第25話 ドンドン、どんどん

 川で鹿と遭遇し、かしこさが足りずに不本意な結果になった僕は得意の魔法と器用さを活かして武器を作っていた。


「どんどんどん、鈍器~♪ 鈍器を打て~♪」

「なんだそのやけに耳に残る歌は」

「何でも揃う道具屋ソングさ」

「はぁ、町の感性はわからないな......今度は工作か」

「武具制作と言って欲しい。まぁいいけど、ほらこれをみて」


 僕はそこらへんで拾った石にストーンの魔法かけてちょうどいいサイズに拡張した。


魔法で強化した石

攻撃力 3


魔法で強化した村に落ちていた石。

 

 この特別仕様の石と、木の棒+1を組み合わせて石器武器を作った。

 木の棒との接続部にはストーンを再度重ね掛けして固定した。

 この時少々のぐらつきがあったのだけど、ピコンと通知音が鳴ってステータスを確認すると【クリエイト】の魔法が追加されていた。


 試しにクリエイトを使ってみたら、石と木の棒が完全に一体化して、鈍器が完成した。

 職人泣かせの魔法である。いいんだよ。そういうのでいいんだよ。

 夢の国の魔法なんて何もないところから色んなもの作り出してしまうんだから。



蛮族魔法使いの鈍器+1

攻撃力 8


かしこさの足りない魔法使いが作った鈍器。



 装備して詳細を確かめてるとこうだった。フレーバーテキストに悪意を感じる。


「やっぱりマナブは器用だな」

「自分器用なんで」

「今、言っただろ。変に繰り返すな」

「すみません」

「なんでこんなの作ったんだ?」

「僕、これで魚の頭をかち割ったり、鹿の頭をかち割ったり、色んな生き物の頭をかちわりたいんだ」

「没収だな」

「あぁっ!」


 ユイファは僕の渾身の傑作をいとも簡単に取り上げた! 僕はしょうがなく普通の木の棒を取り出す。


「欲しいなら欲しいと言えバカモノ!」

「いきなり職人気質だな」

「ワシの腕前をそこで見ていろバカモノ!」

「ノリノリだな」


 僕は満足して、そこらへんに落ちている石を集めて武器制作を開始する。


「こちらにございます。石をご覧ください。このとおりそこらへんに落ちていたものでタネも仕掛けもございません」

「ふむ?」


 ユイファじゃ顎に手を当てて、僕の手に乗る石をマジマジとみつめる。


「ストーン」


 僕が石ころたちを両手で挟んで魔法を唱えるとあら不思議、細々した石達が大きな石に変わったではありませんか。


「え?! どうやったんだ」

「魔法です」


 僕は両手の親指と人差し指二つの輪っかをつくりそれっぽいポーズをとって決め台詞を吐いた。しかしユイファはそれをスルーした。なので僕も気にせず作業を進める。


「それでどうするんだ?」

「ご覧ください。こちらにございますは、何の変哲もない棒でございます」

「ふむ?」


 今度は石と木の棒を交互に見るユイファ。注目が集まったところで、魔法を唱える。


「クリエイト」


 それぞれ別々の物体だった石と棒が互いを繋ぎ合わせるように形状が変化していく。クリエイトの魔法時に槌をイメージしたからか完成品は蛮族鈍器よりスタイリッシュになっていた。



石の槌

攻撃力 9


石の鈍器。


「そっちの方が良さそうだな、交換しようマナブ」

「あぁ!」


 石の槌が奪われ、蛮族魔法使いの鈍器+1が手元に戻ってきた。


「ユイファは使わないでしょ返してよ」

「私はこれで木の実を割るんだ。ナッツのローストをご馳走するぞ」

「どうぞ使ってください」


 ナッツか、栄養たっぷりだ。楽しみである。


「でも、ちょっと返して。持ち手が長すぎて使いずらいでしょ」

「別に気にならないが?」


 それでもユイファは僕に石の槌を手渡した。


「ユイファはどこくらいを持つと扱いやすい?」


 ふむふむと目安をつけてクリエイトの魔法をかける。持ち手の棒を短くそして頑丈にして、表面を滑らかに、持ちやすく。僕の要望通りに形状、質感が変化する。ゴリゴリMPは消費してしまうがこの手軽さで物が作れるのは面白い!


「はい、持ってみて」

「すごい、ありがとうマナブ!」


 石の槌をプレゼントしてここまで喜んでもらえるなんて、まさしく異世界だなっと思う。一休みしてMPが回復したら蛮族鈍器ももう少し加工しよう。待ってろよ礼儀正しい鹿さん。頭をかち割ってお肉にくニクにしてあげるんだからね。


「没収」

「あぁっ!」

「すごい悪い顔をしていたぞ」

「お肉が食べたいの!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る