店長と私
日々いつか
第1話
秘密の小道を抜けて、私はいつも通りに瑠璃屋に来ていた。
瑠璃屋というのは森の中にひっそりと佇んでいる丸太小屋だ。この大きな大木の下にあるお店は内装が実に面白い。
まず一目見ただけでは出入り口が正面扉だけかと思うが、そうではない。一回、中に入ってみると本当にびっくりする。床だろうが天井だろうがドアが犇きあっているのだ。しかも、この中で当たりは一つ。乳白色でドアノブがない扉だ。ちなみに他は店長にきつく入ってはいけないと厳命されているから開けた事はない。実は一回だけ至上命令を破ってとんでもない大失敗をやらかした覚えがあるので注意されたものは守るようにしている。そうじゃないと、命が幾つあっても足りない。
とにかく、白い扉を押してさらに奥に進むと瑠璃屋と書かれた提灯がぶら下がっている。それに触ろうとすると自分の足元に大きな穴が現れる。そして穴に落ちた先がようやく、雑貨店・瑠璃屋だ。
「やぁ鈴さん。こんにちは。今日も派手に落ちてきたね」
のほほんとした口調が冷たい室内に響いた。私は四苦八苦して、そこから起き上がると服に付いた埃を払う。そんな私を店長は目を細めて見守っていた。
辺りを見渡すと古時計や人形等の骨董品が行儀良く陳列している。今日はどうやら何もない所に出られたようだ。ほっと胸を撫で下ろし、この非常識な存在に悪態をついた。
「だったら、あの落とし穴を何とかしてくれない?いつも心臓に悪い思いをしてるんだけど。それに商品に傷が付いたらどうすんのさ。片付ける身にもなってよね。」
「そんなにやわじゃありませんよ。どっちもね」
前足で髭を触りながら、大きなお腹を震わせている。どうやら笑っているようだ。私は溜め息をついて、もう一度前にいる存在を見つめた。
背格好は小学校高学年の少女くらいで、くりくりとした緑色の瞳に大きなとんがった耳と茶色の水玉が散らされている顔、こげ茶色の鼻から左右に髭がピンと生えている。白いふさふさの毛皮の上にセーターとズボンを履いている。これだって十分常識はずれなのに人語をしゃべり、その上、二足歩行までしている変な猫。それがこのお店の主人だ。
とても不本意ではあるが、私こと実崎鈴はここでアルバイトをしている。まあ、色々と紆余曲折があったがあまり思い出したくないので、今は敢えて説明はしない。 だが、もうかれこれ一年前ぐらいからここに通っている。
このお店は私が生まれ育った世界に存在しないらしい。まったく別の時間系列にある、世界と世界の狭間だといつだったか店長が言っていたが、良く解らないので適当に聞き流してしまった。何でも本当に理解するには今知られている量子力学の更に上の知識が必要らしい。理科の授業で最低点更新中の人間には到底無理だろう。最初はこのメルヘンでファンタジーな出来事が夢かと思ったがそうではなかった。しょうがないので現実を受けとめ、勤労学生をしている。無駄に諦めが良いのは変なところで役に立つうようだ。
「それで例のものは持ってきてくれたのですか?」
「勿論。これ探すの、すごい苦労したんだから!写真があるわけでもないのに、井の足公園できらきら光る赤い蝶を探して来いなんて無茶にも程があるっての」
「文句を言わない。貴方は雇われた身でしょ?こっちに持ってきて下さい」
荷物の中から虫かごを取り出す。幸い蝶は先ほどの衝撃で弱ってはいない様だ。
私は黙って虫かごを店長に押し付けた。
店長はそれを受け取ると、お店の中を通り、隣の客間の方で壊れ物を扱うようにそっと外に出してやった。蝶はひらひらと中を舞い椅子の上に止まると、瞬き一つで人間の姿へと変わった。
