本編『ホームシック・リボルバー』demo
第一話(2,816文字)
暗い路地裏。
数歩先の景色は暗闇に
ただ黒い闇が、この
真横では暗闇の中を室外機が回り続けて、犬が
足元を走るネズミはその寒さに震え、転がっている空き缶に
そんな地面の
そんな中に一つ、人影が現れた。
ネクタイを
線の細いその身体に
歩く度に揺れるその柔らかい髪は首の高さまで伸びていて、茶色がかった黒をしている。
そんな髪から覗く彼女の肌は
だが、その眼差しは柔らかく穏やかで、優しさを
そんな目で、自身の足元を走るネズミを見守っている彼女の名前は、
ナオのスーツのズボンの先で、グレーの毛並みをしたネズミが素早く、そして
ナオはそのネズミの
ナオは内心で「手に乗ってくれないかなぁ」とかネズミへ期待しながら、冷たいアスファルトにその手を置き、動き回るネズミをまた、その
するとネズミは、ナオのその白い手のひらの上に乗った。
ナオはそれに思わず、顔に明るい笑みを浮かべた。
ナオの手のひらの上を、ネズミの小さい足がテチテチと踏む。
普通、ネズミは汚いものだと広まっているが、ナオはそれを知りながらも、全然気にしていなかった。
ナオは手に乗ったネズミを、その細い指で
調子に乗ったネズミはナオの
ナオはその走り去るネズミの背へ、小さく「じゃあね。」とその穏やかな声で言った後、寂しい気持ちで小さく手を振って別れを告げた。
「あの子、元気でやっていけるかな。」とかナオは思いながら立ち上がると、ネズミが走り去って行った方向を少し眺めた後、またこの路地裏の奥へと進み出した。
暗がりの中を少し歩いたナオは、あるドアの前に立ち止まった。
『
立ち止まったナオは、自身の首元でネクタイを軽く
光の位置によって、ナオの顔に影が浮かんでいる。
ナオは吸った息を長く吐くと、その手を自身の腰へ伸ばし、そこから銀色の
ナオの細い手に、そのリボルバーの冷たさと、ずっしりとした重みが乗る。
ナオの手のひらにまだ残っていた、さっき手に乗せたネズミの
そのリボルバーの
ナオは着ている
そして目の前にあるドアへ、事前に入手していた合鍵を左手で
開けた先は、バーのカウンター裏だった。
空のグラスや皿、食器、お酒の入った瓶がたくさん並べられていて、それらが店内の金色の照明に照らされて、薄暗い中で豪華そうに
水道の匂いのする、カウンターのステンレスのシンクの前には、若い店員の男がいて、皿を洗い終えた直後なのか、手を濡らして立っている。
そのカウンターの向こう、店内の奥からは、男二人が話し合っている低い声が聞こえてきている。
それ以外に聞こえる音といえば、天井でシーリングファンの回る
その立っている店員の男は、鍵を閉めていたはずの裏口を、ナオが平然と鍵を開けてそこへ立っているのを見ると、不思議そうな顔をして、丁寧な感じの口調で
「どちら様でしょう?」
と言った。
が、男はナオがリボルバーを握っていることに気がつくと、その顔に汗を浮かべ、店内の奥へと焦って振り返り、助けを求めるような必死な大声で
「店長!殺し屋が来ま───」
ナオの握っているリボルバーの銃口から、煙が
床で
ナオはその様を隈のある生気のない目で見つめると、リボルバーの銃口を男の脳天へ向け、
引き金を引いた。
男から散った血が、置かれた皿やグラスに赤く飛んだのを横目に、ナオはリボルバーの撃鉄を起こすと、カウンターの向こうへと銃口を向けた。
するとその先に、もう一人別の男が飛び込むように現れた。
が、次の瞬間に男は脳天から血を
ナオはその腕に走り抜けた射撃の反動を感じながら、素早く撃鉄を起こし、バー店内の奥へと狙いをつける。
そのソファ席、一人の男が立っていて、今まさにその腰から拳銃を抜いた。
が、男が拳銃を引き抜いたその手は、次の瞬間に撃たれて血を
男の顔が苦痛に歪み、叫び声を上げようとした時だった。
その脳天で血が
ナオは、男たちが床で赤黒い血を広げながら死んでいるその様を、その
天井ではシーリングファンが血の匂いを巻き込んで、静かに回っている。
ナオはその匂いに、小さく
握ったリボルバーから昇る細い煙が、その
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