日の違いはわずか
いくらなんでも俺を産んでから日葵を産んだなんてことはない。やはり違うな。
俺は一安心し、馬鹿げた妄想を抱いたことを恥じた。
「まあこれからは四人仲良くやっていくのね」
祖母が締めの言葉を口にし、そのネタは落ち着いたようだ。
親父はほっとしただろう。何となくへらへらしているのが俺の気に障るが。
そして日葵は、「お兄ちゃん、よろしくね」と俺に笑いかけた。
その天使のような微笑みに祖母も伯母も「あらあら」と和みの笑みをそそぐ。
こいつ――大人のウケは良いんだよな。
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