第19話 いざ、魔封石狩り!
「それじゃあ、今日はよろしくお願いね」
「ああ。こちらこそ、よろしく」
私とユーリさんは、今、魔物の森にやって来ていた。
何故、魔物の森に来たのかというと……。私がユーリさんに『一緒に“魔物の森に”出掛けて欲しい』と頼んだからである。
実は、前に魔封石をもらってから、更に大量の魔封石を欲しくなってしまい、ぜひとも魔物討伐をして、魔封石を手に入れたいと思っていたのだ。
しかし、素人だけで魔物の森に入るのは危険だと言える。
そのため、騎士団長として魔物を倒すのに慣れているユーリさんに『一緒に出かけて欲しい』と頼んだのだ。
ユーリさんが快く了承してくれたので、本日は、ユーリさんと共に魔封石狩りに出かけている。
ちなみに、このお出かけに際して、ルークがかなりゴネた。
『男と二人きりなんて、危ないですって! 何かあったらどうするんですか⁈』
『大丈夫よ。魔物の森に行くだけなんだから、何もないわよ。何かあるとすれば、魔物に襲われる方ね〜』
『そっちの方がヤバいじゃないですか!』
『大丈夫よ。そのために騎士団長のユーリさんがいるんだなら』
『というか、男女2人で魔封石狩りって何なんですか⁈ 紅葉狩りじゃないんだから!』
こんな感じで、ちょっとだけ揉めた。
その横でリーナは、『男女2人きりで行くところが魔物の森とか……我が主人の春が遠すぎる』と嘆いていた。余計なお世話よ。今はお風呂に忙しいんだから。
結局、ルークは対人戦の訓練しか受けておらず、ユーリさんも魔物の森で素人2人を守るのは難しいということで、私とユーリさんのみで行くことになった。
極度な心配性のルークはかなり不満そうにしていたけれど、仕方がない。ルークのことは気にせず、私はバンバン魔封石を狩って行くわよ!
「そこ、段差になってるから、気をつけて」
「ええ、ありがとう」
木の根っこの段差になっている場所で、ユーリさんは私に手を差し出す。
私を引っ張り上げてくれたユーリさんは、口を開いた。
「とりあえず、リディア嬢は、魔封石が欲しいんだよな?」
「ええ、そうよ」
「それなら、俺が魔物を討伐するから、リディア嬢は後ろで隠れてくれ」
「サポートくらいはできると思うわ」
「しかし……」
せっかく来たのだし、守ってもらうだけでは申し訳ない。私も魔法は使えるのだし、サポートくらいなら出来ると思うんだけど……。
その時、バサァッと風が靡いた。
見上げると、大きな翼を持った魔物が空を旋回していた。ユーリさんに手を引かれて、咄嗟に木の影に隠れる。
「……あれは、コカトリスという魔物だな。敵と認識した相手に石化魔法を放つから、あの魔物に見つからないように気をつけてくれ」
「あれは討伐しないの?」
「あの魔物は、空を自由自在に動く上に、急所が狙いづらい場所にあるから、討伐が難しいんだ。少なくとも、この2人では無理だろう。魔物がこちらに気づいていないうちに、他を……」
「要は動きを止めれば、討伐は出来るってことよね?」
私は魔物に見つからないように木の影に隠れながら、口を開いた。
「水よ、鎖となり、対象を捕縛せよ」
私は、空に向かって手を伸ばす。
「アクア・チェイン」
その瞬間、私の手から水の鎖が飛び出して、魔物を雁字搦めにした。身動きを取れなくなった魔物は、「ギェェェェェェェ」と悲痛な鳴き声を上げて、地に落ちた。
私は、ユーリさんを振り返った。
「ね? サポートくらいは出来るって言ったでしょう?」
「……君がスライムを倒した女性だということを忘れていた」
彼はすぐに捕縛された魔物の元に歩いて行き、急所に剣を刺す。そして、私を振り返った。
「とりあえず、リディア嬢は俺の前には出ないでくれ。ただ、今のように魔物の動きを止めてくれると助かる」
「分かったわ」
その後、ユーリさんの許可を得たので、私はサポートに回りながら、魔物を討伐して、魔封石を獲得していった。
熟練のユーリさんが的確な指示を出してくれるので、たくさんの魔物を倒すことが出来た。
そして、充分に魔封石を獲得できたので、私たちは帰路に就くことにした。
「君と一緒だと、すごく戦いやすかった」
「そう?」
私が聞き返すと、彼は「あぁ」と力強く頷いた。
「うちの騎士団に勧誘したいくらいだな」
「あはは。ユーリさんの指示が的確だから、戦いやすかったのよ。それから、風呂カフェの経営があるから、残念ながら騎士団には入れないわね」
「風呂カフェがなくなるのは、俺たち団員全員が困るな。リディア嬢を勧誘するのは無理そうだ」
私たちは冗談を言って、笑い合う。この討伐を通して、私たちは前よりも打ち解けた雰囲気になった気がする。
前世でもそうだったけど、共に修羅場(今回は魔物の森だけど)を乗り越えると、仲間意識が芽生えるのよね〜。
「それにしても、こんなに沢山の魔封石を何に使うつもりなんだ?」
ユーリさんは鞄に詰め込んだ魔封石を指差して、首を傾げた。
「実は、お風呂に役立つ魔法道具を作りたいのよね」
「自分で作ろうとしてるのか? すごいな」
ユーリさんは感心したように頷く。
前にユーリさんからもらった魔封石には、既に私の火魔法と水魔法を込めてみていた。
結果的に、魔力がない人間でも魔封石を通して温かいお湯を出すことに成功した。
とりあえず試してみたことで、2属性の魔法を1つの魔封石に込める方法が分かった。
今回の討伐で、更なる実験のための魔封石の確保が出来たし、あとは、風魔法を使える人を見つけられればいいんだけど……。
そもそも魔法は貴族しか使えないから、なかなか風魔法を使える人が見つからないのよね。前途多難だわ。
「リディア嬢の魔法道具作りが、上手くいくといいな」
「えぇ、ありがとう」
私はニコリと微笑んだのだが、反対にユーリさんは顔を曇らせた。
「リディア嬢、危ないっ」
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