しなければいけないことを忘れてしまった。

DRy0

第1話

 私には三分以内にやらなければならないことがあった。

 だが忘れた。


 皆さんも、何かしなければならないことを思い出して椅子から立ち上がった瞬間に、しなければいけなかったことを忘れてしまったことがあるだろう。


 今がそれだ。


 まるで、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに記憶領域を蹂躙されたかのように、やらなければならないことがすべて飛んでしまった。

 一度椅子に座り直し、机の先の窓から外を眺める。沈む夕日を背景に、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが街並みの全てを破壊する。そんな日常が広がっているだけだ。

 思い出すために、直前の動作を繰り返してみる。直前の動作にやらなければならないことの鍵があったのならば、同じ動作を繰り返すことで再び思い出すことができるのかもしれない。


 いや、思い出せない。


 何かすごく大事なことがあったんだろうとは思うのだけれど、どうにも思い出せない。冷めたコーヒーを一口含み、目の前のPCモニターにうつし出された、「バッファロー 素手 戦う 必殺技」という語句での検索結果を眺める。

 しなければならなかったことは、おそらく、今や日常と化したバッファローどもと何か関係があるのだろう。


 机の先の窓から外を眺める。牛がこちらに近づいている。

 そんなことより、三分以内にやらなければならないことを思い出す方が先だ。必殺技の練習をしようとしたのか、素手で戦うことをやめて武器を探そうとしていたのか、あるいは、メリケンサックまでは素手にカウントしてもいいと考えて探そうとしたのか、あるいはまったく関係ない何かだったのか。それをどうにかして思い出さなければ気持ちが悪いままだ。外の騒音がどんどん大きくなるのも、私の思考を邪魔する。


 奴らが我が家に到達した。奴らが家を壊し、外に放り出された瞬間、ようやく思い出すことができた。ただ、冷めたコーヒーを入れ直したかったのだ。

 まぁ、もう必要ないことではあるが。

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しなければいけないことを忘れてしまった。 DRy0 @Qwsend

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