三分以内にダンジョン攻略出来ないと、処刑されるようです

フクロウ

バンバリーナ斎藤の大冒険


 バンバリーナ斉藤には、三分以内にやらなければいけないことがあった。


 ある日、訳もわからず国王に呼び出された彼は、直々に命を下された。


「バンバリーナ斎藤よ、三分以内にダンジョンを攻略しろ。出来なきゃ、死刑」


 なんという、理不尽。

 この世界の理不尽さに斎藤は打ちひしがれた。打ちひしがれてたら、タイムリミットがあと二分四十秒になってた。


 バンバリーナ斉藤はダッシュで家に帰り、とりあえず目についた彫刻刀を武器に携え、すぐさまダンジョンへ向かった。

 ちなみに、このダンジョンの推奨レベルは40だが、バンバリーナ斉藤のレベルは2である。


「よおっし、おまえら! 今日こそ、このダンジョン攻略するぞ!」


 ワンチャン、これは夢かもしれない。

 すでに現実逃避を始めた斎藤は後ろを振り返り、仲間を奮起させようと声をあげた。


 たが、勿論彼に仲間などいない。

 友達もいないし、貯金もない。人望もない。ルックスも悪い。性格もよくない。身長も低い。脇は臭い。


 道行く人たちには"死ねばいいのに"と罵声を浴びせられ、それでも彼は血の涙を流しながらニート生活を楽しみつつ、たまに隣の家のお姉さんの下着を盗んだりして懸命に生きてきた。

 そんな彼が一体何をしたというのか。神はなんて残酷なのか。



 彼は意を決して、ダンジョンに足を踏み入れた。タイムリミットはあと五十秒である。


 そんなバンバリーナ斎藤の前に、スライムが現れた。


「おやおや……お出迎えがこんな可愛らしいモンスターとは。俺もナメられたものだ」


 死闘。まさに死闘であった。

 とりあえず彫刻刀を振り回す斎藤と、負けじと体当たりを繰り出すスライム。


 思わず目を覆いたくなるような稚拙な攻防。

 弱者と弱者のぶつかり合い。猫の喧嘩を見ている方がまだ面白みがあるであろう。


 あとから入ってきた冒険者パーティーには「うわっ、キモっ……」と、呟かれながら横を通り過ぎられる。


 それでも彼らはやり合った。

 戦って、戦って、戦って、戦い抜いて……

 

 その時はきた。


「……おい、スライム。どうやら、タイムリミットが来ちまったみたいだ」


「…………」


「これで、俺の処刑は決まった。どっちにしろ、死ぬ運命だ。俺の首はお前がとれ」


「…………」


「いいんだよ、そんな顔すんな。これが、強敵ともだちにできる俺からのプレゼントってやつ……!? ぐはっ!!!」


 いつの間にやら隣に出現していたゴーレムの一撃を喰らい、バンバリーナ斎藤は死亡した。


 そんな彼の亡骸からスライムは一向に離れようとはしなかった……なんてことは勿論なく、ノーリアクションでダンジョンの奥へと帰って行った。


 


◇◇◇



「国王様。ダンジョンにて、ニート下着ドロ斎藤の死亡が確認されました」


「やっぱり、この方法が一番楽でいいな」



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三分以内にダンジョン攻略出来ないと、処刑されるようです フクロウ @hukurou1453

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