プロローグ 

 真っ暗な空間に閉じ込められて、まるで体が重力に押しつぶされそうな感覚。いの姿勢を保つのがやっとだった。凄まじい魔力で力の差を見せつけられる成行。顔を上げるのすら苦しい。

 一瞬の出来事だった。息つく間も無く空間魔法の発動に巻き込まれた。全く対処ができなかった。成行は、『本の魔法使い』が発動した空間魔法に巻き込まれた。この空間内には成行を含めて三人しかいない。周囲にいた人々はこの空間魔法の外だと考えていいだろう。

 関係無い人が巻き込まれていないことに、一瞬だが安堵した成行。


 成行は視線を前へ向ける。そこには見覚えのある女性が倒れている。黄金色のロングヘアを擬宝珠のように結って、耳は普通の人間よりも尖っている。彼女は成行を過去の世界へといざなってくれた魔法使い『初代・風魔ふうま小太郎こたろう』。小田原市に暮らすエルフ忍者だ。

 魔法使い初心者の成行でも理解できることがある。初代・風魔小太郎が静所おとなし雷鳴らいめいと同じ位に凄い魔法使いであること。そして、今まさに『本の魔法使い』が小太郎へを刺そうとしていること。


 本の魔法使いが手にするのは、『九つの騎士の書』。白い表紙の本で、その白さは少しようにも感じた。

 しかし、魔法を発動していると、その表紙が輝きを放つようにハッキリとみえる。それは紛れもない攻撃の意思の表すものだった。


 もはや成行に考えている暇は無かった。








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