渡り糸

秋雨

1

 ねえ、

 と声をかけてみる。けれど、返事はない。

 ねえ、

 また声をかけてみる。結果は先のものとは変わらない。


 私の声はいつ届くのだろう。


 前からずっと呼び続けているのに、まるで届く気がしない。

 いっそのこと肩を叩いてみようか。

 絶えず透明な感触をぶつけるよりは、よほど価値があるに違いない。

 ねえ、

 けれど、結果は変わらない。


 ねえ。

 触れることのできない私の心には、いつ追いつくことができますか。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る