驚いたのは私の方だ。思わず悲鳴を上げて半歩下がってしまう。
「こんにちは蝶野さん。鈴さん!紹介しますね。この人は馴染みのお客で『蝶野』と言うあだ名が付いているんですよ。お店の近くまで来ているというので貴方に迎えに行ってもらったんです。」
「それならそうと、何故もっと早く・・・」
「マスター。今日はお迎えに来てくださるなんてサービスが良いのね?何か良いことがあって?」
赤い蝶の柄の着物を着た女性は優雅に微笑んだ。外見年齢は二十代後半と言ったところだろうか、長い髪を後ろでまとめているのを見ると何だか時代錯誤を感じる。というか、誰か突っ込んで欲しい。蝶が人間になったのに、何でこんな平然と話が出来るんだ。そもそも蝶野さんという名前なんて物凄い安易な感じがするのは気のせいだろうか。流石はメルヘンな世界だ。慣れてきたと思っていたのは希望的観測だったらしい。
まじまじと観察していたら女性とぴったり目があった。どぎまぎしている私を見て微かに蝶野さんは微笑んだ。
「あ、えっと、お茶を入れてきますね」
我ながら使い古された言い訳だなと思いながら私は台所に向かった。
「あの子、普通の子供じゃない。よくこのお店で雇うことが出来たわね」
「ええ、まあ色々ありましてね。大体、鈴さんは例外なんですよ。まったく手間が掛かって・・・その話はおいて置くとして今日は何を売って頂けるのですか?」
「せっかちさんね」
くすくすと好意的な笑いを収めると、赤い小袖から小さな巾着を取り出す。その中から透き通るような蒼いビー球を二つだけテーブルに置いた。
「ほう、これは珍しい」
店長が眼鏡を取り出して、観察している時に私はお茶とお菓子を運んできた。回転寿司屋が置いてそうなごつごつとした湯のみを三人分テーブルに置いた。いつも思うのだが、この客間は赤い絨毯の敷かれた豪勢な部屋だから、どうもこの湯のみは場にそぐわない気がする。こういう部屋はやはり紅茶やハーブティーが似合うと思う。しかし店長がどうしても緑茶が飲みたいと言って聞かないのだ。人の事は何かにつけて、さんざん文句を言う癖に自分は変なところですぐ頑固になる。
今回も『品物』に髭をぴりぴりさせながら眺めている時、私はずっと黙っていた。いつも『品物』を見る時は集中力がいるから話しかけて欲しくはないんだと口をすっぱくして言っているのだ。
蝶野さんは熱い湯のみをそっと持ち、口に運んだ。その時、店長の眼鏡の奥にある瞳がきらっと光った。
「これは貴方がお創りになられたのですか?」
「いいえ、私は収集専門ですから違います。気に入りまして?」
肉球の間で二つのビー球は白く淡く輝いていた。それを確認すると少し満足そうに鼻をならし、真面目な顔で私に話し掛けた。
「これ何だと思います?」
「は?ただのビー玉じゃないの?」
「勿論、見た目通りの物ではありませんよ。このお店に来るものですからね。これはビー玉の形に似せた何かの卵です」
私は目をぱちくりさせてしまった。今まで培って来た常識から言わせると、そんな事は有り得ないんじゃないと突っ込むべきだ。勿論、そんな無駄な事は絶対にしないが。
「それじゃ、これは生きているの?」
「生きていませんよ。まだね」
遠回りに言うのはやめて欲しいなと思ったが、やっぱり口に出しては言わなかった。ここは自分が大人にならなければと思ったからだ。しかし、態度には出てしまったらしい。店長は意地悪そうにニヤリと笑った。
