大魔王様の釈放

「縺雁燕縲∬?蛻??蜷榊燕繧りゥア縺帙↑縺??縺具シ」

「だから何度も言ってるだろ! 我輩はスパイではないと!」 


 外では何時間経過してるだろうか――。窓もない個室に閉じ込められていた我輩は、人間族に長時間に渡って聞き取れない言語で散々尋問を受けていた。


 恐らくは我輩のことを、何処かの国から忍び込んできた間者スパイとでも誤解してるに違いない。言葉さえ通じればすぐにでも誤解が晴れそうなものだが……。


〝ざいりゅうかーど〟という単語がギリギリ聞き取ることができたが、あいにくそれが意味するものが皆目見当がつかない。

 

「あのさぁ……ほんと誰か通訳いないの? 我輩初めてなんだけど、他人からガチで詰められるの。こちとら父上パパにすら怒られたことがない温室育ちなんだよ!」

「霄ォ蜈?r譏弱°縺帙↑縺?↑繧牙クー縺吶%縺ィ縺ッ蜃コ譚・縺ェ縺?◇?」

「だから聞き取れないっての!」


 イライラするあまり、机を思い切り叩くと人間は椅子を蹴って立ち上がり、高貴な我輩の胸倉を掴んで凄んできた。その迫力たるや、思わず大魔王のプライドなんて粉々に砕け散るほどのものだった。あと、少しだけチビッたことは墓場まで持っていく秘密である。


「……ステータスオープン」


 机に突っ伏しながら、小声でステータスを開く。目の前には我輩が長年かけて習得した魔法の数々が並んでいた。


 その気になればあたり一面灰燼かいじんに帰すことだって可能だというのに、悲しいかな今では初級レベルの火球ファイアボールですら発動させることができない。なんたる屈辱……。


「雋エ讒假シ∽ス墓?ェ縺励>蜍輔″繧偵@縺ヲ縺?k?」

「ちょ、胸倉掴むのほんとやめて! 今度は〝大〟を漏らすから!」


 それにしても、翻訳スキルが使えないだけでも致命的だというのに、まさか魔法まで使えなくなるとは思わなんだ。


「想定外も想定外だ。まさか異国の発音で詠唱を唱えないと肝心な魔法が使えないとはなぁ……」


 これはあくまで現時点での推測でしかないが、どうやら異世界で魔法を行使するには、現地の発音で詠唱を唱えない限り初級レベルの魔法すら発動しないらしい。


 もしかしたら、かつて異世界転移の研究が途絶えたのは、早い段階で欠陥を見抜いたからなのかもしれない――。それに加えて、魔法の源ともいえる魔素がこの国には圧倒的に少ない。魔族にとって最悪な環境と言える。


 バミューダめ……帰ったら思いつく限りの拷問を数千年繰り返した上でオークの餌にしてやるわ! クソッ、ハイラル! マーリン! 主の危機であるぞ! 早く助けに来てー!


 そんな我輩の切なる願いが届いたのか、

扉を叩く音がして入室してきた人間が、なにやら耳打ちをするだけして出ていった。


「螳溘?縲√◎縺ョ逕キ縺ョ霄ォ蜈?ソ晁ィシ莠コ繧貞錐荵励k螂ウ縺檎樟繧後∪縺励◆」

「譛ャ蠖薙°?溘◎繧後↑繧峨d繧?繧偵∴縺セ縺」


 我輩を尋問していた人間は、頭を掻き毟ると腐った魚みたいな臭いの溜息を吐いて、我輩に部屋から出るよう顎で促した。なんかしらんけど無事外に出れそうな展開に、我輩胸を撫で下ろして席を立つ。


「あー良かった良かった。なんか知らんが助かった」


 本当なら軽やかな足取りで忌々しい部屋から出ていきたかったが、そこはほら、我輩百万の部下から尊敬される大魔王なので、威風堂々とした姿で廊下に出ると目の前に見知らぬ人間の雌が立っているではないか。


「なんだ、貴様は」

「蠕?▲縺ヲ縺溘o繧医?ょ、ァ鬲皮視縲」


 年齢は定かではないが、恐らく十代半ばといったところか。化粧っ気もなく色気も感じさせないが、もしかしてこの雌が我輩を救ったというのか?


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異世界から来た大魔王ですがニホンという国の言語が特殊すぎて翻訳スキルが役に立ちません――身一つの吾輩…この地で成り上がることができるの!? きょんきょん @kyosuke11920212

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