第6話 美少女エリス

 数日後に入学式を迎えた。


 入学式はほぼ生徒だけだ。

 親が来るのは王都に住んでいるような上流階級の近くの人達だけ。


 僕は端末から父さんにちゃんと連絡はした。

 合格したと言ったら喜んでいたのでよかったけど、リオンなら当然だがと言っていたのはよく分からない。


 首席の挨拶はするのか? と聞かれたが首席じゃないから挨拶なんてしないよというと残念がっていた。

 とりあえず、卒業することを目標としよう。


 学院長からの有難い長いお言葉があり、その後、学生代表の挨拶になった。


 誰なのかなぁと見ていると知っている顔だった。

 まさか、バアルくんが首席!?

 なんてことだ。


 なんて人と友達になってしまったんだ。

 となりのゴツイ魔人族は舌打ちをし、その隣にいた馬の獣人族も「気に入らねぇ」と言っている。


 なんでそんなに男に嫌われるのだろうか?

 イケメンだからって何かあるのだろうか?


 壇上に経つと悲鳴のような声が聞こえる。何だ何だ? 声の方へ視線を向けると獣人族と魔人族の女の子が顔を赤くして悶えている。


 うーん。そういう事か。

 イケメンは嫌われると。

 心に留めておこう。


 まぁ、だからといって友達を避けたりはしないさ。目立ちたくはないけど。


「それでは、皆さんよい学園生活にしましょう」


 優雅に挨拶を述べて下りてくる様は本当に格好よく。友達ながらに感動してしまった。


 あんな挨拶できるんだね。凄いなぁ。バアルくんは。その後はそれぞれ割り振られた教室へ戻っていく。


 後は説明をサラッとして今日は終わりみたい。

 僕は誰からも注目を浴びなくてホッとしてるんだ。本当にこの服は万能だなぁ。


 クラスに戻ると段々になっているスタイルの教室だ。大学の講義室のようといえば分かってもらえるかな。


 僕は目立たないように端の後ろに座った。

 先ほど舌打ちをしていた魔人族が入ってきてチラリと僕を見ると反対側の後ろに座った。


 あー。あの人ここ座りたかったのかな。

 悪いことしちゃったな。

 まぁ、いっか。


 次々と人が入ってくる中、兎の獣人族の美少女が入ってくると男たちは色めきたった。


「お前、話しかけろよ」「いってみるか?」「いまいけんじゃねぇ?」「可愛いな」


 口々に褒めちぎったり声をかけようとしている。

 あの子は凄いなぁ。堂々としていて。こんなに注目されているのにシャキッとたって歩いてるんだもんね。


 ボーッと入口を見続けていたためその美少女がどこに行くのかまで見ていなかったのだ。


「ねぇ、ここいいかな?」


 その美少女はまさかの僕の隣を選択したようだ。

 ちょっと待ってくれ!

 なぜ隣なんだ!

 目立って仕方ないじゃないか!


「う、うん? 他にも空いてるよ?」


「ここ、ダメ?」


 この潤んだ目には勝てない。

 断れないよどうしよう。


「い、いい……けど……」


「よかった!」


 まっすぐ前を見据えているその子の横顔はおめめはクリッとしててピンクの鼻が可愛らしい。獣人ならではの可愛さを放っていた。


「なんでアイツの隣なんだ?」「あの黒襟マジで何もん?」「アイツ戦闘と魔法満点だったよな?」「座学はピッタリ合格点。けど追加点入ってた」「そして可愛い子を隣に……」「なんだアイツ?」


 男たちからの凄まじい殺気を感じる。

 これは俺のせいではないよな?

 俺は何もしてないだろ?


「ねぇ? 子供好きなの?」


 急に美少女からの問いが。


「?……うん。住んでたところは小さい子は大事に扱わなきゃ行けないって教わったから。将来を担う、大事な宝物だからって」


 僕は素直に自分の考えを話した。それには目をクシャッとして笑いかけてくれた。


「やっぱり良い人だ!」


「なんで?」


「この前、アイスクリーム屋で子供を助けてるところ見たんだぁ。凄い勇気だなぁと思った」


「そんな事ないよ。僕は何もしてないし」


「ふふふっ。たしかに何もしてなかったね。あっちが痛めてたから。頑丈なんだね? 羨ましい」


「そうかな?」


「うん。私、ひ弱だもん」


 僕はこういう時にどう答えたらいいかが分からない。バアルなら分かるのかもしれないけど。守ってあげるなんて無責任なこと言えないし。


 そもそも、守れなかったらどうするんだっていう話だし。


「うーん。でも、この学院には受かったわけでしょ? 相応の実力者ってことじゃないかな? だったら、一緒に強くなろうよ」


 ただでさえ大きな目を見開いて固まっている。思った回答と違うから驚いたのかな。そうだよね。


「なぁ、オレが守るぜ?」


 反対側の魔人族が横から声をかけてきた。


「やっぱり良い人だ! 私、軽率に守るとか言う人好きじゃないの! 友達になりましょ。私はエリス・ラビト」


「ぼ、僕はリオン」


 手を差し伸べられたので。それに応える。そっと手を握った。


「ふふふっ。ゴツイ手。凄いねぇ。うんうん。強いのも頷けるよぉ」


 凄くなんというか、柔らかい手ですね。

 プニプニしていてスベスベしていて。

 女の子ってこんな感じなんだなぁ。


 頭がポワーッとしていて横にいる魔族の男を見ていなかった。


 それに腹を立てたようで気が付いたのは胸ぐらを掴まれた時だった。


「おい! お前調子に乗るなよ! この子とは俺が友達になる! 手ぇはなせ!」


「僕は別に……」


 エリスは恐そうにその魔人族を見て震えていた。


「僕の友達を怖がらせないで貰えるかな?」


 僕は精一杯抵抗した。


「決闘だ! ボコボコにしてやる!」


「「「オオォォォォ!」」」


 なぜか知らないが、決闘することになってしまった。

 

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