「これを持つ方の願いを一つだけ叶える為に作られた生き物ですよ。しかしこの創造者はとても恥ずかしがり屋みたいですね。自分から直接相手に渡す気は無かったようです。ああ、鈴さん!ちょっとこちらへ」
ちょいちょいと手で手招きされた。私は訝しげに近寄ると、店長は丁重にその二つの卵を私の掌に乗せた。
その途端、ビー玉の一つが赤みを帯びて、わなわなと震えだしたかと思うと眩い金色の光が辺りを満たした。
「えっ?ちょっと何これ!」
私が慌てている内にその光は唐突に消えた。店長と蝶野さんは満足そうに頷いた。
「あら、持ち主はこの子だったのね。やっぱりここに来て正解でしたわ」
「何を仰います。もしかしたらと思って、ここにお越し下さったのでしょう?これ二つとも私共が買い取っても構いませんか?」
「ちょっと待ってよ!一体どう言う事?説明してよね!持ち主って何なのよ」
私が文句を言っても、二人はそ知らぬ顔ではなしを続けている。こういうのをヤンキーの専門用語でシカトって言うんじゃなかったっけ。
しょうがないので頭の中でさっきまでの言葉を整理してみた。つまりこのビー玉は知り合いの誰かが、私と他にもう一人の願いを一つ叶えるために創った卵なのだろうか。けれど残念なことに相手に心当たりがない。
私の周りはこんな非常識なことが出来る人はいないし、自慢じゃないが自分は他人に迷惑をかけるばかりで感謝されるような覚えは無い。大体友達はプレゼントを面と向かって渡せないような繊細な神経の持ち主なんか一人としていない。
あれこれと考えていたら、知らない間に蝶野さんは私の目の前にいた。
「その子、大切にして下さいね。貴方に出会う為に生まれてくるのよ。貴方に渡せてほっとしたわ。長い事、私はこの子の持ち主を探していましてよ。」
「ああ、それと鈴さん。その卵の代金は貴方のお給料から引きますからね。」
「ええ~何よ、それ。横暴じゃない?」
店長に向かって脱力してしまった。これでまた借金返済への道が遠のく。現実と理想の溝はマリアナ海溝並みに隔たっている。
先程は、説明しないと言ったが、私がこの店で働き出したのは借金のせいだ。以前、登校途中に必ず通る階段で屯している猫の一匹が、私が階段で足を踏み外して痛がっている隙に、鞄に付けている地元の神社のお守りを咥えて逃げ出してしまった。それから毎日、その階段や公園の周辺でお守りを探していたが、数日後、諦めかけていた頃に、お守りを持っていたと思われる猫を発見し、追いかけまわしていると、うっかりこの店に辿り着いてしまった。
ここを訪れた時、さっきの入り口の落とし穴のせいで着地に失敗して店の商品を何点か壊してしまった。それを目撃した慈悲深い店長は壊してしまったのは、しょうがない。起こってしまったことは取返しが付かないのだから、今後の話をしましょう。ここで働きなさいと仰った。私はうなだれてしまった。ぐうの音も出ない。夢だと思いたかった。実際、途中からこれは夢だと思っていた。しかし次の日に帰宅する為に学校の門を潜ると、不思議なことに瑠璃屋に繋がっていた。
髭と尻尾を逆立て、激怒された店長にお出迎えされたので私は無言で白旗を上げた。まあ、現実って、そんなに甘くないよね。大人になったら絶対に負債は負わないと心に誓いつつ、現在に至るまで勤労に励んでいる。大体、こんな話をしても、誰にも信じて貰えない。
「それで蝶野さん、今回は何をお探しですか?」
「買い取りではなく依頼です。先程の卵は依頼料になりますわ。」
