ふたりの山田 ―山田くんと山田さん―
はくすや
ウソだと思う?
春休みはゆっくり寝られるから気持ちが良いな。
俺はここ何日か天国のような日々を過ごしていた。日に日に暖かくなっていく。今朝なんか暑いくらいだ。
そろそろ目覚めの時だな。
何かふわふわとした心地よい夢を見ていた気がするが、俺は目覚めとともに夢の内容を忘れていることが多い。今朝もそうだと俺は思った。
しかしちょっと暑くないか。布団は柔らかくて何か良い匂いがする。
伸びをしようとして頭を壁にぶつけた。
目を開ける。目の前にさらさらの髪。
俺の
「どう? 私の
「
俺は慌てて、さらに後頭部を壁にぶつけた。
壁に寄せてある俺のベッドの上。俺は壁と
「ふふ……」と良い匂いをさせながら絡みつく日葵をどうにか
「な、なんでここにいる?」
ここは俺の家。俺の部屋だ。
「なんでって。私たち結婚して夫婦になったのよ。だから一緒に寝ているのじゃない」
「いやいやいや、そんなのあるわけないだろが」
俺も日葵も四月から高校二年生だ。結婚できる年齢じゃないだろ!
ていうか、するわけもない。
第一、俺は寝間着代わりのジャージ姿だったが、日葵はしっかり外出するような服を着ていた。
俺の家を訪れて、俺の部屋まで上がりこんだのだろう。
全く親父は何をやっているのだ。いかに顔見知りとはいえ、よそ様の娘をまだ寝ている息子の部屋に入れるなんてどうかしている。
「さてと」と日葵は俺のベッドから下りた。「お掃除をしなきゃ」
「は? 何言っているんだ?」
その時俺は、今日が四月一日だということを思いだした。
エイプリルフール。これは悪戯好きの日葵の悪ふざけに違いない。
「エイプリルフールだ」
「ピンポーン!」
「ふざけんなよ」俺は安堵した。
「祐太、起きたのか」親父が入ってきた。
しかし親父と一緒に入ってきた女性が俺の目についた。
「なんで日葵のお母様が?」
「何を言っているんだ。俺と彼女が結婚して俺たち四人、家族になったんじゃないか」
「そうよ、忘れたの? おにいちゃん」日葵が俺の顔を覗き込んだ。
「ウソだろ?」
「ウソだと思う?」
これは夢に違いない。俺はもう一度布団を頭からかぶった。
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