バッファローの群れで思い出した

るるあ

バッファローで思い出した?

 

 魔の森に隣接する、北の辺境領。


 そこには、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れがあった。


 辺境の砦、何者にも屈する事なき屈強な石造りの外周門。その見張り塔からの偵察が、私のお仕事だ。


 気がつけばここに居て、気がつけば今の仕事に就いていた。いつも記憶はぶつ切りで、自分の名前や生い立ちも判らない。

 ただその時にやる事はしっかりと理解し、それを何も疑問に思わずに行ってきた。


 しかし、何故だろう。

 バッファローの群れがこちらへ、私達の住む城塞都市へ向かって来るのを見た途端、全てが判らない。


 これは憑依という物だろうか?それとも、転生?


 「▲□○○?」


 振り向けば、忍者のような黒装束のイケメンが私の腰を抱いている。


 「あんた、ダレ?」

 何言ってるか判らないので、とりあえず聞いてみた。


 「っなっ!?ニホンゴ?!▲□○○○??!?!」


 忍者イケメンは慌てて私から距離を取り、クナイ?刃が三角の楔のようになった刃物を私に向けた。


 「えーと、私を殺すのかな?じゃあ、痛くないように一発でお願いします。

 ……でもさ、そんな事してる場合じゃないよね?アレ、こっちに向かって来てるから、お偉いさんとかに知らせたら?」

 普通に肉眼で見えるようになってきた、バッファローの群れを指差して教えた。


 忍者イケメンは顔を歪め、私の指差す方を確認すると、慌てて塔を降りて行った、

 「▲□○!うし、バッファロ、チガう、マギュう!アとデ、オボえテロ!」

 謎の捨て台詞を残して。


 ふと力が抜けて、その場にペタリと座り込む。殺気?なんか、怖かったのかな?よく判らない。

 「……あれ?」

 頬に流れる何か。あ、私、泣いてる?


 ★★★★★★


 それからも、ぶつ切り転生?は続く。


 ある時は、忍者イケメンと共にあのバッファローにとどめを刺し(首元をザクッと行ったらしくて返り血が凄かった)


 ある時は、イケメンに後ろから抱きしめられながらベッドに寝ていた(服は着ていました)。振り向けば金髪碧眼。目があったら組み敷かれた、捕縛的な意味で。


 全てが、長くても10分位?の物だった。

 なんだろう、大変ご迷惑おかけして申し訳無い。


 そんなこんなで今。

 いつも乗り移ってる?女のコ?の膝の上にいる事に気が付いた。

 「なぁ〜ん《初めまして?》」


 「!?」

 あっ凄い、金髪碧眼イケメンがどこからか湧いてきて、女のコを抱いて距離を取った!

 相変わらず殺気マシマシで、武器をこちらに向けてくるね。

 殺るなら殺ってくれれば、私もここから自由になれる気がするんだけどなぁ。


 「にゃぁ〜ん?《今回は猫かー。》」

 とりあえず、猫の本能に任せて毛づくろい。おおーザラザラ舌はいいブラシだねー。毛玉後で吐くのかな?この世界は猫草あるかな?


 なんて呑気にしてたら、女の子が寄ってきた、背中にイケメン貼り付けて。

 「……悪霊さん?それとも、千賀子ちゃん?私のこと、覚えてる?」


 「にゃ?《にゃんですと?》」


 千賀子……ああ!地球の時の名前ね!

 それで一気に記憶が降り注いだ。


 最初がバッファロー。

 次が何やら虫、虫、虫。

 それが終わって鳥。

 何故か次、魚、魚類、クジラ、的な哺乳類。

 それで何かよく判らないけど、異世界的な魔女?あれは長かったな。星の存亡みたいなの何回か見たし。

 で、地球の、高輪千賀子だ。


 「にゃぁ〜!!にゃんにゃがみゃわぐるるるぅ〜!《あなた、双子の千鶴子?駄目じゃない私の魂引っ張り出しちゃ〜!》」


 「わっ二重音声!?そう!千鶴子ねえさまよ〜!」

 また膝上に戻され、抱っこされた。


 「……お前、俺のクーの妹なのか?」

 恐る恐るこちらを伺う金髪イケメン。


 「にーにーにーにゃゃゃー《うーん、以前はそうだったけど、今はこの通り、霊魂…精霊みたいなものかな》」


 どうやら、千鶴子と私は事故で死んだらしい。トラック転生で乙女ゲームで暗殺者と結ばれて…という王道?を熟してイマココ!という訳だそうだ。

 で、転生の時に千鶴子は双子の千賀子も一緒に!と女神様(居るんかい)にお願いした所、中途半端に魂だけしか引っ張れず。まぁね、私は転生のベテラン?だから女神如きじゃ太刀打ちできず、しかし前世双子で繫がってた力だけでここまで来た、と。


 「それがこの間、女神様が夢枕に立って神託を下さって、新しい体を与えましょうって!」

 千賀子ちゃん、猫さん大好きだったものね!って一切邪気なく笑顔で言い放つ千鶴子。ちょっと困った顔で千鶴子を後ろから抱くイケメン。

 悪気のない天然が一番始末に悪いと思いまーす。


 「……にゃー」


 なるほど、じゃあね、末永く爆発しなさいね〜!


 私はこの生命体を媒体に、バカップルの前から消えた。



 その後、黒猫を探す黒装束の美男美女が世界中を旅して悪を成敗世直し旅をしただとか

 黒猫の獣人魔女が獣人の地位向上に貢献したが、その姿は忽然と消えたとか

 女神教の女神像には時々、猫に引っかかれたようなミミズ腫れが顔に現れたとか。


 とりあえず、めでたしめでたし?



 

 

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バッファローの群れで思い出した るるあ @ayan7944

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