ただでさえ迫力のある美人が、それは優雅に微笑んだ。女の私から見ても綺麗な方だ。
この雑貨屋ではモノの売買の他に探偵や興信所に似た仕事を請け負っている。何か困ったことがあれば、依頼料に応じて依頼人の悩み事を解決に導く。大体は、下っ端の私の仕事だ。今回も何だか、風向きが怪しくなってきた。
「井の足公園の西園にベンチが一つだけ置いてある場所があるのだけど、そこは私の住処へ行く近道なの。最近、近道に老人が時間を問わず出没するようになって困っています。何かを探しているみたいですので、それを探してあげて下さいな。」
これはまた、とても面倒なことになりそうだ。
その日の仕事を全て終わらせて、店長に断りを入れた。入り口とは全く別の出口からいつもの様に店から出ると、私が店に入った時と同じ時間に戻って来る。慣れていない頃は、戻る度に全ては夢だと思っていたが、さすがに一年は長すぎた。階段の脇にある小道から何食わぬ顔で駅へ行く人混みに合流した。
家に帰り、宿題を済ませると机の上にビー玉を出してみた。私が幼い頃に集めて、今でも大切に持っている無機物の塊ではない。こちらは雲みたいな白い煙がぐるぐると動いている。触ると少し温かい。
何かの卵で私の願いを叶える生き物と言っていた。どんな子が生まれるのだろうか。友達の家で生まれた子猫を思い出す。ふさふさした毛で、か弱いけど必死に生きていた。そういう子が生まれる筈だ。だが卵ということは哺乳類ではない。亀や鳥に似ているのかもしれない。そもそも私の常識があちらの常識とは限らないわけだ。気持ち悪い生物が出て来る可能性もある。
卵を指先で突きながら色々と、もの思いに耽った。どちらにしてもサイズが小さいのは間違いない、と思う。もし見た目より大きかった場合、どうやって親の目を盗んで世話をすればいいのだろう。まあ、そこは成るように成れだ。生まれてから対処を考えれば良い。
「そうだ。この子の名前はセラにしよう。」
ケ・セラ・セラ。なるようになれ。これはいつの映画の曲だったか。邦画じゃなく、洋画だった気がする。
にやにやと笑って、そっと小さな巾着袋の中に仕舞った。そろそろ夕食の準備をしなければいけない。
甲高い金属音が一度、その袋から響いた気がした。
次の日、土曜の下校時に西園へ向かった。丁度、駅に向かう途中にあるので、さして時間は掛からなかった。ベンチには蝶野さんが言う通りに老人が這いつくばって何かを探している。
「あのう、すみません。何かお探しですか?」
老人は、こちらを振り返った。大分くたびれたトレーナーとジャージを着ている男性で老眼を掛けている。顔は皺だらけで特に目尻の笑い皺が目立っていた。白髪で無精髭を生やし、鬼気迫る形相で、こちらを睨みつけている。
「拓哉!お前が言いだしたことだ。うちの敷居を跨ぐな!」
「たくや?」
「幸恵、こいつを締め出せ。お前のせいだ。家のことは任せているのに!」
「あ、なるほど。」
これは私の手に負えない。話が全く通じていないじゃないか。老人は私に向かってひたすら罵倒を浴びせた。近づくと殴られそうだったので少し距離を取った。
さて、この後どうするべきかと悩んでいると、背後からパキパキと金属音がした。何事かと思い、鞄を開けてみると、その音は小さい巾着袋から漏れている。慌てて中身を取り出そうとした途端、眩い光が弾けた。
そっと目を開けると手の平から卵は消え去り、ふさふさした綿帽子に胡麻粒のような可愛い目をした丸いスーパーボールが浮かんでいた。
これは予想外だ。昨日の今日だよ。生まれるのが早くない?
