ある日俺は、猫を拾った。しかし、その猫は化け猫だったようで、大事に育てたら、ある事に嫉妬するようになりました。

灰瀬

猫を拾った

俺には家族が居ない。

もともと俺は一人っ子で両親からは沢山の愛を貰い育った。

こんな日々が続けばいいと思った。

だけど、俺が小学校の頃、授業参観日に両親が車に乗って学校へと向かっている途中、

事故に遭い―――死んだ。

突然の事だった。

その事実は学校の授業が終わって先生から伝えられた。

俺はその話を聞いた瞬間、世界が止まったような感じがした。

なんで、どうして、俺のせい、などの言葉が溢れかえった。


その後、叔父さんや叔母さんが葬式の逝去や打ち合わせの連絡をしていた。

数日後、両親の葬式が始まった。

葬式には沢山の親戚がきていた。

いや···親戚が来ていたか来ていないかなんてどうでも良かった。


俺は自分の感情を表せない程にぐちゃぐちゃになっていた。

そして葬式が終わり、俺を誰が引き取るのかを決めていた。

だけど俺は、一人がいいと言った。

俺の両親に他の人が取って代わろうとしている事に嫌気が差したからだ。

幸い自分の家系は豊かであったため、お金には困らなかった。


数日後、俺は一人暮らしを始めた。

まだ小学生だから、家事が全く出来なかった。

ほとんどカップラーメンで済ましていた。

健康に悪いとは分かっていた。

だけど、何も力が出なかった。

両親が死んで心にぽっかり穴が空いているようだった。


そしてまた数日後、学校に行くことになった。

学校に行けば俺の目に色が付くと思ったからだ。

ランドセルを準備し、服を着替えて、玄関の扉を開けた。

そうすると、光が飛び出してきた。

久しぶりの光だったためか、眩しく、俺は顔を顰めた。

玄関の扉から外に出て光を全身で浴びた。

鍵を締め、そのまま、学校の通学路を歩いた。

周りを見ても住宅街であるため家しか建っていない。

特に珍しい建物さえもない。

家から歩いて15分の所に学校がある。

そして15分後、学校に着いた。

門を潜り、自分の校舎に向かい、下駄箱から上履きを自分の履いている靴と入れ替わるように履き替えた。

そして廊下を歩いた。


教室に入った。

俺にみんなからの視線が集まった。

そんな視線を無視してそのまま自分の席に座った。

その時クラスメイトから声を掛けられた。


「だ、大丈夫か···優斗」

「うん、大丈夫だよ」


俺は思ってもいないことを口にした。

そして授業が始まった。

1時間目、2時間目、3時間目、4時間目とどんどん授業が終わっていった。

放課中クラスメイトと色々話したりした。

でも何も変わらなかった。

俺の目には白黒の背景が映るだけだった。

最後の授業も終わり帰りの準備となった。

用意し、みんなで「「さようなら」」と挨拶をした。

そして突然俺にクラスメイトが声を掛けた。


「一緒に帰らないか、優斗」

「ごめん、一人で帰りたいんだ」

「そうか···無理に誘ってごめんな、じゃ、また明日」


ちょっと時間を置き、俺も帰える事にした。

いつも通りの道を戻るだけ、何も面白くもなかった。

俺は俯いたまま歩いていた。


「ん?」


前を向いた時、倒れている白色の猫を見つけた。

俺は急いでに猫の側に向かった。

猫をよく見ると外傷は無かったが、寝ている感じでも無かった。

気絶?に似ていた。

どうするか考えた。

その結果、猫を抱きかかえ、ひとまず動物病院へと向かった。

動物病院は近くにあったためすぐに着いた。


検査結果では何も異常は無かった。

しかし、その猫は飼い猫では無かった。

首輪の跡が無かったり猫の表情などが野生的であるから。


その後病院の先生にどうするかを聞かれた。

このまま、飼うのか施設に預けるのか。

俺は考えた。

ふと、ガラス越しにさっきの猫を見た。

その猫の顔は俺と似ていた。

家族を失い彷徨っている、生きる意味を見出していないような顔だった。

俺は、飼います。といつの間にか口から漏らしていた。

それを聞いた病院の先生はにっこり微笑んでいた。


その後色々な手続きをし、猫を家に上げた。

ケースから猫を出そうとしても、出てこなかった。

それどころか、


「シャーーー!!!」

「いてっ···!」


手の甲を爪で引っ掻いてきた。

まだ警戒しているなと思い、色々調べて買ったキャットフードを皿の上に乗せ猫の前に置き、自分は離れた。

警戒しながらだが、数分立つと、おずおずとケースから顔を出し、食べ始めた。

俺はキャットフードを食べてくれた事に嬉しく思った――――


それから毎日、少しずつ接していく内に警戒が溶けていった。

警戒が溶けた今、引っ掻く事は無くなった。

そしてふと、その日思い出したことがあった。


「そういえばまだ、君の名前を付けていなかったね」

「にゃあ?」


そう、俺はまだその猫に名前を付けていなかった。

前はコミュニケーションもろくに取れなかったからだ。


「う〜ん····」


俺は考えた。

小学生のネーミングセンスなんてあてにならない程に低い。

そして俺は、


「じゃあ君はこれから『マオ』という名前ね!

っと俺の名前も言ってなかったな。

俺は楠木優斗くすのきゆうとだ。よろしくなマオ」


ありきたりの名前だが俺にはこれしか思いつかなかった。


「にゃあ!」


俺の言葉を理解しているかのように返事をしていた。

俺はマオと関わっていくうちに白黒の背景に色がついていった。

これが幸せというものだろうか。

そしてまた、次々と日が過ぎていく。


マオを飼ってから1年が過ぎた。

俺はとうとう中学生になっていた。


「ピピピ―――ピピピッ」


アラームの音だ。

スマホのアラームを解除し、俺は重い瞼をゆっくり開けた。


「ん···なんだこれ···?」


そこには俺の腕がなにかに、しがみつかれている様だった。


「マオかな···」


どんどん視界が鮮明に見えてきた。

横を見ると猫―――――ではなく少女らしき人が寝ていた·······


うん?少女らしき····人?


「って、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


目を見開き、俺はベットから落ちそうになった。

どいうわけか俺の横に知らない少女が寝ていた。

その少女は俺の声に反応したのか俺の腕を絡めながら体を起こした。


「むにゃ〜、どうしたんですかにゃ?ご主人様」

「にゃ、にゃあ???ご、ご主人様??」


どういうことだ····

眼の前にいるのは、俺と同じぐらいの年齢で白くもっちりとした肌に長い睫毛、キリッとした目つきに碧色の瞳、そして綺麗な白髪のボブヘアの上に猫耳の様なものが付いている。

いや【様なもの】ではなく実際に付いているのだ。

だってピクピク動いているのだから。

というか、一番大事なのは、なぜ俺の家に居るのか····

でも何故か、その少女に見覚えを感じた。

いやまさか·····


「も、もしかして、君は《《マオ》···?」


そう聞くと、その少女はピンと尻尾と猫耳をたてに伸ばした。


「そうですにゃ!私はマオですにゃ!」


にへへ〜とマオは笑った。


――――――――――――――――――――


初作品なので緩く見ていってもらえると嬉しいです。

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