セラは私の顔をじっと見て、右と左を交互に移動した。それから離れている老人に近づき、彼の顔に頬擦りをした。
老人はセラに気が付いていないようだった。振り払いもせずに、あらぬ方向を見つめて、また何か文句を言っていた。
ポンと破裂音が聞こえて、セラは一枚の紙に変身した。紙は風も無いのにひらりと舞い、私の前に落ちる。拾ってみると、それは白黒の写真だった。どこかの家の門の前で和服を着た男女が、乳幼児を抱き、カメラに向かって微笑みを浮かべている。
ふと、最近どこかでこれと同じ写真を見たことに気が付いた。何だろう。どこで見たのだっけ。
「おじいちゃん、またここに来て!外に出ちゃダメって言ったでしょう?心配したじゃないの!」
年嵩の女性が背後から現れ、老人の肩を叩いた。目が落ちくぼんで、やつれている。どう見ても介護疲れだ。
「見世物じゃないのよ!どこかに行ってちょうだい!」
彼女は私を見ると目を尖らせて、怒りだした。触らぬ神に祟りなし。すぐさま駆け足で、その場を離脱した。
セラはいつの間にか白い綿帽子に戻っていた。息切れを起こして屈む私の周りを機嫌良さそうに揺蕩っている。
「何か探しているのですか?」
店の在庫部屋で探し物をしている私に店長は言った。今日は機嫌が良いらしく、時折ごろごろと喉を鳴らしている。
「そう。写真をどこかで見たなーと思って。ほら、二か月前ぐらいに柴犬さんが届けてくれた珍品の中に。」
「ああ~柴さんですね。見た目に騙されては駄目ですよ。品物は良いけど、同業他社なんだから。」
店長はそう言いながら、熱いお茶を美味しそうに舐めた。立ちながら飲むなんてみっともない、と以前私に向かって怒ったのに自分は良いのか。ところで猫って猫舌じゃないの?熱い飲み物は飲めない筈でしょう。さすが私の非常識は店長の常識だよ。
「あ、あった。」
セラが化けた写真と同じ物が箱の中に丁寧に収められていた。
「鈴さん、分かっていると思うけど、そこからの持ち出しは無料ではないですよ。店が取り扱う通貨は物に宿った思いです。込められた思いがあれば、あるほど価値が高くなり力が増す。それと同等の物を箱に入れなさい。」
写真が入っていた箱の中に今度は自分の家族の写真を入れた。幼い自分が無邪気に笑って、こちらを見ている。もう二度と戻らない。あの時の自分だ。
「写真は、その時を切り取ったものです。帰って来ない瞬間を振り返って懐かしむことが誰にでもあります。通り過ぎたことばかり見るのは感心しないですけど、その瞬間に恥じぬよう生きたいものですね。」
「それは説教?」
「いいえ、ただの自戒です。ほら、早く行かないと。それを渡しに行きたいのでしょう?」
「うん、ありがとう。行ってきます。」
店長は満足そうににっこりと笑った。
西園では、またあの老人がいた。昨日とは違って、ベージュのスラックスと襟付きの長袖を着ていた。無精髭もきちんと剃られていて、身綺麗になっていた。ただ今度はベンチに座って俯いている。私はおもむろに、その人の前に膝を着いた。
「おじさん、これを落としましたか?」
相手の手に写真をそっと渡した。彼は訝し気な表情で私を見た後、それを見た。表情は変わらないが右目から一筋、涙が頬を伝った。しばらくは無言でそれを見つめている。
「ああ、そうだよ。俺は若い頃から酔っぱらうと、すぐこのベンチに来てしまってね。物を落とす時はいつも此処だ。昔は建てたばかりの家の鍵も、ここで落としてしまった。」
ポケットからハンカチを取り出して、老人は眼鏡を付けたまま、涙を拭いた。
「妻と息子だ。最近は時折呆けてしまって、何を探しているのかも分からなくなっていた。でも、ありがとう。これだ。俺は確かにこれを探していた。」
彼は私と視線を合わせた。昨日と違い、私の事を認識してくれているようだ。
「もう行きなさい。良いか。今回は俺で良かったけど、あまり知らない人に近づくのはいただけないな。」
「うん。分かった。でもおじさん、良かったね。探し物が見つかって。」
彼は微笑んだ。それは写真の中の若い男性そのままの表情だった。
「ありがとう。」
この写真をいつ落としたのとか、何故今日は普通に話せるのだろうとか。色々、話しを聞いてみたいとは思ったけど、それは何だか野暮な気がした。人生はきっと人の数だけあって、高校生の私では気の利いた言葉も掛けられない。ただ偶然でも何でもいい今まで出会ってくれた人達や、さっきお礼を言ってくれた名前も知らない老人に少しでも良いことが起こりますように。
「よっし。セラ、店に帰って完了報告しよう。」
私の周りを気持ちよさそうに浮かんでいる毛玉を突いた。
公園を歩いていると木漏れ日が降り注いだ。今日も良い天気だ。
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